海陸風

言葉を産めないのなら
水のごとくさらさらと
この体は漏れ出して
ただあたりを濡らすだけだろう

海から湿りある風
吹き始める午後には
飲みさしのコーヒーの中に
鳴き終えた蝉のような
諦念を感じる

そして
周りを見渡せば海の底で
まとわりつく粘着質な焦燥に
息も出来ないことに気付く
もう藻掻くこともなく沈むか

鉛筆の芯を意識的に折り
部屋の隅の屑篭に放り入れる
それで全ては終わるかと期待するが
窓の向こうでは
外国籍の船が止まっているかのように
出て行くのだ

だから
明日
やはりなにも言えないとしたら
コーヒーとともに流してください
真白な月の下
カーテンのように揺れるその月光に
まだ口が開かぬとしたら
どうぞ



2021.08.05


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「みんなのフォトギャラリー」でnagomiさんの写真をお借りしました。

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