ドイツ人は肉眼でQRコードが読める【ドイツ紀行 Part 1】

僕は今ドイツのデュッセルドルフ国際空港で飛行機を待ちながらこれを書いている。ロンドンからデュッセルドルフに来たのはつい2日前のことだ。準修士号としてのロンドンでの在学期間が6月半ばに終了し、修士課程が始まる9月までの約3ヶ月間が完全にフリーだったため、一度日本に戻ることにしたのだ。要は夏休みの帰省である。会社員時代は夏休みなど名ばかりで、無職時代は年がら年中休みであるため、夏休みなどというものは大学卒業以来存在しないようなものだった。少なくとも7年ぶりくらいの正当な夏休みということになる。この貴重な機会を有効活用すべくしてネットサーフィンに勤しんだ結果、僕は帰国ついでにデュッセルドルフとモンハイムを巡る2泊3日の旅行を計画した。このドイツ紀行シリーズは、短いながら充実した旅行の記憶をできるだけ新しいうちに残しておこうと思い、空港で書き始めた個人的な記録である。

Part 1では大したことのない小話をするつもりだ。まずはドイツの電車事情である。なんと改札がひとつもないのだ。キセル乗車し放題なわけだが、当然見回りの駅員にバレれば罰金が生じるらしい。正直で紳士的で和を以て貴しとなすが座右の銘であるところの僕は当然チケットを購入しようと思ったわけだが、このチケットの制度がまるでよくわからない。少なくとも空港にあった券売機は「どこ駅からどこ駅へ」みたいな選び方ではなかった。もうどうしようもないくらいなにもわからなかった。初見殺しである。最終的に僕はDBというドイツの国鉄公式のアプリでなんかいい感じに広めのエリアで使える1日乗り放題みたいなチケットを購入して暴力的に解決した。ドイツへ旅行に行こうと思ってうっかりこの投稿に辿り着いてしまった特殊な検索能力をお持ちの方は直ちに別の信頼できるサイトへ移動することをオススメします。

この1日乗り放題チケット、iPhoneのアプリでQRコードが表示され、電車も路面電車もバスも乗れてしまうという優れものだ。電車と路面電車に関しては、駅員に見せろと言われるまで見せる必要はないようだが、バスは毎回乗るときにQRコードを見せる必要がある。ここで僕はとても不思議に思ったのだ。バスの運転手がQRコードを肉眼で確認していることを。

今回のドイツ旅行における主な交通手段はバスだった。ロンドンもそうだが、長距離移動は電車でちょっとした移動はバスあるいはトラム、というのがヨーロッパの主流なのだろうか。おそらく10回以上はバスを利用したわけだが、毎回乗車の際に運転手さんにQRコードを見せた。彼らは少しだけ身を乗り出してQRコードを確認して、よし乗れ、といわんばかりのジェスチャーをした。ジェスチャーが絵になる。しかし問題はそこではなく、彼らが機械でQRコードを読まない点である。一般的な、あるいは技術的なQRコードの理想像は、機械が一瞬にして複雑な情報を読み込むことで人間よりも早く正確に情報を処理することではないかと思うが、ドイツのバスにはQRコードを読む機械のようなものはついていなかった。運転手が一瞥するだけである。場合によっては10人前後の乗客が列を成して乗車口に向かうわけだが、一切の迷いなく次々とQRコードを捌いていく運転手。あの鮮やかさは明らかにQRコードを「読んで」いる。まさかドイツ人は肉眼でQRコードが読めるのか。

改札がないという事実に驚いたしチケットのシステムがまるで意味不明だが、乗り放題チケットを入手してからはむしろ便利なのではないかとすら思うようになった。たった2日間しか滞在していないが。一部の電車では車内に券売機があるため、場合によっては乗車してから乗車券を購入することもできる。日本のように残高不足で改札に阻まれ後ろにいた人に舌打ちされる、といったことは起きない。ちなみにロンドンは改札がある駅とない駅が混在しているから腹立たしい。日本のように改札をできるだけ徹底するか、ドイツのように一切改札を設けないのか、どっちかにしてほしいものだ。

搭乗が始まる。次は機内で Part 2 を書こうかな。

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