君たちはどう生きるか

『君たちはどう生きるか』を読んで、どう生きるか。

15歳の少年、コペル君の成長を綴るフィクション。


コペル君は幼いなりに、日々の体験から自分の感じたイメージを膨らませていく。そこに彼の叔父さんとの対話が加わり、「いかに生きるべきか」という大きなテーマに対して、若々しくも深みのある思索が展開されていく。


何篇かある話のひとつに、コペル君が友人と交わした約束を破ってしまってひどく自責の念にかられる、という回がある。何日も思い悩むコペル君に向かって叔父さんが語りかける場面がある。


「そうした心の苦しみは、身体の痛みと同じように、本来あるべきでない状態に置かれたことに対する危険信号なのだよ」


時に、人間関係においてバツの悪い思いをしたり心を痛めたりするのは、人間が人間らしく生きるというには相応しくない状況に対して、心が本能的に危機を知らせてくれているのだと。


つまり、心の痛みがあるということは「人間らしく生きるためには今の自分の何かを変える必要があることにすでに気づけているということ」だ。


誰しも過去に一度や二度は、今思い返しても自分に腹が立ってしまうような悔しい思いを経験したことがあるだろう。あるいは成人してなお自分の心の弱さゆえに、大切にすべき人や物事を蔑ろにしてしまうこともあるだろう。


そんなときに、自分の心の中にいるコペル君に問いかけたい。


純粋で実直な感性のままに、自分が本当に大切にしたいことを信じて選択していくことが何より大切である。


1937年の著作、かつ少年の成長を舞台にしていながら、今なお読み応えのある作品だった。


大学で社会科学をかじった者としては、生産関係、相互作用論、相対的剥奪など、物語中に色々とフックが仕掛けられていて、そういう意味でも面白い読み物だった。

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