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簿記3級ネット試験リベンジ当日。いよいよ本番。

外へ出ると雨は止んでいた
ただ風は吹き荒れている。


前回とは違う会場
駅前なので近いから助かる。

ビルの指定会まで上がって
受付で要件を伝える前に
相手が俺のことを察して声をかけてくれる。

人の良さそうなおじさんだったので少し緊張がほぐれた。


前回はヘッドフォンの貸し出しだったが今回は耳栓だった

耳栓は苦手なので使うつもりはない。


「手荷物は足元のカゴの中へ」と伝えられ

上着を脱いでくれとも言われず、
スマホはマナーモードにしとけばポケットに入れていても問題ないみたいで
前回との違いに少し面食らう

こっちのセキュリティは甘々だな

俺がカンニングとかしたらどうするの?


いや、ネット試験はカンニングなんてなんの意味もないことがわかっているんだろうな

目の前のことに集中するだけで精一杯になるのだから。

会場部屋はネカフェ風
ではなく、
清潔感漂うオフィスルームといった感じだった。

全てが前回のものとは対象的で
広々空間。

コの字型に席が配置され
10人ぐらいは座れそうだ。

パソコン機器も真新しさがある


前回の会場がク○すぎたのかな?

指示された席に座る。
先客は左手側に2人

なるべく音を立てないように手元の準備を始める。

キーボードの感触を確かめと
ボタンの押し心地が深いのがわかった

やべえ、このタイプ初めてだ。

高下駄を履いているような不安定さ。
不安がよぎる。

でもやるしかない。


画面に映しだされた個人情報の記入や注意書きなどの際に
ショートカットキーのやり方を確認する。

[control] + ↓ でスクロールすることがわかった

[Tab] で次の欄を選択
+ [shift] で戻る

よし!
これさえわかればなんとかなる。

一呼吸置いて [開始] をクリックした。

画面いっぱいに飛び込んでくる問題文の羅列。
二度目ともなればこの光景は想定できていた

慎重かつ早く本文を目で追う。

勘定科目を選択して [Tab] で隣の金額欄へ。

手が震える、
びくびくして手元が定まらない。
でも数字列の指の使い方は染み付いているから大丈夫なんとかなる。

下の欄への移動はてっきり[Enter]だと思っていた

しかし下へ移動はしていない様子。
[           |] の縦棒の点滅が消えただけだ

しゃーない、
結局マウスを使うしかないか。


問題文を読んでいる間も指はつねにセンターポジションをキープ。

指を動かしているわけでもないのに小刻みにカタカタと音が鳴る。

緊張と興奮と焦りから指がじっとしてくれない…。

それでも大一問の仕訳問題は順調に解くことができた。

次は苦手意識のある穴埋め問題。

繰越利益剰余金
利益準備金
損益

の決算整理。

午前中に何度も復習してきたのが的中している。

順調に問題文の時系列を記入していく。
半分ぐらい埋めたところでその先がわからなくなった。

あれだけくり返し復習したのに
金額の桁の違いに頭が混乱しているのかもしれない。

次の精算表の問題は作成で時間かかるので
ここは後まわしにしてすぐに取りかかることにした。


約3ページ分に亘る精算表。

相変わらず全体像がつかめない。

決算整理前の勘定と
決算整理後の勘定の配置が離れているから
入力した金額を忘れてしまう。

記憶弱体化状態なので何度かスクロールで戻って確認する羽目になった。
余計な時間ロスだ。

(コピペはネット情報で使えないとのこと)

問題文からの修正記入欄全て埋まった!
合計を出すのに電卓操作がおぼつかなかったけど、
あとは加算加減のあるものは合わせていって損益と貸借に振り分けるだけだ。

あれ?
売掛金の貸倒額違うくね?
現金過不足で引いた額で出してないよな?

やり直しが一番エネルギーを消耗する

気が狂いそうになりながらもなんとか精算表を埋め終える。

貸借対照表の合計額が合わなかったのはしょうがない
後はさっきの穴埋め問題の続きだけだ。

画面中央真下の残り時間4分を切っていた。
焦れば焦るほど問題文は理解できない。
こういう時こそ慎重にとじっくり目で追う。

残りはこれだけという微かな余裕が出てきたのか
問題文の内容が頭に入ってきた。

やることがわかればすぐに手を動かす!

2:32 …

1:42 …

残すは損益の空欄だけ
貸方の合計を出せればあとは流れで借方の空欄も埋まる。

残り1分弱。

切羽詰まる中
電卓を一心不乱に叩く

ひとつの間違いが命とりなので
正確かつ早急に。

心臓がバクバク音を立て始める。
息苦しい…
最後の最後までこんな状況だとは…

残り時間が10秒台へとさしかかる

急げ急げと死に物狂いで電卓をはじく。

8…      7…     6…

ぶはぁぁあ"あ"~~!!
なんとか全部埋まったァ、

──『試験終了』


ギリギリ間に合った……

とてもじゃないけど見返す余裕すらなかった。

魂が抜けたみたいに体のダルさを感じる

そして一呼吸つける間もなく
結果が映し出される。

結果は

合格。

鮮やかな緑色の文字が資格取得の通知を示していた。

そのまま点数に目を移すと70点。

ギリギリの超紙一重…

ライン上の点数だ。

嬉しいよりもショックが勝っていた。

あれだけ繰り返し頑張ってももギリギリだった。

完璧な敗北…

そんな気分を察してくれるわけでもなく
終わればすぐに退出するといのが会場の暗黙のルール。

自我を保ちながら手荷物をまとめて部屋を出て受付へと赴く。

人の良さそうなおじさんの優しいオーラを感じるとる余裕すらなく、結果が印刷されるコピー用紙が手渡されるのをただ待つ。

「お疲れ様でした」

てっきりその場で証明書をもらえるのかと思っていたが、そうではないらしい。
おじさんの表情から「お疲れ様でした」のその先の言葉は続かないと見て取れた。

誰に向けて言っているのかわからないお礼を
一応おじさんに向けて言って
俺は会場を後にする。

コピー用紙にはQRコードが記載されていた

どうやらそれにアクセスして手続きをするようだ。

俺は脱け殻となった体を引きづりつつ重たい足取りでゆっくりと家路に向かって歩き始めた。





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