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劇場は創作する場所

代表の弦巻です。
5月20日21日、27日28日、二週にわたって開催された『演出のワークショップ』は、無事に4日間のメニュー全てが終了しました。

最終日は怒涛の5チーム場当たり、5チーム通し(ゲネ)、5チームの本番というタイトスケジュール。ゲネ前の最終調整の時間が殆どとれなかったけど、今回使用テキストに選ばれた『マクベス』を各チーム創意工夫に溢れた5種類に仕上げてくれました。
やっぱり面白かった。お疲れ様でしたー!!

今回の内容は
初日、二日目に『マクベス』の冒頭から1幕5場までを全員でミザンス考え、それに弦巻が手を加え修正していきました。

考えて欲しいポイントとして提示したのは、
①空間をどう捉えるか
②ミザンスを考える
③転換をどうするか
(④効果⦅音・光等⦆をどうするか)

この①〜③をまず参加者がディスカッションし考え、仕上げたものを弦巻が「自分なら」と修正し演出を見せていきました。

二週目の三日目、四日目は5人の演出家率いる5チームそれぞれで『マクベス』の中から10分くらいのやりたい場面を選び、各自で作品作りをしてもらいました。
カタリナスタジオの平台や箱馬をあーでもない、こーでもない、と各チーム悩み、苦心し、演出を試みていました。


終わってみれば最後のディスカッションをもっとしたかった。お互いの演出をどう思ったか。どの辺が意図したことで、どの辺が上手くいったのか。
囲み舞台にしたり、中央に大きな井戸を設置したり、素舞台で役者の影を活かした演出にしたり…発表は色々なアイディアに溢れてました。

正直、それらを「なぜ選ぶのか?」という『演出論』はまだまだ心許ない感じでしたが、劇場で、様々なことを試せる!実行できる!そんな喜びが溢れてました。赤ん坊が自分の体を叩いたり触ったり口に入れたりして実感を得ていくように。それで良いと思っています。

必要があって技術を採用していく前に、まずどんな技術が可能なのか、どんな技術が存在するのか、演劇はどこまで自由なのか、そうした知識を身につけながら、創作を通して取捨選択を身をもって体験し、やがて自分の中に『演出論』を構築してくれたら、と思います。

受講生からのアンケートに
「演出をつけていて、これは『良い』演出だからつけているのか、『好き』だからつけているのか、分からなくなる。」
という悩みがありました。

最後に少しだけまとめた時に触れました。自分は『好き』で良いんじゃない?と伝えました。
その『好き』を仲間に了解してもらうには言葉が必要かもしれないけど、みんなにとってや観客にとって『良い』演出とは何か?なんて第一に考えなくて良いよ、と。それはもっと後で良い。

参加者みんなで楽しみたい、ならそれで良いし、
自分の美学を誰になんて言われてもやり切りたい!ならそれで良い。

もし、どこかに誰もが納得できる『良い』演出の基準なんかがあったとしたら、演出家なんて必要ないんじゃない?と。

翻って「評価されること」についても話しました。最近プロの世界のコンクールなんかでも取り上げられていたトピックです。

自分は評価とはその時々の評価する人間(例えば審査員)によって評価が変わることは当然であり、だからこそ価値があるんだと考えるタイプです。ざっくり言えばカンヌ映画祭方式ですね。

もちろん言葉を尽くしてくれない審査員(「好きだからとにかくこれが一番!だってそう思ったんだもん!」)は勘弁して欲しいなあと思います。参ったな、ハズレだ。そう思うでしょう。でもその人が責務を果たしてないとは思いません。どちらかと言えば、なんでそんな人を審査員にしたんだと考える立場です。

たまたま選ばれれば、たまたま選ばれないかもしれない。
そのたまたまの網目をできるだけ小さくし、こぼれにくくなるように作品の完成度を上げる。
創作者にできるのはそこまでなんじゃないかと思います。
繰り返しですが、だからこそ価値がある、と。

閑話休題。

内容や課題についてももっと最適解があった気がします。
それでも劇場で実際にやれて本当に良かった。照明や空間について考えたこの経験が、みんなの今後に少しでも活きてくれると嬉しいです。
カタリナスタジオさんには本当に感謝。人が育つには環境が何より肝心。それは場所と、時間です。それさえあれば極論指導者なんて必要無いとさえ思う。そして照明の中森さん。大変な企画に根気強く献身的に参加してくれました。どうもありがとう。

若い人の多かった今回のWS。カタリナスタジオの小佐部(さん)とも「今回の参加者がゆくゆくはここで公演を打つようになったら素敵だね〜」と話しました。たくさん経験して、色んな芝居を見て、自分の『演出論』を、もっと言えば自分の『好き』を見つけて、それを信じ抜いて、舞台を作って欲しい。

お疲れ様でした!
また来年!!

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