行政書士の廃業率に関する本当のデータ
こんにちは。行政書士の阪本です。
春爛漫。前回は「春爛漫」で一句詠ませていただいたわけですが、今回は短歌を一首お届けしたいと思います。
おいAI。短歌は五七五七七ぞ?
いくら何でも六八七八八はひどくないかい?
まぁ良いや、それなら次はラップで汚名返上させてやろうじゃないか。
おいAI。雰囲気でゴマかしとりゃせんか?
とりあえずグルーヴィーとか入れとけばラップになるとでも思いましたか?
この様子じゃまだラップバトルでは負ける気はしませんね。(ラップしないけど)
さて、今回は行政書士に関する統計についての話題です。「食える食えない」議論や「稼げる稼げない」議論はもはやどちらでもご自由にどうぞの立場ですが、巷にはびこっている「3年以内廃業率70%」だとか「5年以内廃業率90%」だとかいう都市伝説的な数字については、その根拠がまったく見当たらず、かねてから疑問を呈していました。なにせ周りを見渡しても廃業した人はいませんし、体感的にはありえない数字ではないかと感じています。
いや、正直に言えばそれすらもどうでも良いのですが、開業後3年以上経過し、もうすぐ5年に手が届く私からしてみれば、「何やワイ、もうすぐ10%のエリートやん!」とかお天狗になってしまいそうな気がしたので、戒めとして調査してみることにした次第です。
令和3年度のデータ
それでは総務省が公開している令和3年度における行政書士の登録者数と廃業者数を見ていくことにしましょう。
少し分かりにくいので注釈を入れると、「法」とは「行政書士法」のことを指し、番号やアルファベットはそれぞれ以下の者を指しています。
①行政書士試験に合格した者
②弁護士となる資格を有する者
③弁理士となる資格を有する者
④公認会計士となる資格を有する者
⑤税理士となる資格を有する者
⑥特認行政書士
⑦みなし行政書士
⑧行政書士の総数
a.〜e.欠格事由に該当するに至った者
f.廃業届を提出した者
g.死亡した者
h.登録取消しの処分を受けた者
i.登録を抹消された者
これによると令和3年度中の新規登録者数は2,687名であることに対し、廃業者数が1,881名であることがわかります。
1,881÷2,687≒0.70
おお!確かに70%あるじゃないか!
都市伝説は都市伝説ではなかったのか!!
、、、
なんてなる訳ないじゃないですか。笑
企業をイメージしてください。ある年度に5名採用したとします。同じ年度に10名の退職者が出ました。この数字で退職者率を計算してしまうと、その数なんと脅威の200%!!
そんな訳ありませんよね?笑
本当の廃業率
廃業率の計算は「廃業者数÷年度当初の全登録者数」で導くのが正解です。
上の表で言えば令和3年度当初の登録者総数は49,480名ですから、
1,881÷49,480≒0.038
つまり本当の廃業率は3.8%ということになります。
ちなみに都市伝説になぞらえて計算しようものなら、新規開業者数2,687名のうち1,880名(70%)が開業後3年以内に廃業し、2,487名(90%)は開業後5年以内に廃業してしまいます。
いや、計算合わへんやん!笑
他業種との比較
まぁ都市伝説的な数字は無理があるにしても、廃業率3.8%という数値ではいまいちピンとこないのではないかと思いますので、ここで他業種との比較データも掲載してみようと思います。
こちらのデータは中小企業庁が公表する2021年(令和2年度)の開廃業率です。比較年度が1年ずれるので厳密には比較対象に馴染みませんが、中小企業の全国的な廃業率が3.3%であることがわかります。
お次は同じく中小企業庁が公表する2021年(令和2年度)における業種別廃業率のデータです。
宿泊業、飲食サービス業が突出して高いことがうかがえますが、学術研究、専門・技術サービス業に属する行政書士は、そのまんまほぼピッタリ学術研究、専門・技術サービス業の数値に当てはまります。
ここから導き出せるものは、行政書士は全業種中でやや廃業率が高いものの、士業が属する学術研究、専門・技術サービス業中では特に廃業率が高い訳ではないという事実です。
結論
とどのつまり、行政書士が極めて廃業率の高い業種であるかと言えばそんなことはなく、新人が絶対に生き残れない業界であるかと言えばそんなこともありません。
私は業歴のある者が業歴の浅い者に対して上から目線でものを語ることをあまり好みません。
体育会系だったので2年生3年生OB達が新入生に対して「俺たちの時代は〜」と語り継ぐことはよく知っていますし理解することもできます。
何ならこんなことを言っている私自身が後輩の前でついつい語ってしまうこともあります。(ダブルスタンダード。笑)
開業したからには廃業とは常に隣り合わせの世界であることは業歴関係なく誰にでも当てはまる事実です。ネット上に氾濫する情報は盲信せず、自己責任において取捨選択すべきであるということをお伝えし、本稿をしめくくりたいと思います。
ツナグ行政書士事務所
行政書士 阪本 光
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