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新語?「カフェ活」「アクスタ」をツイートデータで可視化してみる

Z世代など若い人たちを中心に「カフェ活」なるものがジワジワ広がっているようです。一方検索してもはっきりとした定義はヒットしません。おそらくSNSでユーザーさんたちが自然発生的に使い始め、当事者に近い人たちから徐々に認知されていると思われます。

その実態はどんなものなのでしょうか?Twitter社のデータから分析すると、「アクスタ」の存在が浮かび上がってきました。

急速に増える「カフェ活」ツイート

そこでまずTwitterがサービスを開始した2006年3月21日以降の歴史の中で、「カフェ活」なる表現がいつツイートされ、現在までにどのように増加しているのか視覚化してみました。データはTwitter WEB APIよりPythonで取得しています。

ご覧のように、2009年8月に初めて登場して以降はしばらく1ヶ月あたり100件前後で推移していたのが、2015年と2017年の二つの山を経て、2019年に入るころから急激に増えている様子がわかります。

ツイート件数の絶対数という面では、爆発的にバズっているというわけではないですが、急速に認知と使用が進んでいる語と見てよさそうです。

ではこうしたツイートをしている人たちは、「カフェ活」としていったいどんな行動をしたりどんな意識を抱いているのでしょうか?

ツイート本文の自然言語解析から探ってみたいと思います。

Twitter WEB APIからツイート本文に「カフェ活」を含む直近2,143件のツイートを取得し、そのテキストを自然言語解析した上で、共起ネットワークとして描きました。

自然言語解析から見える「カフェ活」の多様性

全体像がこちらです。

可読性を考慮し少しトリミングしていますが、主な要素は入っていると思います。順番に読み解いてみましょう。


まず起点となっているカフェ活の「カフェ」。この語はネットワーク全体の中で突出して次数中心性が高い語で、非常に多くの多様な語と繋がっています。

一方ご覧のように「カフェ」から放射状に繋がっている「レストラン」「テラス」「アイス」といった多くの語は、「カフェ」としか繋がりを持っていません。

つまりこれらの語はカフェ活ツイートに共通して現れる頻出語というわけではなくて、人それぞれに使われている語のようです。

別の言い方をすれば「カフェ活といえばコレ」という大きな共通項はあまり存在していない、ということになります。

みなさん、カフェ活で思い思いの行動やツイートをされているわけですね。

カフェ活は推し活?

ところが、この放射状のネットの右側に、互いに繋がりあったもう一つのネットが出現しています。

こちらの方に、何かヒントがありそうです。拡大してみてみましょう。

この塊の中心にあるのは「オタ」です。「オタ」と直接リンクをもっている語を黄色でハイライトしてみました。

「オタ」はもちろん「カフェ」とのリンクをもっていますし、他の多くの語ともリンクをもち、それらの語の多くは更に他の語と繋がっています。

つまりこれらは一緒に共起されている=一緒にツイートされているケースが多い、ということになります。

そして「オタ」は、ネット全体の中で「カフェ」に次いで次数中心性が高い=他の語との繋がりが多い語となっています。

次のりすとはリンクの数が10本以上の語ですが、ご覧の様に「推す」「ヲタ」などが上位に来ています。

カフェ 515
オタ 117
行く 72
推す 60
朝活 45
楽しい 40
今日 36
ヲタ 30
一緒 30
友達 27
婚活 26
できる 22
食べる 21
可愛い 21
好き 19
巡り 19
楽しみ 18
最高 17
職業 16
趣味 16
美味しい 16
いい 14
会う 14
イベント 13
場所 13
撮る 13
良い 13
学歴 12
アミ 12
嬉しい 12
写真 12
休日 11
言う 11
アクスタ 11
明日 11
些細 11
就活 11
住所 10
運ぶ 10
すぎる 10
買う 10

つまり一見多様で掴みどころがなさそうに見える「カフェ活」の中でも、「オタ活」や「推し活」に関わるものは、ある程度共通して行われている、と考えることができます。

コーヒーやフードは主題ではないわけですね。

「アクスタ」と写真を撮るカフェ活

そして私が興味深く感じたのは、上記リストにもランクインしている「アクスタ」です。

この「アクスタ」は数の様な語と直接のリンクを持っています。

つまり、カフェに可愛い「アクスタ」を連れて持っていて、写真を撮っているらしい。そんな姿が見えてきます。どういうことなのでしょうか?

実際Twitterの検索窓に「カフェ活 アクスタ」と入力してこの二語が共起されているツイートを検索してみます。すると上位には下記のようなユーザーさんのツイートが上がってきます。

なるほど、アクスタというのは「アクリルスタンド」の略で、自分が推しているアーティストやアニメーションキャラクターの写真やイラストが、透明で自立するアクリルスタンドとして製作されたものなわけですね。

公式グッズとして販売されているものの他に、ファンの方々が小ロットから制作して販売したりされています。

共起ネットワーク分析からわかるのは、カフェに、こうしたアクスタを持っていって写真を撮っている方々が一定数存在しているちうことです。

そしてアクスタを、飲み物や食べ物に重なるように手前に置いて写真を撮っているわけですね。

たしかに、足の隙間などが透明だから実在感があるし、そうすることで「推しと一緒に飲食を楽しんでいる」という感覚を得ることができます。

そういえば百均にいくと、アクリルスタンドや、それを入れて持ち運ぶための透明なグッズが売られていますね。

どのような用途で使われているのか、今回の分析で合点がいきました!

超複製芸術時代、「アクスタ」に宿るアウラ

さらにおもしろいのは、スマホ上でなんでも合成できる時代に、なぜわざわざ物理的なアクスタを自作し、カフェまで出かけて撮影しているのか、ということですね。

ある意味で、超複製技術時代の自作芸術作品なのかもしれません。

ヴァルター・ベンヤミンの言った「アウラ」がここにある。

スマホやサブスクが生活を覆うことによって、世界は無限回コピーしても劣化しないデジタル情報で溢れています。

そんな環境が、私たちを「いま」「ここ」にしか存在しないという「一回性」に向かわせている。

デジタルネイティブと言われる若年層ですが、アクスタを持ち運んで撮影したり、自作したりと、フィジカルな手間隙にこそ魅力を感じている様が、ネットワーク図に浮かび上がっています。

色々なアクスタ写真を集めて視覚から分析してもおもしろそうです。

まだ辞書的に定義されていない新語や新しい用法の出現が、こうしてオープンデータを使ってじかに分析できるなんて、ほんとうにワクワクする時代です!

以上、徒然研究室でした。


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