夫と子供と私の話②
なんとも言えない緊張感のある日常から少しでも解放されたくて、久しぶりに里帰りする事にした。
すぐに寝てしまう夫を置いて1週間も家を空ける事に不安が無いわけではなかったけど、私の肉体と精神もかなり追い込まれていたので、ここらで息抜きをする必要があった。
夫本人もすぐに寝てしまう自分に不安が無いわけではない感じだったけど、「どうせだったら1人で韓国でも行こうかな」と案外呑気なものだった。
旅行好きの夫。
旅行は夫のアイデンティティだったと思う。
お金もろくに貯めずに時間があれば色んなところに行ってしまう。
2人でも、子供が生まれてからは3人でも行ったけど、基本は1人で。
まだ小さい子供もいるのに、見る人から見れば夫としては結構アウトかもしれない。
でも私は色んな国に旅行しに行く夫の事が大好きだった。
病気になっても、むしろ病気になってからの方が精力的に、普通そこに行く?みたいな国にも色々行った。
旅行してれば夫は死なないような気がしていた。
北朝鮮にも行ったくせに旅行先としてはかなりメジャーな韓国は初めてで、どんな美味しいものを食べて帰って来るんだろうか、と思っていたら結局体調が優れなかったので一泊二日で一食しか食べられず、
しかも携帯を紛失して帰って来た。
「ああ、もういよいよ入院だな…」という感じだったけど、夫はまだ粘っていた。
子供の誕生日があったから。
今年で4歳のうちの子供は、まだ玩具屋さんというものに行ったことがなく、夫は以前から「誕生日になったら玩具屋さんにプレゼントを選びに行こう」と子供と約束していた。
だから、どんなにしんどくても子供の誕生日を祝うまでは家で過ごしたかったんだと思う。
子供の誕生日も、夫はとても辛そうだった。
無理をしないようにタクシーで玩具屋さんに行き、初めての夢の空間に大喜びする子供にとても満足そうだったけど、一度バランスを崩してしゃがみ込んだ際、自力で立ち上がれなくなってしまいとても難儀した。
夫はその日の外出を境に杖をついて歩くようになった。
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