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【第15回 ぬのっと えほん 12ぺーじめ】

第15回 ぬのっとえほん 12ぺーじめ

前の駅を出てから、次の停車駅までは距離があり、

電車の車窓から見えるお外は、とっぷりと日が暮れています。

前の駅でこの電車に乗り込む前に、
今夜泊めてもらえるホストファミリーを紹介してもらった
布製ロボ ヌノットは、

車内の床をズズズ…と移動する
円形のお掃除ロボを見つめていました。

キレイな まんまるボディに、
雑に貼られたガムテープと、その上に書かれた文字。

『お脚元を失礼します。終点までお掃除を続けます。※脱走癖あり』

あちらへ、こちらへ、
縦横無尽に床のお掃除を続けるそのロボに、
ヌノットは
『おつかれさまです…』と心の中でポツリ。

『自分はお掃除があまり得意でないから、本当に尊敬します…』

そんな当て所のない思いを 宙へぶら下げていると

『次はぁーーー、oto3(Twitter @oto3z4z8) 間もなくぅーーー、oto3ーーーー』

さ、て、と。
ヌノットがプシューっと開くドアに向けて歩き出すと、
並走するように出ていこうとするお掃除ロボ。

『…貴方はもう少し職務を全うしてくださいね』
ヌノットはそうつぶやくと、ひょいとお掃除ロボを拾い上げ、
車内に戻し、速度を徐々に上げていく車両を見送りました。

明るいオレンジが点る改札を抜けると、
辺りは一転、ネイビーブルー。

ヌノットは手持ちのスマホで、ホストファミリー宅への地図を開くと、
その指示に従って歩を進めます。

『地図アプリさんも、ロボだよね!?おつかれさまです』

地図アプリは返答も無く、黙々と案内を続けます…。

街灯もまばらになり、かれこれ20分くらいは歩いたでしょうか?

地図アプリさんが現在地を示している矢印が、急にクルクルと回転を始めました!

『ぬぬ!?』とヌノットが戸惑って画面とにらめっこしていると…

バリバリバリバリバリバリバリバリぃーーーーーーーー!!!!!

『か、雷落ちた!?ひぃーーーーーーーーー』と、
現状を飲み込めず、オヘソを押さえてしゃがみこむヌノット。

うーーーっすらと目を開いてみると、
そこには人影が?

目が慣れてくると、
その人影がハッキリと捉えられてきました。



(サミュエル単体 画像、プンシーリンク付き)
上半身が裸。
肌にはびっしりとタトゥー。

手にはエコバッグと、その中には長ネギや大根が見えます。

あまりのドタバタ劇に、
ヌノットがその人影を注視したまま固まっていると、

人影『……こんばんは。』

ヌノット『……こんばんロボ。あ、あやの、その…ぅう』

……しばしの沈黙の中で、その人影を見遣ると、

気まずさをやり過ごすように目を閉じています。

人影『……そ、それでは。』

ヌノット『あ、はい、ありがとうございます(?)』

心臓(パーツ)がドキドキするのを
ゆっくりゆっくり正常値に戻し、
気を取り直して、
ホストファミリー宅へ向かいます。

(ホストファミリー宅)

父『こんばんは、ヌノット!待っていたよ!』

母『いらっしゃい。子どもたちも楽しみに待っていたのよ!』

兄『わぁー!本当に布製ロボが来てくれたよ!!』

妹『ぎゅー、しよ!ぎゅー!』

猫『みゃお』

一通りご挨拶を済ませたら、
早速みんなでディナーを囲み、
旅のお土産話に花が咲きました。

父『いやはや、話は尽きないけれど…ヌノットも疲れているだろ?今夜はもうお休み。』

ベッドと、机と、カーテンと…いい香りで清潔そうな白い部屋に、
ホストファミリーの父が案内してくれました。

父『素敵な夢を…』

パタン

本当はすぐ横になりたいくらい疲労感があったけれど、
何だか惹かれるものがあり、
出窓に向けて置かれた
机へ。

クッション敷きのシンプルな椅子を引き、
そこへちょこんと腰掛け、
何だかちょっとオトナな気分…

ホストファミリーたちは寝たのかな?
何だか静かだな…

ガタガタ…

ヌノット『ん?』

引き出しから物音が…

ヌノットが覗き込むと

ガターーーーーン

ごちーーーーーーーん

何かが引き出しから飛び出してきて、頭を強くぶつけました!!

『いちちちちちち…』
たんこぶになりそうなおでこを押さえて薄目を開けると、

『あー?!』

さっき雷鳴と共に現れた、あの人!!!

人影『す、すいません…』

ヌノット『か、かえってすいません…』

しばしの沈黙の中、相手を窺うと
気まずさを回避するように目を閉じています。

人影『…自分はサミュエル。この家のハウスキーパーロボ。』

自己紹介と、頭ごちーんの謝罪のラリーをひとしきり終えると、

ぽつりぽつりと
お互いの身の上話が始まりました。
と言っても、言葉少なに
本当にゆっくりと…。

サミュエルは、
普段はこの家のお手伝いをしていること。

お仕事以外は節電のため座っていること。

身体中のタトゥーは、
防犯上の理由から。

……

ヌノットは、
旅をしていること。

故郷の家族の話。

これまでに旅で体験したエピソードや、出会った人の話も。

互いが苦でないペースで、
沈黙をはさんでゆっくりと…

それぞれが互いに親近感を持ち始めた頃、

静まり返っているはずのリビングから
激しい音が!!

ガタァーーーーン!
パリィーーーーーーーーン!!!!

慌てて音のした方へ駆けていく2人?
2体?

家族も集まっていました。
子どもたちは両親にしがみつき、泣いている、震えている。

父親はバット、母親はフライパンを手に、
一点を見つめています。

目線の先を見れば、
窓ガラスが粉々に!?

『ど、ど、泥棒!?』
わなわなと震える家族を尻目に、

じっと辺りを窺い、考え込むサミュエル。

すると…

『泥棒じゃない…自分わかりました。』

そう話すサミュエルに、
一同が刮目する。

『ど、どういうこと?説明して』と母親。

サミュエル『まず、割れた窓ガラス。 外から割られたら、家の中に破片。』

サミュエル『でも、家の外に破片。内側から割られてる。』

父親『た、確かに。ということは中に犯人が?!』

サミュエル『飾ってた花瓶の破片も混ざってる。それから…』
と歩き出したサミュエルは、
犯人を捕まえて連れてきました。

猫『みゃおーん』

サミュエル『この子の首輪に、花瓶のバラの花びら…』

そうだったのか‼️と、
サミュエルの名推理に、ホッと胸を撫で下ろす一同。

サミュエル『…あとの処理は自分が。』

そう言うと、
サミュエルはヌノットを抱えながら、
散らばった破片をお掃除しました。


『サミュエル…お疲れ様です』とヌノットがぽつり。

翌朝、ホストファミリーの元を去る時には、
みんなと熱いハグを。
(もちろんサミュエルとも)

自分と同じロボットの活躍を沢山感じた、今回の旅でありました!

第16回 13ぺーじめへ続く

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