2023年山小屋を考える①
『山と渓谷』の8月号を買いました。
今月号の特集は「北アルプス山小屋物語」
山小屋に携わってきた人間として
これは買わねば、ということで本屋で見つけて即購入!
でも「山小屋の特集」って珍しいな、
と思ってバックナンバーを2015年まで遡ってみたところ特集を組んでいたのは、
2021年の8月号のみ。
2年ぶりと言えばヤマケイとしては普通なのかもしれませんが、
その前の6年で第一の特集で組まれたことがないようです。(見落としがあったらごめんなさい🙏)
今それだけ山小屋というものに焦点が当たっている、そんな雰囲気を感じます。
これまでのnote記事と重複する部分もありますが、このタイミングで改めて山小屋について考えて綴りたいと思います。
今働いている職場にはコロナ前から山小屋で働いていた方が数人いて、
つい先日もコロナ前の山小屋の話になりました。
今でこそ完全予約制が取られている山小屋ですが、コロナ前までは予約が無い登山者も全て受け入れていました。
定員200名に対して300、400受け入れるのは当たり前。
この定員とは布団の枚数とほぼ同義。
定員までの宿泊者数であれば、
1人1枚の布団で寝ることができますが、
定員の200%、300%になってくれば
1枚の布団に2人とか、3人とか、ということになってきます。
私がいた小屋は比較的大きかったため、
最盛期でも1枚の布団に2人ですみましたが、
2枚の布団で5人とか、
体を横にできないから皆で体操座りをして寝るんだとか、
冗談みたいな話もありました。
そんな状態ですから、例えば就寝中にお手洗いに立ってしまえば、
自分が寝ていた場所は既に別の人が侵入して、
寝る場所が無くなってしまう、
そんなこともあるわけで、
私が働いていた時にも
早朝の3時ごろに朝食の準備をしていた時に、ふと食堂の外のベンチを見たら誰かが寝ていた、ということもありました。
それだけコロナ前の山小屋は
宿泊施設 というよりも
登山者が夜間に雨風寒さを凌げる場所、
そんな意味合いが強かったのだろうと思います。
そして山小屋の個性というよりも、
どこの山の近くにあるかが、
大事だった時代、そのように思います。
さてコロナ禍がきて、山小屋もこれまでのように予約無しの人も全員受け入れる、ことができなくなりました。
密にさせないため、元々の定員を減らして、
1人1枚の布団はもちろん、
パーテーションやカーテンなど、
プライベートを確保できるような設備も整ってきました。
今まで鮨詰めどころかオイルサーディン状態とも揶揄されてきた山小屋も、
カプセルホテルくらいの快適さを確保できるようになってきたのです。
こう快適になってくると山小屋での過ごし方も変わってきます。
ただ寝るだけの場所から快適に山で過ごせる場所へ。
元々このようなサービスが無かったわけではありません。
でもきっとゆったりとした空間で楽しめることは無かった気がします。
私も度々山小屋を利用しますが、
コロナ前は山でゆっくりしよう、
そんな考えはあまり持っていませんでした。
山に登る時にはどの山に登るかは大事ですが、
どこの山小屋に泊まるか、ということも
コロナを通してより重要性が高まったと思っています。
今回の山小屋特集には、そこまで山小屋での過ごし方にフォーカスした内容はありませんでしたが、
コロナを通して間違いなく山小屋の存在意義って大きく、そして多様になったな、と思っています。
次回は山小屋とスタッフについて書こうと思います。
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?