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富士山

この夏、富士山の大混雑とか規制の話を聞く度に、なんだかもどかしい気持ちになっていました。

わたしが富士山に登ったのは12年前、まだ世界遺産になる前のことです。

当時、大学生だった私はワンダーフォーゲル部に所属しており、
北アルプスの3000m峰に登っていたので
富士山も登頂できるだろう、そんな心持ちでいました。

しかし誤算といいますか、高山病は避けられませんでした。

富士山の登山口の一つである須走口から登り始めて、途中で吉田口からの登山道に合流、
なんとか吉田・須走登山道の山頂に立つことはできましたが、高山病による頭痛でダウン。

お鉢めぐり、そして本当の山頂 剣ヶ峰に立つことは叶いませんでした。


高山病は標高を下げると治ります。
1時間ほど山頂で休憩した後に降りはじめたらすぐに回復。登山口までサクサクと下りることができました。

いわゆる弾丸登山です。ただ当時は弾丸登山に対して否定的な風潮はなかったと記憶しています。
父も若い頃は仕事終わりに車を走らせ富士山に登ったと話していました。

ただ当時と今が異なるのは登山者の人数でしょうか…。
母数が多くなりすぎたせいで、
弾丸登山で一部の体調を崩した方も多くなっている…


そんな苦い思い出もある富士山ですが、


それを帳消しにするほど確かに美しい山です。
あれだけ均整のとれた山で、尚且つ単独峰、世界遺産、そして日本一標高の高い山ですから人気があるのも頷けます。

この記事を書くにあたって当時の写真を探してみましたが、
久しぶりに眺めてみるとその景色は抜群にきれい。

他の山ではなかなか見られない景色
12月大菩薩嶺から


たしか8合目くらいからの御来光


登山をする人にとって富士山は眺める山であって登る山じゃない、という話はよく聞きますが、それは富士山が抱える問題のせいであって、
山自体はどんな登山者も虜にしてしまう魅力的な山であると思うのです。


さてその富士山が抱える問題ですが…


初心者が登りすぎ

日本には3000mを超える山が21座ありますが、この中で私が素人でも案内できそうなのは乗鞍岳くらい。
あとは運動できそうな人なら立山か御嶽山は行けるか…そんな感じです。
他の18座は勇気が入ります

それくらい富士山は難しいと思っています。

富士山の登山道はよく整備はされているためテクニックは必要ありせんが、1000m以上登る体力は必要です。

私であれば標高差1000m以上の山は素人には薦めません。

また冒頭の体験のように3776mは他の3000m峰とは大きく異なります。

高山病のなりやすさはもちろん日本一でしょう。

そして単独峰であるが故に荒天時の風が強い、落雷などがあった場合身を隠す所が無い、
また好天時も日差しを遮るものが無い、

など懸念する点が多いのです。

条件が悪くなければ登れると思いますが、

楽しい登山になるか?

という点においても
初心者が挑む山ではないと思います。


開山期間が短い

今年の富士山の開山期間は7/1〜9/10、
約2ヶ月です。
さらに台風や前線がかかって登山が困難な日を除けば、登頂できる日はかなり限られます。

そこに日本のみならず海外からの観光客も来るのですから混雑は必至です。
山小屋はギューギューづめ、登山道は渋滞、
山に登る以外も大変です。


御来光問題

富士山って他の山と比べて

山頂で御来光を眺める

ことが重視されがちな気がします。

北アルプスでは山小屋前で眺めて満足している方が多いような。

元気な方は暗いうちから登っていますが、それも少数派。
山小屋から近い山頂であれば向かう人も多いですが、30分とかそれ以上かかる場合は多くの人は山小屋前で楽しんでいます。

富士山は吉田ルートや須走ルートであれば、登山道の途中からでも御来光を眺めることができます。
渋滞を起こしてまで山頂で眺めようとする富士山は、やはり不思議です。


山小屋

上記の問題に絡めて山小屋の話を。

富士山の山小屋は1年の内のたった2ヶ月という短い期間で売り上げを出さないといけないので、
値段の割にサービスは質素になりがちです。


夕食はカレー、朝食はお弁当、立ち寄りの人が買える軽食はレトルトなど。
調べても「手作り」がほとんど見られません。

運賃の高いヘリコプターに頼ることなく、
ブルドーザーで荷物の上げ下げができる山小屋にしては、やはりサービスがいまひとつ…
それだけ富士山の山小屋を維持するのは大変なのでしょうが…


またスタッフ側の視点になりますが、
御来光登山に対応するため営業時間も24時間近かったり、夜通し開けている小屋もあります。

そんな不規則な体制ながら登山の「と」の字も知らない初心者が押し寄せてくるのです。


富士山の山小屋のスタッフの苦労は想像するに耐えません。

とはいえGoogleマップなどの口コミに上がるような、
スタッフが上から目線だとか、
客を客だと思ってない、

というような低評価にされてしまう事例は営業努力で減らせるものとも思いますが…。

もっと過ごしやすい山小屋は全国にたくさんあるのですが、富士山の山小屋を体験したことによって、他の山小屋も同じようだと思われてしまうのは残念でなりません。



山を楽しむ要素の一つとしての富士山に


人生で初めて登る山が富士山、あるいは東京近郊の人が高尾山の次に登る山に富士山を上げるのはやはり無理があります。

逆に富士山に登る体力があるのならば、
他にも登れる山はたくさんあります。

大雪山の旭岳、青森の岩木山、福島の磐梯山
滋賀の伊吹山、、四国の石鎚山、九州の九重山
有名どころしか上げていませんが、

このような名峰と呼ばれるような山で、
体力をつけ、山を好きになって、それから富士山に登ればいいのに…。
そしたら感動もひとしおです。

そして他の地域にある山小屋も登頂を目的とするだけでない、山で過ごすことにも重点をおいています。

ご飯に工夫を凝らすところ、談話室や外のスペースなど山で過ごす時間を快適にするなど…

北穂高小屋の前のテラス 御来光を待ちます
尾瀬小屋 フレンチトースト
大天荘 ランプの喫茶


日本の名峰と呼ばれるような山を登りながら、
そのステップアップしていく過程の中で富士山に登るような状況になる、

「富士登山」という小さなカテゴリーでなく、
「登山」という大きなカテゴリーの中に富士山が組み込まれ、
より山に親しむ方が増える一つのきっかけとしての富士山になるといいのにな、

と富士山のニュースを見ながら思うのでした。

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