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あなたの「声」を聴かせてほしい。SixTONES、初の単独東京ドーム公演を振り返る。

【SixTONES/『慣声の法則 in DOME』】

2020年1月にデビューを果たしたSixTONESの6人は、そのすぐ直後から、コロナ禍という大きな困難と向き合うことになった。主戦場の一つであるライブ会場では観客の声出しが禁じられ、また、ツアーやライブの開催そのものが延期・中止となってしまうこともあった。しかし彼らは、そうした予期せぬ制約の中においても懸命にトライアルを重ねながら、ファンとの繋がりの輪を少しずつ拡大し続けてきた。

2023年に突入したタイミングで、日本のライブシーンがポスト・コロナ時代へ向けて大きく前進し、ついに、かつてのように様々なライブの場に観客の声が響き始めた。時を同じくして、SixTONESは、2023年1月に3枚目のアルバム『声』をリリースし、同時に同作を冠した全国ツアー「慣声の法則」をスタートさせる。2枚目のアルバム『CITY』の時とは異なり、今回のアルバム、およびツアーには明確なコンセプトはないが、そこに込められたメンバーたちの想いをあえて言葉にするのであれば、それは、「あなたの『声』を聴かせてほしい」という切実な願いだったのではないかと思う。歓声が禁じられていたコロナ禍においても、配信ライブなどをはじめとしたファンとのコミュニケーションは途絶えることなく続いていたが、やはり、直接的に声を重ね合わせることができるライブの時間・空間は何ものにも代えがたいものである。それは、彼ら6人だけではなくファンも含めた総意であり、今回のツアーで、ついにその想いが結実することになった。

ツアー初日にあたる1月4日の横浜アリーナ公演では、追加公演として、京セラドーム公演2日間、東京ドーム公演3日間の開催が発表された。ツアーの追加公演という名目ではあるが、それはまさしく、彼らにとって、そしてファンにとって長年の悲願であった初の単独ドームツアーである。今回は、約4ヶ月にわたるツアーのフィナーレを飾った東京ドーム公演3日目の模様を振り返っていく。


今回のライブは、ツアー本編と同じく、最新アルバム『声』のオープニングナンバー"Overture -VOICE-"から幕を開けたが、その後に続く実質的な1曲目として、ジュニア時代の楽曲"Amazing!!!!!!"が披露されたことは、追加公演ならではの大きなサプライズとなった。また、序盤のブロックには、同じくジュニア時代の楽曲"IN THE STORM"も盛り込まれていた。同曲は、各メンバーがクレーンに乗る形で披露されており、その演出は、デビュー発表時のライブで彼らが気球に乗って登場した時の再現であるという。SixTONESの長きにわたる歴史、その重みと深みが改めて伝わってくる。

もちろん、単なる懐古的なライブではない。6人のライブパフォーマンスは、ジュニア時代から今に至るまでの大きな成長と確かな成熟を証明するもので、これまで何度もステージに立ち続けてきたからこその軽やかな余裕や自由さ、遊び心が随所に感じられた。何より、そうしたクールな佇まいは、まるで王者の風格のようなオーラすら感じさせるもので、そうした6人の堂々たる姿に全編にわたって何度も強く心を動かされた。


今回のライブの各所で輝かしいハイライトを担っていたのは、最新作『声』に収められた楽曲たちであった。上述したように、『声』には前作『CITY』の時のような明確なコンセプトはなく、今回は、6人それぞれが好きな曲、そして、ライブで盛り上がりそうな曲を中心に収録曲を決めていったという。その最も象徴的な曲の一つが"Boom-Pow-Wow"であり、超満員の会場で《騒ぎな 声上げな》という6人の激しいアジテーションが響きわたる光景は本当に痛快だった。遡ると、『声』の制作期間中は、このアルバムが世に出てツアーを周る頃に観客の声出しが解禁されているかどうかはまだ分からなかったというが、結果的に時代の潮流と重なり、今回のツアーにおいて、6人と観客が共に声を上げ、歌い、騒ぎ、踊る、という音楽の原初的なコミュニケーションが見事に実現した。それはとても感動的なことであり、まさにこの曲は、2023年のライブシーン完全復活を象徴するパフォーマンスの一つになったと思う。


また、アルバム『声』の選曲においては、自分たちの得意・不得意を超えて、SixTONESのキャラクターとして求められているものがあったほうがいいという視点で選んだ曲もあるという。それは言い換えれば、アイドルのパプリックイメージを打破する曲であり、その最たる例が、ミクスチャーロック&ファンク路線を豪快に突き進んだ"人人人"である。多彩なディスコグラフィーを誇るSixTONESの楽曲の中でも突出して歌唱の難易度が高い楽曲ではあるが、6人は、そうは全く感じさせないほど優雅でしなやかな歌声でフロアを深く魅了していく。そのライブパフォーマンスはまさに、現状に甘んじることなく、常に野心的に自分たちの表現の拡張・深化を進めてきた彼らだからこそ辿り着つくことができた輝かしい現在地であり、その裏側にある努力はもはや想像を絶する。


ツアー追加公演に歩みを進めた時点で、既にSixTONESは『声』の先のフェーズへと突入していて、今回の東京ドーム公演では、その直前にリリースしたシングル曲"ABARERO"も披露された。まるで全てのパラメータを攻撃力に全振りしたかのようなハードなHIPHOPナンバーで、彼らのシングル表題曲史上最も攻めた楽曲であるといえる。壮絶な覚醒感。そして、思わず身震いしてしまうような並々ならぬ気迫。この超攻撃的な音楽性は、まさに本編の終盤の"WHIP THAT"→"Outrageous"の怒涛のコンボにも重なるものである。いわゆるアイドルの王道とは異なるオルタナティブな道を果敢に追求し続けてきたSixTONESにとって、この音楽性は変化球ではなく、むしろ王道であることを改めて感じさせる凄まじいライブパフォーマンスの連続だった。


そして、この日の東京ドーム公演について特筆すべきは、"マスカラ"で実現した常田大希(King Gnu/millennium parade)とのコラボレーションである。サプライズ登場によって爆発的な狂騒が巻き起こった会場を、熾烈なギターソロによってさらなる熱狂の彼方へと導いていく常田、そのロックスター然とした華々しい姿に痺れる。何より、それぞれアイドルシーンとロックシーンの新時代を牽引する6人+1人のエネルギーが一つにクロスした時に生まれる巨大なエネルギーは本当に壮絶だった。2023年のポップ・ミュージック史に深く刻まれるべきこのコラボレーションが、こうして映像作品として後世に残っていくことの意義はとても大きいと思う。"マスカラ"の後には、髙地優吾が運転するジープに一緒に乗り込み、常田のエレキギターのバッキングで、京本大我がKing Gnuの"Vinyl"を、そしてメンバー全員で"NEW ERA"を歌う一幕も。常田は、まるでSixTONESの7人目のメンバーであるかのように6人と同じバイブスを共有し合っていて、改めて、"マスカラ"によって両者がコラボした必然性を強く感じた。


アンコールでは、既に新たなライブアンセムと化している"PARTY PEOPLE"、そして、カラフルで眩い輝きを放つ鮮やかなポップチューン"Good Luck!"を披露。こうしたアイドルポップスの王道をゆくナンバーはSixTONESの楽曲の中では異端に映るが、そこには6人のエンターテイナーとしての確固たる矜持が貫かれていて、これもまた彼らの真髄の一つであることを再確認した。ジュニア時代から歌われ続けている楽曲"この星のHIKARI"では、田中樹が「お前も歌うんだ! せーの!」と叫びながらマイクをフロアに力強く託し、会場全体から壮大な大合唱が巻き起こる。その美しい声に耳を澄ませるメンバーたちの深い充実感に満ちた表情が印象的で、まさに今回のツアーにおける忘れがたいハイライトの一つになった。ラストに披露された"JAPONICA STYLE"を含め、とても素晴らしいツアーの幕締めだったと思う。


総じて、今回の東京ドーム公演の全編から感じたのは、6人が音楽にかける熱き情熱、そして、常に次のステージを見据えてパワフルに走り続ける彼らの挑戦者としての気概であった。田中樹は、特典のドキュメンタリー映像の中で、今回のドーム公演について、「ドーム辿り着いたぞって感じではなく、通過点として通らなきゃいけないところを通ることができる、だからみんなありがとうね、楽しみにしててね、って感じかな。」と語っていた。SixTONESにとって今回のドーム公演は一つの偉大な通過点に過ぎず、実際に、彼らの今年の夏以降のアクションは、今後のさらなる快進撃を予感させてくれるものばかりだった。例えば、シングル曲"こっから"では、"人人人"で切り開いたミクスチャーロック&ファンク路線をさらに果敢に突き進んでいて、また、初の各メンバーのソロ曲では、それぞれが自身の強みや表現スタイルをより強固なものとして確立してみせた。そうした新しい挑戦の数々は、きっと2024年に発売される4枚目のアルバム『VIBES』へと結実していくはず。今回のドーム公演の先に広がっていく景色がどのようなものになるのかは今はまだ全く想像もできないけれど、彼らならきっと、こっからさらに大きなブレイクスルーを実現してくれる気がする。

引き続き、全力で支持したい。



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