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ヴィンテージ楽器電子化計画「MeloMIDIca」その②(仕様と部品選定)

6年前にスタートし、今年のGWあたりから本腰入れてやり直し始めた、プロジェクト「MeloMIDIca」。ヴィンテージ鍵盤ハーモニカ「Melodica」をMIDI化する計画だ。
作るものは「プリント基板」と、鍵盤を取り付ける「鍵盤フレーム」、そして「ソフト」。今回はプリント基板…の前に、仕様の検討と部品選定から。

1950年代のMelodica Sopranoと、後にプラスティック化されたMelodica Alto。


MeloMIDIcaに入れたい機能

まずは、どんな機能を入れるのかを決めないと、部品選定も設計もできやしない。目的は「ライブで使える楽器」だから、入れるのは基本的な機能だけで十分だろう。こんな感じかな。

  • 鍵盤の入力

  • ブレスコントロール

  • ピッチベンド

  • MIDI出力(USB MIDI)

バッテリーを搭載することも考えたんだけど、ひとまずは軽量化を優先させて、バッテリーは外部に持つことにした。というか、現状ではUSBで繋ぐわけだから、USB経由で電源を取ればいい。
将来的にはBluetooth(BLE-MIDI)を内蔵して無線化すると思うので、バッテリーはそれと合わせて考えることにしよう。

まずは、首下げストラップにUSBケーブルとバッテリーを付けるのが良さそう。


鍵盤の入力

鍵盤にはベロシティやらアフタータッチを付ける余裕はないので、機能としては単純なオン/オフのスイッチになる。6年前の試作の時点でぴったりサイズのものを選定して大量に購入してあるんで、これを使うことにする。基板に実装できるタイプ。


ブレスコントロール

これは6年前から悩みのタネのひとつだったもの。

当初は、水分を含む「呼気」を扱うわけだから、流量センサ(フローセンサ)を使ったらどうかと思って実験もしたんだけど、レスポンスが悪すぎてボツ(あと、部品が高価)。

となると圧力センサになるわけだが、こちらはアナログ値で出力されるからレスポンスは十分ではあるものの、なんだか実験している間にも値が不安定になっていく。水分のせい? それともアナログ値だから電源電圧とか配線とかに影響される? 直入力じゃダメで、補償回路とか入れなきゃダメ? うわー厄介すぎる!

いくつかの圧力センサを購入して実験してみた。

…と、アナログセンサを前に6年間も途方に暮れた末、いいものを見つけた。AdafruitMPRLS圧力センサボードだ。

Adafruitってのは、乱暴に説明するなら、アメリカの秋月電子みたいな会社。ここのMPRLSというボードは、圧力センサの値をデジタルで吐き出してくれるとのこと。早速購入して実験してみた。

MPRLSで実験。

いいじゃんいいじゃん。
チューブを繋いで口に加え、吹いたり吸ったりしたときのデータをプロットしてみたら、レスポンスもダイナミクスも十分。何これ、6年前にあれば、こんなに試行錯誤しなくて済んだんですけど。

MPRLSの実験グラフ。レスポンスもいい感じ。

何よりうれしいのが、Adafruitのボードは、Arduino IDE用のサンプルプログラムが用意されているところ。ワイヤーを4本接続してサンプルプログラムを開いたら、ソク実験できてしまった。あの、アナログセンサのデータシートを読みながら試行錯誤していた日々は何だったんだ。

ちなみに、センサに繋ぐ内径2mmのシリコーンチューブとチューブコネクタは、モノタロウから購入。Adafruitと秋月とモノタロウ(とアマゾン)のおかげで俺はモノを作れるのだよなあ

こういうパーツを探すときにモノタロウはめっちゃ役立つ。


ピッチベンド

こちらは、ブレスとは別の意味で悩みのタネ。どんな方式だろうが実装するのは容易いけれど、「演奏しながら操作」することを考えると、どの方式も難しそうに思える。

リコーダーのような両手持ちスタイルだから難しい。

なにせMelodicaは両手持ち。指のポジションも決まっていないし、下手したら左手で黒鍵を押さえる場合だってある。決まった場所に設置するベンドホイールやジョイスティック、リボンコントローラーあたりは全部ダメ。

他にも色々と(机上で)検討はした。
アフタータッチは機構が複雑になるからダメ。
たしか何かのウィンドシンセでは、口で「噛む」スイッチがあったと思うけど、使いやすく作れそうには到底思えない。

で、結論から云ってしまうと、ベンドはジャイロセンサで行うことにした。上に向ければベンドアップ/下に向ければベンドダウン。ただし、普通に吹いているときにベンドしたら嫌なので、吸ったときだけベンドが効くようにする。左右に揺らせばモジュレーションを効かせてもいいな。どうだろ、これ(上手く作れたら、特許取れそう)。

秋月のカタログを見ながら選定。

というわけで、秋月電子で部品を調達して、さっそく実験してみた。結果は良好。加速度3軸+ジャイロ3軸+磁気コンパス3軸の9軸センサモジュールを使ったんだけど、磁気コンパスは要らなかったかな。まあ値を使わなきゃいいだけなんだけど。

ちなみに、このモジュールはジャンパをはんだ付けすることで、電源や信号レベルを色々選べるようになっている。

どれかを選ばないと動作しないので注意。

今回はマイコン(次項で説明)の都合で、3.3V電源/3.3Vレベルなので、JP7をショートさせておいた。

はんだでJP7をショートさせる。


マイコン

そして、これらのセンサから値を取って、MIDI信号に変換出力するマイコンは、Teensy 4.1を使うことにした。

Teensyが、USB MIDIを使った「MIDIデバイス」を作りやすいということは前回も書いたけれど、その中でもTeensy 4.1は高機能で、I/Oが非常に充実しているのだ。デジタル入力はなんと55本。鍵盤は25個だから、余裕でこなせるスペックだ。

仕様的には、スイッチのデジタル入力が25本+センサモジュールとの通信信号が2本あればいいので、以前使ったTeensy 3.2でも十分なんだけど、Teensy 3.2は一部の信号線がピンには出ておらず、マイコン基板に直接ワイヤーをはんだ付けしなければならないので止めておいた。ライブで使うことを考えると、間違いなくトラブルの元になるからだ。接続は、できるだけリジッドにしておきたい。

キーマトリクス回路を使えば、25本のキー入力を10本の信号線で読み取れるのだけれど、その代わりにダイオードを25個も付けなければならないので、避けたのであった。

Teensy 4.1は、SDカードやEthernetまで付いている。たぶん使わないけど。
Teensy 3.2は、GPIO24~33の信号を基板からワイヤーで取り出さなければならない。

Teensy 4.1は最近の半導体不足を影響を受けて品薄が続いているようだけれど、とりあえずAdafruitの通販サイトから2個確保した。今は国内外どこの通販サイトでも品切れになってるようだから、まあ危ないところではあったな。


次回は基板作成

部品の選定も済んだので、次回は回路と基板を作成する。
今回は「KiCad」というフリーソフトを使うのだが、無料とは思えないほど使いやすく高機能で、ホントにすごい時代になったもんだと思うことしきり。ありがたやありがたや…。

(次回に続く)

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