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尾瀬の歩荷さん

歩荷さんとは

尾瀬の山小屋を語る上で、
欠かすことができない方々

「歩荷さん」

「歩荷」と書いて「ぼっか」と読みます。

トップ画にも使用しましたが
「背負子」と呼ばれる器具に
ダンボールや発泡スチロールなどの荷物を高く積み、それをロープで縛って運びます。

担ぐ荷物のあまりの高さに、
背負う人自身が隠れてしまい、
まるで荷物が歩いているように見えることから歩荷と呼ばれるようです。

日本の山では度々この歩荷さんを見ることがありますが、
ほとんどの歩荷さんは山小屋スタッフが山小屋の業務の傍らで行っているものです。

私も歩荷の経験はあります。

↑歩荷に関する記事

しかし尾瀬の歩荷さんに関しては山小屋に所属しておらず、
「歩荷」そのものを生業にしている方々。


我々のような山小屋の歩荷にしてみれば、
まさにプロの歩荷さんなのです。


私が担ぎあげる荷物は最も重くて50kgくらいですか、尾瀬の歩荷さんたちは100kgくらいは担ぎます。

50kgでさえ、立っているだけで汗が吹き出る重さ。歩くことさえ苦痛です。


尾瀬の歩荷さんは、その倍を背負って歩いているのです。
私からしたら尊敬の気持ちしかありません。

尾瀬の歩荷さんはほぼ毎日尾瀬を歩いて各小屋に荷物を届けています。


私がいた山小屋は登山口から近いエリアにあり、
小屋の荷物を持ってきてもらうのはもちろんですが、

奥に向かう際の休憩場所として、
歩荷さんがほぼ毎日立ち寄ってくださっていました。

今年に関しては6名の歩荷さんが従事しているのですが、
ほぼ毎日お会いするため山小屋のスタッフの
次くらいに名前を覚えます。

仲良くさせていただいて、
荷物の縛り方を教えてもらいました


歩荷さんのありがたいところ


日本にあるほとんどの山小屋は物資の輸送をヘリコプターに頼っています。

ヘリコプターは数100キロ〜1トンの荷物を、一度に運ぶことができます。さらに何度も往復することで大量の荷物を輸送します。

そして歩いて5〜6時間かかるような場所でも、
10分足らずで運ぶのです。

単純に歩荷さんが10人いたとしても、
ヘリコプターの輸送力には到底敵わないのです。

ただしヘリコプターは山小屋にもよりますが、
飛ぶ頻度は多くても2〜3週間に一度。
視界不良だと飛ばないので、天気が悪ければさらに間隔が空きます。



例えば野菜が足りなければ次のヘリコプターまでは待たなければならず、
それは天候次第では1〜2週間はズレることがあります。
その間は代替品を使うか、節約するしかありません。


一方尾瀬では歩荷さんはほぼ毎日きてくださる上に、下の事務所に品物さえ届けば、
多少の悪天候でも運んできてくださいます。

食品はもちろんのこと、リネンや小屋で使うような書類、スタッフ宛の手紙や荷物など、

以前は冷蔵庫や、ビジターセンターにカモシカの剥製なんて物も運んでいましたね。


背負子に括り付けられれば何でも運んでくださるといっても過言ではありません。

歩荷さんのおかげで、尾瀬の山小屋は様々な面で助かっており、
お客さまに対してもサービスの幅を広げることができているのです。


尾瀬のアイドル

尾瀬の歩荷さんといえば、
少し前までは登山者が
話しかけてはいけない

存在でした。

それは荷物が重すぎるがゆえ、
話すことさえ呼吸が乱れ、
仕事に支障をきたすためです。

私が学生の頃でさえ、まだそのように言われていて、尾瀬を影から支える孤高の存在でした。

その尾瀬の歩荷さんが最近Youtubeをされています。


歩荷さんの話から、尾瀬の最新情報まで盛りだくさん。

あまり尾瀬の情報を伝える媒体が少ない中、
常に最新の情報を伝えてくださる非常にありがたいチャンネルです。

尾瀬を愛する思いがビンビン伝わってきます。
尾瀬に行く予定の方はぜひ参考にしてみてください。

そのYoutubeの人気から、徐々に知名度が上がってきて、
現在は尾瀬のアイドルと言っても過言ではありません。

特にメインでYoutubeをされている
萩原雅人さん(まーくん)は大変人気のようで、

山小屋では「今日はまーくんだから足止めされてそうだね」
なんて話も出るほど。

歩荷さんが担う役割が荷物の輸送から
広報まて幅広くなってきています。

今後の活躍が楽しみです。


最後にお願いごと

もし尾瀬で歩荷さんに会った時は

特に荷物を背負っている時は、
無闇に話しかけない、進路を塞がない、
などの配慮が必要です。

プロとはいえ、一般の登山者とは比べものにならない負荷をかけながら歩いています。

挨拶すらもしんどいほどです。
休憩も頻繁に取らなければなりません。

それは最低限理解しておくべきことかと思います。

ただ山小屋で休憩している時は話しかけても良いかもしれません。
もちろん歩荷さんによっては寡黙な方もおられますので、そこはご理解くださいね。

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