へその緒電話
トイレの水だまりの中から
クラリネットの音色が響いてくる
それがどんな震えを描くのかも
よくわからないまま
概念としての音色を聴き続けている
隣の部屋の床に置かれた
固定電話の線は
わたしのへその緒と繋がっていて
受話器を上げれば
いつでも腹の声が聞ける
そうしてあらゆる音が
たぶんわたし以外の誰も
観測することのできない音が
この脳に電気信号として
自己主張を繰り返していた
ここから先は
0字
¥ 100
いつもサポートありがとうございます。 『この世界の余白』としての生をまっとうするための資金にさせていただきます。