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モノ・ミックスを聴くことでわかる60年代ストーンズの〝本当の姿〟

以前の記事(「ローリング・ストーンズの2009年リマスターが失敗した理由」)にて、ローリング・ストーンズ・レーベル以降のストーンズ作品を最高の音質で聴く方法をお伝えしましたが、今回は、その60年代版と言うべき内容になります。

60年代ストーンズの一連のアルバムについては、現在、2002年リマスターの音源が、CD、音楽ストリーミングサービス共に提供されています。

そして、このリマスターを行ったのも、あの名エンジニア、ボブ・ラドウィックです。

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ボブ・ラドウィック


エンジニアをキーに探し出す高音質なCDとストリーミング音源

ここで、高音質のCDやストリーミング音源を探し出すコツを1つ、お伝えしておきます。

その方法とは、マスタリング・エンジニアに着目するやり方です。

例えば、先述のボブ・ラドウィックが名エンジニアであることがあらかじめわかっていたとします。

この前提条件のもと、60年代ストーンズ作品の2002年リマスター音源のエンジニアを調べた結果、それがボブ・ラドウィックであることが判明した場合、その音源は聴く前から、素晴らしい音質であることがほぼ保障されていると言っても良いでしょう。

なぜなら、CDやストリーミングサービス音源の音質は、その大半が、リマスタリングを行ったマスタリング・エンジニアの腕に左右されるからです。

逆に言うと、名エンジニアは、どんなCD(あるいはストリーミング音源)でも、素晴らしい音質のマスタリングに仕上げてきます。

したがって、そのCD(やストリーミング音源)の音質を判断する際に、そのマスタリングを行ったエンジニアの名前に注目する、ということが、重要なポイントになってくるのです。

こうして、60年代ストーンズを高音質で聴くためのポイントは、2002年のボブ・ラドウィックによるリマスター音源を選べば良い、ということになります。

この2002年リマスターCDは、ほとんどのTSUTAYAに置いてあるので、レンタルすることは容易ですし、Apple Musicなどの音楽ストリーミングサービスで提供されている60年代ストーンズの作品も、同じくこの2002年リマスターの音源なので、迷うことはありません。

次に、論より証拠、実際の2002年リマスター音源を聴いてみての感想ですが、その音像は、さすがボブ・ラドウィックと言うべき素晴らしいものでした。

ふくよかな倍音のベースとパーカッション、ドラムス、そして伸びやかなボーカル。グルーブ感溢れるエレクトリック・ギターの音色。

間違いなく、アナログ・レコードのサウンドを意識して、それを2002年当時のテクノロジーで再現した傑作マスタリングです。

1994年のVirginリマスター(70年代~80年代初頭の作品)と比較しても、こちらの2002年リマスター(60年代の作品)の方が音質的には上をいっているような気がします。

それもそのはず、ボブ・ラドウィックは、この2002年のリマスター作業のためにわざわざ、ちょっとした家を買えるくらいの投資をしてアナログのオーディオシステムを構築し、そのオーディオシステムでオリジナルアナログ盤を聴きまくった上でリマスター作業の参考にしたそうです。

それだけの情熱と手間をかけて行ったリマスターの音が悪いわけがありません。


この膨大なラインナップの中でどれか1枚を選ぶとしたら…

この2002年リマスターCD(音源)のハイブリッド盤は全部で22枚が発売されています。

England's Newest Hit Makers
12x5
The Rolling Stones Now!
Out Of Our Heads
Out of Our Heads(UK)
December's Children
Big Hits (High Tide & Green Grass)(US)
Aftermath
Aftermath(UK)
Got Live If You Want It!
Between The Buttons
Between The Buttons(UK)
Flowers
Their Satanic Majesties Request
Beggars Banquet
Through The Past, Darkly (Big Hits Vol.2)(US)
Let It Bleed
Get Yer Ya-Ya's Out
Hot Rocks
More Hot Rocks
Singles Collection - The London Years
Metamorphosis

これだけ数が多いと、60年代のストーンズは聴いてみたいけど、この膨大なカタログの中から何を選べば良いのか、迷ってしまう方も多いと思います。

そこで、このラインナップの中から、もし1枚を選ぶとしたら、どのアルバムを選んだら良いのかをズバリお答えしましょう。

それを選べば、ストーンズの黄金時代である60年代の音源を最高の音質で聴くことのできる1枚…

それは、

シングル・コレクション(ザ・ロンドン・イヤーズ)(Singles Collection - The London Years)』 です。

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シングル・コレクション(ザ・ロンドン・イヤーズ)

なぜ、このアルバムを選んだのか?

シングル・コレクションで、ヒット曲がまんべんなく聴けるから?

ほとんどのアルバムの代表曲を網羅しているから?

いいえ、違います。

最大の理由は、このアルバムがモノラル録音(以下、モノ)だからです。


ビートルズやストーンズなど60年代の作品を聴く時は、「ステレオではなくモノラルで」の理由

ビートルズやローリング・ストーンズなどの60年代の作品を聴く時は、絶対にステレオ(Stereo)ではなくモノ(Mono)をお勧めします。

理由は、ステレオとモノラルではその音像や曲の持つパワー(迫力)が全く異なるからです。

そして、2002年のリマスターCD(音源)のラインナップのうち、唯一、モノ・ミックスにて収録されているのが、この『シングル・コレクション (ザ・ロンドン・イヤーズ)』なのです(ただし、収録曲のうち、「ブラウン・シュガー(Brown Suger)」と「ワイルド・ホース(Wild Horses)」はステレオ・ミックス)。

それでは、ステレオとモノの音像はどのように違うのか?

早速、本アルバムを実際に聴いていくことで、魅惑のストーンズのモノ・ワールドへ皆様をご招待しましょう。


エネルギーの量が違う「黒くぬれ!」

まずは、1966年に発売されたアルバム『アフターマスAftermath)』収録曲から聴いていくことにしましょう。

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シングル・コレクション (ザ・ロンドン・イヤーズ)』で、アルバム『アフターマスAftermath)』収録曲は、以下の4曲になります。

Disc2

4曲目:黒くぬれ!Paint It Black
5曲目:ステュピッド・ガールStupid Girl
7曲目:マザーズ・リトル・ヘルパーMother's Little Helper
8曲目:レディ・ジェーンLady Jane

黒くぬれ!」は、『アフターマス』のUS盤の1曲目に収録されており、1966年5月にシングルとしても発売され英米ともにNo.1となった大ヒット曲です。
ブライアン・ジョーンズの弾くシタール(インド音楽の楽器)をフィーチャーしたナンバーになります。

まず、『アフターマス』に収録されたステレオ・ミックスを聴いてみましょう。
右チャンネルから聞こえるブライアンのシタールと、左チャンネルから聞こえるチャーリー・ワッツの叩くドラムスがこの曲の骨格を作っています。
シタールは確かに印象的ではあるものの、いたって普通のロックです。
単なるストーンズがシタールをフィーチャーした曲、という印象しかありません。

さて、それでは、次に、『シングル・コレクション (ザ・ロンドン・イヤーズ)』に収録のモノ・ミックスを聴くことにします。

その結果は…。

とても同じ曲とは思えません。

まず、ドラムスの迫力が全然違います。
ステレオ・ミックスでは、左チャンネルの遥か遠くの彼方で鳴っているのですが、モノ・ミックスでは、センターにどっしりと構えて、その音量と迫力たるや、もの凄いエネルギーで聴く者に迫ってきます。
この曲の主役はシタールではありません、チャーリー・ワッツの叩くドラムスなのです。
このドラムスの前には、ミックのボーカルも、ブライアンのシタールも、完全な〝おまけ〟ですね。

それほどまでに、ドラムスのエネルギーがもの凄いのです。

是非、一度、このモノ・ミックスの「黒くぬれ!」を聴いてみて下さい。
私たちが今まで聴いていたステレオ・ミックスの「黒くぬれ!」は、はっきり言って、まがい物だということが良くわかります。
ストーンズの本当の魅力の半分も伝えきっていないのではないでしょうか。

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その迫力は、次の「ステュピッド・ガール」でも同様です。
イントロのドラムスの迫力が、ステレオ・ミックスとは雲泥の差です。

ステレオ・ミックスのドラムスは、ヘナヘナしていて、芯が全くありません。
ギターもペニャペニャしていて、根性が入っていないのです。

ステレオ・ミックスを聴いた人は皆こう思うでしょう。
「60年代ストーンズって演奏がヘタレだよね。ビートルズの方が全然上手いじゃん!」

そんな人がモノ・ミックスを聴いたらその印象は一変すると思います。

もの凄い迫力のドラムスのパワー。
グルーヴ感溢れるリズム・ギター。
暴れまわるハイハット!

この音を聴いた人はおそらくこう言うでしょう。
「60年代ストーンズの迫力は凄い!ビートルズなんて、おとなし過ぎて話にならないよ。」

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最後に8曲目の『レディ・ジェーン』。

イントロから流れるアコースティック・ギターとチェンバロ(ハープシコード)の倍音の豊かさ。芯の太い音に宿る無限のエネルギー。

途中間奏で繰り広げられるアコースティック・ギターとチェンバロ(ハープシコード)のアンサンブル。

そこにはステレオ・ミックスでも聴ける儚い美しさだけでなく、確かな力強さが存在するのです。


ドラムスとベースが物凄い『ビトウィーン・ザ・バトンズ』収録曲

続いて、1967年発売のアルバム『ビトウィーン・ザ・バトンズBetween the Buttons)』の収録曲に移ります。

シングル・コレクション(ザ・ロンドン・イヤーズ)』における、アルバム『ビトウィーン・ザ・バトンズ』の収録曲は次の2曲です。

Disc2

11曲目:夜をぶっとばせLet's Spend the Night Together
12曲目:ルビー・チューズデイRuby Tuesday) 

1967年1月に発売された両A面シングルです。

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この『ビトウィーン・ザ・バトンズ』は、エンジニアにグリン・ジョンズを迎え、前作の『アフターマス』から、音質が著しく向上しています。

その音質の向上はステレオリマスターの『ビトウィーン・ザ・バトンズUSバージョン)』でも確認できますが、この『シングル・コレクション(ザ・ロンドン・イヤーズ)』に収録の2曲は、その音質の良さに加え、モノラル録音特有のパワーが内包されたナンバーとなっています。

この2曲で特筆すべきは、迫力のあるベース音です。

アフターマス』収録曲では、チャーリー・ワッツのドラムスの迫力ある音像に度胆を抜かれましたが、この『ビトウィーン・ザ・バトンズ』収録曲2曲では、チャーリーのパワフルなドラミングに絡んでくるビル・ワイマンの粘っこく野太いベースが、曲をより一層迫力あるものにしています。

私は、ステレオ・ミックスで聴いていた時は、「ルビー・チューズデイ」は、バラード・ロックだという印象があったのですが、このモノ・ミックスの「ルビー・チューズデイ」は、チャーリーのバタバタと殴打するドラミングと、倍音豊かなビルのベースによって、どこから見ても正真正銘のロック・ナンバーに聴こえてくるから不思議です。

このように、ステレオ・ミックスでは決して味わえない音像が、モノ・ミックスには確かに存在するのです。


今までの常識を打ち破る『サタニック・マジェスティーズ』収録曲

つづく13曲目は、サイケデリック・ムーブメントのさなかの1967年8月に発売されたシングル「この世界に愛をWe Love You)」とそのカップリング曲である「ダンデライオンDandelion)」。

Disc2

13曲目:この世界に愛をWe Love You
14曲目:ダンデライオンDandelion

この世界に愛を」は、ストーンズの数少ないサイケデリック・ナンバー。
この曲は、1969年発売のデッカ/ロンドンレコード時代のベスト・アルバム第2弾『スルー・ザ・パスト・ダークリービッグ・ヒッツ Vol.2)』(Through The Past, Darkly (Big Hits Vol. 2))にてステレオ・ミックスを散々聴いてきましたが、いつも思っていたのが、『何という凡庸な曲だろう』という感想でした。

スルー・ザ・パスト・ダークリー(ビッグ・ヒッツ Vol.2)

ところが、この『シングル・コレクション(ザ・ロンドン・イヤーズ)』に収録されているモノ・ミックスは驚愕の一言です。

とにかくビル・ワイマンの弾くベースが凄すぎます。
この音の野太さ、分厚さ、迫力、倍音の豊かさ。
どれをとっても非の打ちどころのない完璧なベース・ラインです。
そして、この曲の最大の聴き所は、この浮遊感溢れるベースラインと、後半のチャーリーの叩きつけるようなアグレッシブなドラムス。

これは、サイケデリック・ロックなどではありません。正真正銘のハード・ロックです。

ちなみに、このモノ・ミックスの「この世界に愛を」のエンディングに「ダンデライオン」の一部分が、そして「ダンデライオン」のエンディングに「この世界に愛を」のイントロが挿入されているのも聴きどころの一つです。

そして、この2曲とアルバム『サタニック・マジェスティーズTheir Satanic Majesties Request)』収録曲である以下の4曲を聴くと、私たちが今まで当たり前だと思ってきた常識が、実は違っていたということに改めて気付かされるのです。

Disc2

15曲目:シーズ・ア・レインボーShe's a Rainbow
16曲目:2000光年のかなたに2000 Light Years From Home
17曲目:イン・アナザー・ランドIn Another Land
18曲目:ランターンThe Lantern

その誤った常識とは、以下の3つです。

①アルバム『サタニック・マジェスティーズ』はサイケデリック・ロック・アルバムである
②ストーンズの中心はミック・ジャガーとキース・リチャーズである
③ストーンズはビートルズのフォロワー(後追い)である


モノ・ミックスを聴くことで覆されたストーンズに関する3つの常識

ステレオ・ミックスのローリング・ストーンズは、本当のストーンズではない…。

今回、モノ・ミックスが収録されたローリング・ストーンズのベスト・アルバム『シングル・コレクション(ザ・ロンドン・イヤーズ)』を聴くことで、
今までの60年代ストーンズのイメージが次々を覆されたことに驚くとともに、今まで私があたりまえだと思っていたストーンズに関する常識が、ことごとく誤っていたということを痛感しています。

そこで、ここからは、その覆された3つの常識について、書いていきたいと思います。

常識その①
アルバム『サタニック・マジェスティーズ』はサイケデリック・ロック・アルバムである

一般的に、この『サタニック・マジェスティーズ』は、ビートルズの『サージェント・ペパーズ・ロンリー・ハーツ・クラブ・バンドSgt. Pepper's Lonely Hearts Club Band)』と並ぶ、サイケデリック・ロック・アルバムを代表する1枚として知られています。

確かに、ステレオ・ミックスの『サタニック・マジェスティーズ』を聴く限り、ビートルズの『サージェント・ペパーズ・ロンリー・ハーツ・クラブ・バンド』と同様に、サイケデリック・ロックそのものだと私も思います。

しかし、この『シングル・コレクション(ザ・ロンドン・イヤーズ)』に収録の4曲を聴くと、その印象は全く異なってきます。

実は、この『サタニック・マジェスティーズ』は、ロック史上初のハード・ロック・アルバムだったのです。

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サタニック・マジェスティーズ

ハードロックに関しては、ウィキペディアに、以下の記述があります。

1968年には、ジェフ・ベック・グループ(第一期)、レッド・ツェッペリンがデビューし、世界に衝撃を与える。1970年には、後にヘヴィメタルの教祖的存在となるブラック・サバスがデビュー。ディープ・パープルがハードロックに転向。1973年には、グラム・ロックの影響の見られる女性ロッカースージー・クアトロがデビューし、このころには、ハードロックが世界的にブームとなった。

ウィキペディア
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レッド・ツェッペリン

上記の記述のように、レッド・ツェッペリンやディープ・パープルがその元祖だというのが、一般的な認識なのではないでしょうか?

しかし、『シングル・コレクション(ザ・ロンドン・イヤーズ)』に収録された、モノ・ミックスの『サタニック・マジェスティーズ』収録曲を聴けば、ローリング・ストーンズが、ツェッペリンやパープルが登場するはるか前から、ハードロックを録音していたことは、明白な事実だということを認識することができます。

もちろん、本ブログ記事を読んだ方の中には、「そんな馬鹿な…」という感想をお持ちの方もいらっしゃると思います。
そう思われる方は、是非一度、『シングル・コレクション(ザ・ロンドン・イヤーズ)』を聴いてみることをお勧めします。

このビル・ワイマンのベースと、チャーリー・ワッツのドラムスのアンサンブルを、ハードロックと呼ばずして、一体何がハードロックと言えるのでしょうか?
それくらい、モノ・ミックスのストーンズの演奏は物凄い迫力だということが言えるのです。

常識その②
ストーンズの中心はミック・ジャガーとキース・リチャーズである

ビートルズの中心がジョン・レノンとポール・マッカートニーであることに異議を唱える方はおそらくいないでしょう。
それと同様に、ローリング・ストーンズの中心的人物は、初期のブライアン・ジョーンズから、1965年の「サティスファクション((I Can't Get No) Satisfaction)」のヒット以降は、ソングライティングを手掛けていたミック・ジャガーとキース・リチャーズへと移行していった、というのが一般的な認識だろうと思います。
現に私自身も、60年代ストーンズをステレオ版で聴いていた時は、その認識に疑いを挟むことなど考えたこともありませんでした。

確かに、ソング・ライティングの面から言えば、ストーンズの大半の曲をミックとキースが創っていることもあり、この認識で間違いないと思います。

しかし、こと演奏面(アンサンブル)にスポットライトを当てた瞬間に、ステレオ・ミックスとモノ・ミックスとでは、その認識に大きな違いが生じてきます。

ステレオ・ミックスのストーンズでは、演奏面でもミックとキースが主役です。

なにしろ、チャーリー・ワッツのドラムは、遥か遠い彼方で軽いタッチで響いているだけですし(事実、私は、チャーリー・ワッツというのは、そういうドラムス(音が軽いとう意味で)を叩くのが彼のスタイルだとずっと信じ込んでいました)、ビル・ワイマンに至っては、どこにいるのかわからないくらい存在感が希薄です。

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ビル・ワイマン

しかし、モノ・ミックスを聴いた途端、その印象は一変します。

断言しましょう。
60年代のローリング・ストーンズにおいて、ソング・ライティングの鍵を握っていたのは、ミック・ジャガーとキース・リチャーズですが、演奏面でのキー・マンはずばり、チャーリー・ワッツとビル・ワイマンです。

百聞は一見(一聴)にしかず
嘘だと思うなら、一度、『シングル・コレクション(ザ・ロンドン・イヤーズ)』を聴いてみてください。
間違いなく、私が主張していることを、理解していただけると思います。

常識その③
ストーンズはビートルズのフォロワー(後追い)である

これは、私を含めた、多くの人が誤解している部分なのですが、60年代後期のストーンズは、ことごとくビートルズの後を追っていた、という偏見です。

例えば、ストーンズは、67年に、ビートルズの『サージェント・ペパーズ・ロンリー・ハーツ・クラブ・バンド』の後追いで、同じサイケデリック・コンセプト・アルバムの『サタニック・マジェスティーズ』を制作し、

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サタニック・マジェスティーズ

翌68年には、『ザ・ビートルズThe Beatles)』でサイケデリック・ミュージックから脱却したビートルズの後を追って、同じくブルース・ロック色の強い『ベガーズ・バンケット(Beggars Banquet)』を発表した、というものです。

確かに、ジャケット・デザインなどの表面的なことだけに着目していれば、そのような偏見を持ってしまうこともあながち否定できません。

しかし、先ほども書いたとおり、『サタニック・マジェスティーズ』は、サイケデリック・ロック・アルバムではなく実質的にはハード・ロック・アルバムなのです。

一方、ビートルズの『サージェント・ペパーズ・ロンリー・ハーツ・クラブ・バンド』(67年発売)は、モノ・ミックスで聴いても、完全にサイケデリック・ロックそのものです。

一方、ビートルズも、アルバム『ザ・ビートルズ』(68年発売)の収録曲「ヘルター・スケルター」において、レッド・ツェッペリンに先駆けてハード・ロックを展開したのだということが、こちらも『ザ・ビートルズ』(モノ・ミックス)を聴くとはっきりと分かります。

しかし、ストーンズは、その1年前、ビートルズが『サージェント・ペパーズ・ロンリー・ハーツ・クラブ・バンド』にてサイケデリック・ロックを録音した1967年に、一足早く『サタニック・マジェスティーズ』にてハード・ロックを展開していたのです。

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ザ・ビートルズ

今まで私たちが音楽雑誌や書籍から得ていた常識的な知識

例えば

・60年代ロックは常にビートルズが先導的な役割を果たしていた
・ハード・ロックはレッド・ツェッペリンの登場により70年代以降に普及した

というのは、実は真実ではなかったということも、60年代のモノ・ミックスのストーンズを聴くことで、初めて知ることが出来るのです。

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シングル・コレクション(ザ・ロンドン・イヤーズ)

さあ、あなたも、この真実を、『シングル・コレクション(ザ・ロンドン・イヤーズ)』を聴くことで確かめてみませんか?


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