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仲居もたまには「もてなされたい」⑥〜上勝ゼロウェイストセンター HOTEL WHY〜(徳島県 上勝町)


徳島県の上勝町、
徳島市から車で45分ほどの山間部にある町で、
人口は1500人ほど。高齢化率は50%以上。
そんな四国一小さい町のゴミステーションにHOTEL WHYはあります。


上勝町は2003年に日本の自治体として初めて「ゼロウェイスト宣言」すなわちゴミ0宣言を行いました。

2020年時点で町内のゴミの80%がリサイクルされており、これは全国平均の約20%を大きく上回っています。
また町内にごみ収集車は走っておらず、
町民は町内のゴミステーション(ゼロウェイストセンターに自身で持ち込み、
日本で最も多い13種類45分別に分けて出します。

その仕組みを知ると共に、実際に宿泊して出たゴミを上勝町の基準に沿って分別する体験ができるのが、
"HOTEL WHY"です。



まずチェックイン時に、滞在で必要な分の石鹸を自身で切り分けます。
そして部屋で飲む用のコーヒーと上勝晩茶も必要な分だけスタッフの方に取り分けてもらうようになっています。

上勝晩茶とコーヒー


チェックイン手続きが終わるとお部屋に。
宿泊体験施設ということもあり、室数は4室のみ。

中に入ると目に入るのは様々な種類の窓枠たち。
これはレセプションなどのスペースも同様なのですが、ゼロウェイストセンターを作るにあたり、町民から不要な窓枠等の寄付を募って集まったものを組み合わせて作られています。2階分の高さがあって非常に解放感があるつくりです。

解放感のある吹き抜け

ちなみにカーテンも2階分の非常に大きなものですが、こちらも複数のカーテンを縫い合わせて作られていました。新品で2階分の高さのカーテンを用意するとなるとかなりの費用がかかりそうですが、リサイクル品を縫い合わせているのできっと費用は抑えられているのではないかと思います。

またこちらの施設を企画・設計された株式会社NAP建築設計事務所は
ZOZOの本社や表参道の東急プラザ、羽田空港第2ターミナルの増築に関わっており、リサイクル品を使用しながらも、デザイン性にも優れたホテルと言えそうです。

メゾネットタイプになっており、下にリビングとお風呂など。
上にお手洗いと布団は自身で敷くことになっています。

デスク、木で作られており作業していても落ち着きます
2階のロフト、絨毯はデニムのパッチワークです

そして大事な部分、部屋にあるゴミ箱がこちら↓


バスケットの中で6分別するようになっており、さらにチェックアウトをする際に実際に自身で町民と同じように45分別を行います。


百聞は一見に如かず。ただ「上勝町は45分別やってます」ということを聞くよりも、実際にやってみたほうが印象にも残ります。45分別の中には「タイヤ」など普段は捨てないようなものもあるので、実際の数字よりも難しくはない印象です。

また自身で日中の好きな時間に捨てに来られるので個人的には悪くないかもしれません。

チェックイン後、16時30分からスタッフの方からゼロウェイストセンターについての説明があります。ここで実際に町民の方が45分別をしているゴミ捨て場や様々なリサイクル品で作られている建物やデザインの説明を受けます。

捨てたゴミがどのように処理されるかが書いてあります。
表右上の「出」「入」は処理によってかかるお金、逆に入るお金が書かれます。
くるくるショップ
町民の使わなくなったものが並びます。町民はもちろん宿泊者も持ち帰ることができます

ゴミ集積所にはそれぞれ出したゴミがどのように処理されるのかが書かれています。またゴミの処理にかかる金額、または入ってくる金額もかかれているので、ただ漫然とゴミを出すのではなく、「意識してゴミを出す」そして「無駄なごみを減らそう」という気持ちになります。


ここまで読んでいただいたらわかるように、この施設は「宿泊体験施設」であり、おもてなしを受けにくるようなホテルや旅館といった施設ではありません。
しかし話を聞くよりも1泊2日の滞在を通して、上勝町やゼロウェイストという内容を知るという点においては非常に有意義な滞在ができます。

ここで学んだことを普段の生活でも意識してみようという気持ちになります。そう思えるだけでもこの施設から大きな影響を与えられているということでしょう。



またホテルになっていることで、部外者である私も関わりやすいと感じました。

「人口1500人、高齢化率50%の山村」と言われたら、なかなか一般の人には入りこみずらいかな、と思います。それがたった4室だけでも宿泊施設があり、しかもデザインが斬新であるということで関わりやすくなるのではないでしょうか。

ホテルの「おもてなし」だけではない、広報・メディア的な可能性を大いに感じさせてもらったホテルでした。



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