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萩原慎一郎さんの歌集、『滑走路』を読んで

歌集 滑走路 萩原慎一郎

(単行本 角川書店、文庫本 角川文庫)


この本は、

短歌、二百九十五首を載せた歌集です。

作者は、萩原慎一郎さん。

この第一歌集を出して、まもなく

32歳で亡くなられた方です(2017年)。


本とは出会いのようなもの、

とは聞いたことのあるようなセリフと

思うのですけれども、

49年生きて来て、

気が付いたら手元にこの本は

ありました。


本のタイトルにあるように、

滑走路から飛び立とうとする

若者の短歌集です。


孤独の辛さを覚えるとき、

気分が落ち込んだとき、

気弱になったときに

この歌集を読むと、

救われる気持ちになります。


扱うテーマは、

恋愛、社会、仕事など

多岐に渡りますし、

明るい歌もあれば、

暗く沈んだ歌もあります。


しかしながら、

すべての歌に通じている事が

あって、

それは萩原さんの持つ優しさなのでした。


色んな歌いぶりなのに、

どの歌を読んでも、

私の心を慰めてくれる優しさが

伝わって来るのです。


彼は32歳で亡くなられて、

私は49歳を生きている。


今の自分の年齢にそぐわない気持ちが、

あるいは、

過去に私も経験した事柄を読んで、

すでに見知ったかもしれないことを

読んでいるにも関わらず、

萩原さんの歌の、萩原さんの優しさは、

年齢、時間、おそらくは性別も越えて、

今なお、また、

くり返し読んでも、

新鮮な心情として伝わって来るのでした。


どのページを開いても、

そこには、

人の持つあたたかみの感じられる

一首があるのでした。


そんな、人の持つあたたかみを受けて、

私は何を想うか。


私は、この本から確かなものを

受け取り、

そして、この本から

私も滑走路から飛び立ちたい。

そんな気持ちに、

思わず駆られるのでした。


そして冷静に、

今の自分をふり返り、

今生きていること、

それはすでに、

滑走路から飛び立っていることなのかも

知れませんけれども、

一人の人間として、

この命を大切に生きてゆきたいと、

思うところなのです。


萩原さんの歌には、

必ず想定している読者(私)が存在していて、

それに向ける優しい眼差しを受けて、

感じ入るのでした。


この本の持つ魅力。

それは、

言葉にすることの尊さを

教えてくれる、

奇跡的な一冊として

今の私の人生に、

大きな力を与えてくれています。


(おわり)



☆ あとがき


読書感想文を書くのは、

小学生以来です。


感想なので、

自分の思いを書いたに過ぎないと

思っています。


誰にお薦めするでもないのかも

しれないのですけれども、

私にとっては、

自分の人生で今まで読んできた本の中で、

最も大切な一冊として、

愛読するものです。


          つる 以上

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