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告白

 折り目ただしくおとずれる生理にあこがれて、ほぼ休みなく失い続けた三月分の血液を、埋め合わせる術など私は持っていないのです。
 貧血には鉄分の補給ということで、ベランダの欄干や公園の鉄棒にこっそり舌を這わせてはみたものの(ドアノブ少女になるほどの勇気はなくて)、視界を蝕む影の気配は消えない。

 ところでこの場合、毎度きちんと排卵が行われているのでしょうか。もしや、寝かしつけるべき卵子も見あたらないのに、せっせと子宮のベッドを拵えては、形骸的な生理を繰り返しているのでは? たしかに、太腿のあいだから生まれ落ちる経血は、お椀に溶いた生卵のようにどろりとしてはいますけれど、それとこれとは別の話、さあ、血液の浪費はおやめなさい。

 私の卵子など、ティッシュの中で息絶える精子と同格、いやむしろそれ以下の存在なのです。こんな私の体内で、卵子は何を夢見ているのでしょう。その夢をひねり潰してまで、自分の夢を追い求めている私は、あ、

 ごめんなさい。
 ごめんなさい。
 ごめんなさい。
 ごめんなさい。 

「将来、何人の子どもが欲しい?」

 そんなこと私に聞かないで下さい。 
 嘘をつけば自分の首を絞めることになります、かといって、本当のことをいえばその場の空気が凍ってしまう。

 人間には人間の、男には男の、女には女の義務があるのでしょうか。義務なんて本当に必要ですか。義務がなくなれば、性欲がなくなれば、本当に人間は滅んでしまうのですか。

 そんなものに支えられた繁殖に希望はありますか?

 産みたくない気持ちはわがままですか。これがわがままだという人は、義務感から無理に子どもを産んだのですか。本当は産みたくなかったのですか。

 妊娠に対する恐怖感が、性行為に対する嫌悪感に変わり、やがて男性を拒絶する今に至ります。しかし、決してそれだけがすべてではありません。
 拒絶といっても、恋愛感情はあるので、私の言動はとてもちぐはぐになってしまいます。私は自分の身体を醜いものだと認識しています。他にもたくさん、隠しごとを抱えています。

 きっと、関わった相手に面倒な思いをさせてしまったり、迷惑をかけてしまうことでしょう。それでも、あなたと関わってみたいから、迷惑を承知で近づいてみることにします。

 どうか、私のことを恨まないでください。

(20113/07/15)

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