見出し画像

温泉とストリップと城だけは立派な町(愛媛・道後の旅 2日目)

夫とふたりで温泉とストリップと城を巡る道後温泉の旅、2日目の記録。
坊ちゃん口調で書くのが楽しくてハマりそう。

夏目漱石『坊ちゃん』

やっとのことで道後温泉

この日は朝風呂から始まった。
前日の夜に温泉に入りそびれたからである。
ついでに宿についていたシャワールームが、男女兼用でかんたんに覗けてしまう使用だったため、シャワーも浴びていなかった。

明け方の、朝陽に染まる道後温泉・本館は佇まいに風情があって非常によろしかった。夜は入場制限があったらしいが、朝は待ち時間なく中に通してもらえた。

行くまで知らなかったのだが、本館の方は大改装中で、休憩室などの施設は利用不可、温泉も『神の湯』のみ入れるという状態だった。

建物を見物して回るのを楽しみにしていたので結構ショックだった。そうは言っても無理なものは無理なのだから、脱衣場に着くまでのわずかな距離の内装を楽しもう、と気を持ち直した。

しかし、案内してくれた老婆が「旦那様は武芸か何かやっておられるのですか」などと話しかけてくるので気が散る。夫は剣道をしていたわたしの友人から譲り受けた袴をファッションで履いており、よくそんなことを聞かれるのだ。

気づいたら下り階段の前に着いていた。
「足元にお気を付けてお降りください」
という老婆に背中ではいはい答えながら、せめて階段だけでも記憶に焼き付けようと目を凝らした。
(これは後日談だが、おかげで今のわたしの記憶にある道後温泉の印象のほとんどを件の階段が占めてしまっている。冗談である)

肝心の温泉は熱かった。一時間くらいしか入れないというから、急いで身体を洗って湯に浸かったのに、十分も経たないうちに上がりたくなった。
さすがに名残惜しいので、半身浴に切り替えて粘っていたら、新しく入ってきた婆さんが湯船の真ん中に置かれた爺さんの像に向かって拝んだ後、その下に開けられた湯口から直接お湯を浴び始めた。

なんだ? そうすれば傷や病にでも効くのか?

わたしも真似したくなったけど、見るからに熱そうだったのでやめておいた。そのうち本当に我慢できなくなって風呂から上がった。

熱いけど、いい湯だった。
あと、トイレが宇宙カプセルみたいで建物に似合わず近未来感があった。

天邪鬼ではない

宿に戻ってひと眠りした後、夫と合流して街歩きをした。

夫はじゃこ天の店でじゃこカツなるものを食べた。
じゃこ天のカツである。

わたしも対抗して太刀魚巻なるものを注文した。
太刀魚を竹に巻き付けて焼いた鬼畜な食べものである。
にんにく塩だれや七味醤油などのタレがかかっている。

どの味にしようか迷っていたら、夫が、

「俺は七味醤油がいいな。でも、こう言ったら、まちまち天邪鬼だから違うやつにしそうだけど」

さらっとそんなことを述べた。

(なぜわらわが天邪鬼であることを知っておるのだ)

訝いながら、「そんなことはない」と、結局、七味醤油を頼むことにした。
天邪鬼だから選ばないだろう、と言われたら逆に選んでやりたくなるのが性である。

味はまあまあだった。
じゃこ天カツの方が断然うまかったので内心で舌打ちした。

うつくしいタオル屋

腹ごしらえが済んだところで、松山城まで歩いてみようということになった。

歩き始めてすぐ、『伊織』というタオルと工芸雑貨のお店に引き寄せられて中に入ってしまった。

広くて余白の多い空間に、ありとあらゆる種類のタオルの他、他ではあまり見かけないような種類のハンドクリームやアロマスプレーなど『くらし』にまつわるグッズが並んでいる。

中でも心を惹かれたのは、糸を織り込んで立体にしたようなアクセサリー。造形がうつくしくて、ひとつひとつ手に取って眺め回したくなる。
骨組みにワイヤーを使っているわけではなさそうだし、どうやって作っているのだろう。

今回の旅の中で今日が唯一、一日自由にできる日なのだから、土産屋なぞに足止めを食らっている場合ではない、と思いながら、視線を移すたびに気になる物が目に飛び込んできてなかなか店を出る気になれない。

そうこうするうちに、「外で待ってる」と言っていた夫も中に入ってきて、同じくあれこれ眺めて楽しみ始めた様子。

しめしめ、こやつもこの店に魅了されたか。ならばわらわも存分に時間をかけて物色するとしよう。

というわけで、思う存分、そこにある美に触れさせてもらった。

たいていのことは忘れた。

入り口のところにディスプレイされている夢カワイイ配色のタオルが気になって近づいたら、なんと竹久夢二コラボモデルだった。

母が竹久夢二を好きなのを思い出して、一枚、プレゼントすることにした。いつも貢がれてばかりなのでたまには土産でも買ってやろう。
待てよ、ここで母の分だけ渡したら絶対に父が拗ねる。仕方がないから父の分も買うか。

そういうわけで、母と父の分を一枚ずつ見繕った。

家用のバスタオルも欲しくなったけど、このままではここで一日を終えてしまうと恐ろしくなって、慌ててレジを通して店を出た。

長くなってしまったの今回はここまで。
もっとさらっとまとめようと思っていたのに、つい細かく書きすぎてしまった。これでは到底、最終日まで書ききれない。あきらめた。

いつもサポートありがとうございます。 『この世界の余白』としての生をまっとうするための資金にさせていただきます。