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25年の歩み、その先の未来を照らす希望の光。ストレイテナー、日本武道館公演を振り返る。

【10/15(日) ストレイテナー @ 日本武道館】

ストレイテナーが打ち鳴らすロックに触れるたびに、いつも僕は、その音像の中に果てしないロマンを感じる。鮮烈な輝きを放つバンドサウンド。美しく清廉な歌のメロディ。そして、透徹な願いや祈り、深い覚悟を宿した切実な言葉たち。それら全てが渾然一体となった時に心の中に立ち上がる壮大な景色に、いつも言葉を失くしてしまうほどに惹かれ込んでしまう。

振り返れば、2ndフルアルバム『TITLE』リリース時のインタビューにおいて、ホリエアツシは次のように語っていた。

ロックにメッセージを求める人は多いし、だからこそ受け入れられ辛かった。それでも自分たちは「ロックはロマンでありたい」っていう理想を音にするしかなかった。

『BUZZ』2005年1月号

ミュージシャンが自らの生き様を音楽に刻み付けること。苦悩や葛藤を音楽を介して昇華すること。または、目の前の現実を変えるために音楽を通して声を上げること。長きにわたって、ロックはそうしたメッセージと切っても切り離せない関係にあり、そして多くの場合、メジャーシーンで活動するアーティストに求められるのは、その分かりやすいメッセージであった。

しかし、ストレイテナーは、「ロックはロマンでありたい」という信念を決して曲げることなく、彼ら自身が理想とするロック像を誠実に追求し続けてきた。2人編成から3人編成、そして現在の4人編成へと形を変えながら、ロックだけが映し出すことができる悠久の景色をストイックに突き詰め続けてきた。そうした長年にわたるメジャーシーンにおける歩みは、まさに孤高な闘争であり、もし彼らがロックの可能性を果敢に切り開いてくれていなかったら、日本のロックシーンは、今とは全く違うものになっていたかもしれないとさえ思う。



そして迎えた、結成25周年&メジャーデビュー20周年を記念した今回の日本武道館公演。この日、ストレイテナーの4人は、約3時間を通して、長い年月をかけて一つずつ懸命に積み重ね、磨き込み続けてきた至高のロックナンバー30曲を、超満員の会場で高らかに轟かせてみせた。ストレイテナーの孤高なる歩みを、あの場に集まった全員で讃え、祝福するような、本当に感動的なライブだった。

多くのアニバーサリーライブは、その性質上、どうしても懐古的なムードになりがちだが、今回のライブにおいては、披露された全30曲の内、2人編成時代&3人編成時代の曲は6曲のみ("泳ぐ鳥"、"Melodic Storm"、"REMINDER"、"ROCKSTEADY"、"MARCH"、"TRAVELING GARGOYLE"、)で、大半を占めていたのが2008年以降にリリースされた4人編成時代の曲であった。現行の4人編成になって既に15年が経つので、もちろん久々に披露される懐かしいナンバーもいくつかあったが、総じて、ストレイテナーの最新型のロックアクトを堂々と見せつけるような圧巻の約3時間だった。

オープニングナンバーは、4人編成になって初めて制作されたアルバムの収録曲"ネクサス"。グッとテンポを落としたホリエの弾き語りに、次第に、ナカヤマシンペイ、日向秀和、大山純の3人の音が重なっていく特別なアレンジが施されていて、2番からオリジナルのテンポへと加速する。そして、《僕らはたまたま同じ船に/乗り合わせただけの赤の他人じゃないのさ/わかっていたんだ》という言葉と共に2番のサビに突入した瞬間、巨大なスクリーンに「STRAIGHTENER」「25TH ANNIVERSARY ROCK BAND」という文字が大きく映し出される。メンバー同士の、また、メンバーとリスナーの絆の深さを改めて伝えるような感動的なオープニングに思わず息を呑んだ。

次々と間髪入れずに放たれていく歴代のロックナンバーたち。ハイライトは数え切れないほどあるが、特に、"From Noon Till Dawn"→"シンデレラソング"の2連打には、彼らのライブバンドとしての熱き気概が滲んでいて本当に圧倒された。また、その後の"OWL"(10月リリースのベストアルバムの収録曲を決めるファン投票で「87位」だったという)→"DONKEY BOOGIE DODO"という展開には、緻密さと奥行き、スリリングさを増した4人編成ならではのバンドアンサンブルの旨味が凝縮されていて、彼らが長い歩みの中で重ねてきた変化・進化を再確認した。


終盤のMCで、ホリエは、誰よりも自分自身が、この4人の、ストレイテナーというバンドのファンである自信があると伝えた。そして続けて、「こんなバンドを好きになってくれたあなたを誇りに思うし、それが俺らの希望です。」と力強く告げた。その後に披露された最新曲"Silver Lining"は、まさに、彼らが長年にわたり追求し続けてきた輝かしいロマンに満ちた渾身のロックナンバーで、その爆発力と眩い輝きに強く心を震わせられた。ホリエは、この後も「マジで俺たちの希望だからね、みんなが。」と改めて語っていて、そのまっすぐな言葉は、ロックのロマンを追い求めるストレイテナーの孤高な歩みは、決して孤独なものではなかったということを物語っているようだった。

「誰一人置いていきません。」「これからもストレイテナーについてこい!」というホリエの頼もしい言葉の後に披露された"ROCKSTEADY"で幕を閉じた本編。その後のアンコールでは、ライブ開幕時のSEとして使用される"STNR Rock and Roll"をバンド生演奏で披露するという嬉しいサプライズがあり、また、鳴り止まない拍手を受けて実現したダブルアンコールでは、最新のファン投票で1位に輝いた"彩雲"、そして、ライブ翌日の10月16日にメジャーデビュー20周年を迎えることを伝えつつ、メジャーデビュー曲"TRAVELING GARGOYLE"を披露してくれた。


ストレイテナーは、メジャーシーンで20年にわたり、「ロックはロマンでありたい」という信念を掲げ続け、そしてその信念は、いつしか彼らのロックに共感した数え切れないリスナーたちの想いと重なった。この日のライブで、たくさんのリスナーたちと熱き連帯を確かめ合った4人は、これからも、幾度とない変化・進化を重ねながら、ロックのロマンを追い求め続けていくのだと思う。今回のライブを観てそう深く確信できたことが何よりも嬉しかったし、ストレイテナーが愛され続ける日本のロックシーンに、僕は大きな希望を感じている。

日本武道館公演という大いなる通過点を経て、メジャーデビュー21年目の第一歩を踏み出し始めた4人。その歩みを、いつまでも追いかけ続けていきたい。




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