桜見上げる

82円切手5枚と替えられて年賀ハガキは役目を終えぬ

ショートメールを5回に分けて送りおり終わらない手紙をきみに書きたし

ほんとうはよく知らぬひと十一桁の数字かすかに我らをつなぐ

マッチ棒のように痩せたと聞きいしが頼もしきまま近づいてくる

モダン焼に火が通りゆくそのあいだ前と変わらぬ腕を見ている

白い髪もいつしか黒く戻りおり今しばらくはそのままであれ

すでに我を必要とせぬ青年でありしと思う桜見上げる


「短歌人」2017年6月号掲載作品




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