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もう一度、東京ドームを目指す。日向坂46、新たな約束を結んだKアリーナ横浜公演を振り返る。

【12/10(日) 日向坂46 @ Kアリーナ横浜】

8月から始まった全国ツアー「Happy Train Tour 2023」の追加公演2日目。2023年のラストライブとなったこの日の公演は、日向坂46が2024年以降に上るべき坂道を自分たち自身で指し示すような、グループにとって非常に重要な一夜となった。



アンコールのMCで、キャプテンの佐々木久美は、今回のツアーを走り続ける中で自分たちの心に迷いがあったことを正直に打ち明けた。夏には、1期生・影山優佳が、この日の前日にあたる追加公演1日目では、1期生・潮紗理菜がグループを卒業。また、4月リリースのシングル曲"One choice"でセンターを務めた2期生・丹生明里が、体調不良のため夏から始まった今回のツアーを休養。決して、万全の体制であったとはいえない中でツアーに臨んできた彼女たちだが、佐々木は、それでも、そうした日々の中には、迷いや苦しみだけではなく、何ものにも代えがたい楽しさもあったことを深い確信をもって振り返っていた。

実際にこの日のライブは、いつも以上にハッピーオーラ全開だった。ハッピーなフィーリング以外にも、喜怒哀楽や切なさをはじめとした様々な感情を表現する多彩な楽曲によってセットリストが構成されており、それぞれのエモーションを、まるでリミッターを外したかのように極致まで振り切って発露する全身全霊のパフォーマンスは、眩い気迫すら感じさせるものだった。また、これまでの公演と同じように、もしくはそれ以上に、今回の公演においては、ステージとフロアのコール&レスポンスがライブ全体の揺るぎない軸となっていて、双方の昂るエネルギーがぶつかり合いながら熱い一体感と高揚感が高まっていく展開に圧倒された。この楽しさ、熱さこそが、日向坂46のライブの真髄だ。今の彼女たちからは、一切の迷いも感じられない。


特筆すべきは、新しく加入した4期生の大きな成長である。彼女たちは、11月から約1ヶ月にわたり開催された「新参者 Live at THEATER MILANO-Za」で、4期生のみのステージ全10公演を短期間で積み重ねてきた。今回のライブは、その絶え間ない努力と試行錯誤の日々の成果を示す舞台であり、そして彼女たちは、会場や配信で見守るファンたち、また、先輩メンバーたちから寄せられる期待に見事に応えてみせた。"One choice"では、休養中の丹生に代わり4期生・正源司陽子がセンターを務め、影山のポジションには、同じく4期生の宮地すみれが立った。メンバーの卒業が相次ぐ中においても、新世代のメンバーたちが大きな成長を果たしていることを高らかに示したことは、今回の公演の大きな意義の一つだったように思う。

今回のツアーでは、4期生が、けやき坂46時代の楽曲"期待していない自分"を、毎回センターを交代しながら披露し続けてきた。そしてこの追加公演2日目では、ディスプレイに、「私たちにもこの曲に懸ける想いがある。」という言葉が映し出された後、1〜3期生が同曲を披露し、後半から4期生が合流するという感動的な展開が実現した。4期生は、今回のツアーを通して先輩たちへの尊敬の念をより深めたと語っていたが、同時に、4期生たちの不断の努力とその結実としての確かな成長は、先輩メンバーたちの心を動かし、それがグループ全体の新しい原動力となった。

アンコールのMCで、佐々木は、新しい目標を決めたと語り、「私たちはこのメンバーでもう一度東京ドームを目指します。」と力強く宣言した。東京ドームは、他の多くのアーティストにとってそうであるように、彼女たちがけやき坂46時代から目標として掲げ続けてきた場所である。2022年3月には、東京ドームで「3周年記念MEMORIAL LIVE ~3回目のひな誕祭~」を開催し、一度はその目標を叶えてみせたが、それでも彼女たちは、4期生や当時ステージに立つことができなかった2期生・濱岸ひよりを含めた現メンバー全員で、もう一度東京ドームに立つことを約束したのだ。

佐々木は、4期生の「新参者」のステージを観て、たくさんの熱い想い、ハッピーな気持ちが溢れていたと感じたという。そして、「やっぱりこういう気持ちでみんなで上を目指さなきゃなって。」「4期生のおかげで一つになれた。」と語り、「また夢をお話しすることができてよかったです。」「来年もハッピーに楽しんでいくぞ!」と胸の内の想いを伝え、その昂る熱量のまま"誰よりも高く跳べ! 2020"を披露してみせた。

何かを宣言することは、とても勇気が要ることなのだと思う。一度宣言したら、達成する時まで、その目標と絶えずシビアに向き合い続ける日々が続く。時として、周りからの期待や応援がプレッシャーとなったり、自分自身との闘いに心が押し潰されてしまうこともあるかもしれない。ただ、宣言することで初めて生まれるエネルギーがあり、そこから始まる新しい物語があることもまた事実である。そのことを、一度「東京ドームに立つ」という目標を叶えた彼女たちは、誰よりも深く理解しているはずだ。だからこそ、佐々木は、メンバー全員の総意として、来年以降、自分たちが上るべき坂道を示し、ファンと、そして他でもない自分たち自身との約束を結んだのだと思う。

アンコール2曲目として披露されたのは、日向坂46としてデビューした時に生まれた楽曲"JOYFUL LOVE"だった。《俯くより顔を上げた方が人生は楽しいんだ》という一節が、今回の約束の後に歌われることでいつも以上に深く胸に響いた。日向坂46は、逆境に強い。彼女たちは、これまで何度も逆境を乗り越えてきたし、そうした輝かしいポジティビティは、新世代である4期生にも確かに継承されている。東京ドームへ向けて、4期生を含めた現メンバー全員で、ここからもう一度、あの約束の場所を目指す。その力強い想いとポジティブな姿勢に、何度も強く心を動かされるアンコールだった。


ダブルアンコールでは、「あの場所を目指して、みんなで一緒に歌いませんか?」という佐々木の呼びかけの後に、彼女たちがけやき坂46時代から東京ドームを目指して歌い続けてきた"約束の卵 2020"が披露された。最後に佐々木は、「今このタイミングで皆さんとまたこの歌を歌えたのがすごく嬉しいです。」「『ライブ行きたい!』『楽しい!』と思ってもらえるような、もっともっと愛してもらえるようなグループになれるように、来年も頑張ります。」と告げ、今回の公演は万感の終幕を迎えた。

12月30日には、丹生が大晦日の音楽番組から活動を再開することが発表された。日向坂46の未来は、きっと明るい。新たな目標に向かって、1期生〜4期生全員で走り出していく彼女たちの、2024年以降の更なる大躍進に期待したい。



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