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選挙

今年中にこの星を終わりにしてしまうか
っていう選挙があってさ
この日曜日なんだけど
どうやら情勢は思いのほか拮抗してるらしく
僕も君も重々しい空気の中
口数少なかったり
ふと見れば微かに震えていたり
お互い何か避けるように週末をむかえる

でも僕と君の震えの意味は少し違うのかな
なんにしろ僕らで決まるかもなんて
ちょっぴりロマンチックじゃないか
それもそうね
君は言ってキッチンから
とっておきのワインをもってくる
もう来年のお祝いには飲めないかもしれないものね
ふたりが同じ人間じゃなくてよかった
乾杯ができるし

選挙なんて興味ない
行っても意味がない
っていう人がいる
そうかもしれない
でも他人任せは君と僕の性分じゃない
君はコルクを自分で開ける

ところで
人はなぜ子供を作り育てるのだろう
世代を繋ぐために人は生きるのだろうか
なにかを託すのか
自分ができなかったこととか
希望や未来とは
そういうものなのだろうか

ワインをあけ
さらに2,3本
僕らは手を取り
よろけながらベッドに向かう
キスと吐息
エアコンは強めにかけ
明日もないかのように求めあう
僕は君を強く抱きしめ
君も僕を深く深く抱きしめる
でもさざ波のように明けていく朝

僕も君もどちらに投票するのかは
言わない
選挙がはじまる

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