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櫻坂46、完全開花。新たな可能性・3期生と共に、晴れやかなる次の未来へ。

【11/25(土) 櫻坂46 @ ZOZOマリンスタジアム】

櫻坂46としてのデビュー3周年の節目に合わせて開催された「3rd YEAR ANNIVERSARY LIVE」。今回の舞台は、冬のZOZOマリンスタジアム。グループにとって、初の単独の野外スタジアム公演となった。

欅坂46からの改名というあまりにも大きな変化を経て、この3年間、新しいアイデンティティーを模索しながら懸命に走り続けてきた櫻坂46。彼女たちは、次々とシングルをリリースしながら、これからグループが進む大きな方向性を提示し、同時に、多彩な楽曲を通して自分たちが秘める重層的な可能性を示唆してきた。また、国外のステージを含めた数々のライブの経験を積み重ねながら、ファンと共に、これから進む方向性、言い換えれば、自分たちが上る新しい坂道についての確信を深め続けてきた。そうした3年の日々の一つの集大成となった今回の公演は、結果として、櫻坂46の真髄がいつも以上に色濃く打ち出されたライブになっていたように思う。


その真髄とは何か。今から思えば、その核心となるテーマは、櫻坂46としてのデビュー曲"Nobody's fault"の中に込められていたのだと、今回のライブを観て強く感じた。

どんなに深い森も一本の木が
集まってできているんだ
風が吹けばわかるだろう  Yeah
光と影は何度も  重なり合い
大きな森になるのさ
自分の(自分の)
せいにもするな  Wow

櫻坂46 "Nobody's fault"

欅坂46時代から通じるように、櫻坂46の楽曲のダンスパフォーマンスは、「1対N」の構図、つまり、「一人のセンター対その他のメンバー」の構図の上に成り立つものが多い。例えば、楽曲のテイストを問わず、"Dead end"では森田ひかるが、"なぜ 恋をして来なかったんだろう?"では藤吉夏鈴が、"桜月"では守屋麗奈が、他の全員のメンバーと対を成すパフォーマンスを見せる。

欅坂46の時は、ほとんどの象徴的な楽曲において、センター、つまり、「1対N」の構図の「1」を担っていたのが平手友梨奈で、その多くの場合、平手のパフォーマンスは、絶対的な孤独、誰にも理解されない自分だけの感情を表現したものだった。

しかし、櫻坂46の「1対N」のダンスパフォーマンスは、必ずしも全てが孤独の表現ではない。そして何より、特定の一人に「1」の役割を背負わせることはせず、次々とセンターをバトンタッチしながら、ライブ全体を通して多彩な感情を紡ぎ、最後には、メンバー全員、ファン全員と共有していく。もちろん、櫻坂46のディスコグラフィーの中には、欅坂46時代の表現の延長線上に位置付けられるような、孤独や胸の内の切実な感傷を伝える楽曲も多いが、櫻坂46のライブでは、それぞれのダンスパフォーマンスを通して、そうした感情が自分以外の他者と共有され、最後には晴れやかな余韻が胸に残る。

今回のライブのオープニングナンバー"Buddies"、また、最後に披露された"櫻坂の詩"には、櫻坂46として歩みを進めていく上での基本姿勢が刻まれている。

Yo!  ここから  もう一度始めよう
Yo!  自由だ  何も持ってないから
Yo!  僕らは何処へだって行けるさ
Yo!  絶望は涙と一緒に捨てよう
Yo!  君をずっと待ってたんだ
Yo!  僕をずっと待っていたか?
未来へ  未来へ  未来へ

櫻坂46 "Buddies"

なぜ人は桜をこんなに愛するのか
胸が震える  懐かしさに
一つ一つの花びらが肩を組むように
桜は満開になるのさ

櫻坂46 "櫻坂の詩"

一人ではなく、全員で。それはもしかしたら、メンバーやチームの願いや祈りのようなものなのかもしれない。欅坂46との対比で語ることには、もはや意味はないのかもしれないけれど、今の櫻坂46のライブには、全編にわたって、温かな一体感、そして、ピースフルでポジティブなバイブスが貫かれているように思う。

昨年の夏の1stアルバム『As you know?』のジャケットを撮影する際、それまで一貫して櫻坂46の作品のアートディレクションを担当し続けてきたOSRIN(PERIMETRON)は、その時に初めてメンバーに「笑ってくれ」と伝えたという。それはつまり、櫻坂46は、笑顔がとてもよく似合うグループになったということであり、とても的確にして感動的なディレクションだと感じたことを今でもよく覚えている。

あれから1年以上が経ち、今の彼女たちは、あの頃よりもさらにポジティブなオーラを堂々と放つようになったし、そうした燦々としたムードに満ちた今の櫻坂46のライブには、同時に、この3年間を通して育んできた輝かしい自信と確信が滲んでいるように感じられる。総論にはなるが、そうした眩いパワーに何度も心を動かされるような素晴らしいライブだった。


そして今回のライブについて特筆すべきは、今年加入した11人の3期生の成長だ。1期生・2期生と比べると出番は短かったが、中盤の3期生パート("夏の近道"→"Anthem time")では、オーディション合格から約1年にわたる努力の日々の全てを美しく結実させたような渾身のパフォーマンスを高らかに見せつけてくれた。11月から約1ヶ月にわたり開催されていた「新参者 Live at THEATER MILANO-Za」で、3期生のみの公演を短期間で重ねてきたことの影響も大きかったはずで、瑞々しいエネルギーを放つ 11人の堂々たる姿がとても眩しかった。

何より、終盤に披露された3期生楽曲"静寂の暴力"が、本当に圧巻だった。凛と澄み切った空気、張り詰めた静寂の中、センターステージに山下瞳月が現れ、他の3期生が待つメインステージへとゆっくりと歩き出す。歓声も拍手も起きない沈黙の中で曲が始まり、11人がそれぞれの感性を宿したエモーショナルなダンスを通して、誰しもが胸に抱く孤独の感情に鮮やかな輪郭を与えていく。ブレイクに入り、そのまま長い沈黙へ。微かに聴こえるのは、山下の吐息のみ。息を整え、胸の内の感情を極限まで洗練させ、《「喋りたい願望を捨てて/沈黙を愛せるか」》と力強く語り放つ。楽曲のクライマックスへ向けて、呼吸を合わせ、歌声とダンスを重ね合わせていく11人。そして最後には、それぞれの孤独を通してその先の他者と向き合おうとする深い覚悟が、広大な会場に鮮烈な響きをもって轟く。ラストは、《「どうしても考えてしまう」/「私から何を奪うつもり?/思考を停止させる/静寂は暴力だ」》という切実な独白で幕締め。観客を楽曲の世界に引き込むどころか、口をつぐませてしまうような、本当に凄まじいパフォーマンスだった。3期生パートのハイライトを超えて、この日の公演全体を象徴する屈指のハイライトとなった名演だった。


今回の公演のアンコールパートでは、1期生・土生瑞穂の卒業セレモニーが行われた。8年以上にわたってグループの礎を築き、また、どんな時も太陽のように温かいオーラでグループの精神的支柱の役割を果たし続けてきた土生が卒業することは、残されるメンバーにとってはあまりにも大きな出来事となった。ただ、土生は、この数年を通して、後輩たちがたくさんの頼もしい姿を見せてくれたことを振り返りながら、「このメンバーだったら、未来の櫻坂46をつくっていける。」と、穏やかながらも力強い確信が滲む口調で語っていた。新しい出会いと別れ。その繰り返しの中で、櫻坂46の真髄は、確実に新しい世代へと継承され、ここから、今はまだ想像もできないような新しい可能性が咲き誇っていく。そう強く思わせてくれるような3周年ライブだった。ここから、櫻坂46の4年目の物語が始まる。



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