見出し画像

日向坂46は、アイドルの「王道」を選んだ

【日向坂46/『キュン』】

乃木坂46、欅坂46に次ぐ、「坂道シリーズ」第3のグループが、ついに正式にデビューを果たした。

この"ついに"という表現は、もちろん、枕詞でも常套句でもない。今回のデビューに至るまでの約3年の間、彼女たちは、けやき坂46(通称:ひらがなけやき)として、険しい坂道を懸命に登り続けてきた。

その道のずいぶんと先には、自分たちとほとんど同じ時期に結成された欅坂46(通称:漢字欅)が、まさに時代のトップランナーとして走っていた。その距離は、当時、未だ活躍のチャンスのない彼女たちにとって、あまりにも残酷すぎるものだっただろう。

そもそも、けやき坂46は「欅坂46の妹グループなのか」「それとも、アンダーメンバーのような存在なのか」といった立ち位置さえ、グループ結成からしばらく経っても定まっていないままだった。さらに、2017年9月、グループ結成のきっかけでもある中核メンバー・長濱ねるが、けやき坂46の兼任を解除されることが発表され、彼女はそれ以降、欅坂46の活動に専念することになる。

自分たちの存在意義に悩み苦しむなかで、ついには、立脚点さえも失い、突然にして「空白」の存在となってしまったけやき坂46。思ってもいない形で第2章に突入した彼女たちの物語は、これからどうなっていってしまうのか。それは、誰にも分からなかった。

しかし、彼女たちは諦めなかった。2018年2月には、欅坂46のピンチヒッターとして、武道館3デイズ公演を見事に完遂。続いて6月には、けやき坂46単独名義でのフルアルバムを発表。

そして、「空白」の存在から再出発を果たした彼女たちは、ついに自分たちの手で新しい存在意義を勝ち取った。それが今回の、「日向坂46」としての正式デビューだ。

グループカラーは「緑色」から「空色」へ。それは、欅坂46とは完全に道を違えるという意思表明に他ならない。そして僕には、これから彼女たちが描いていく晴れやかな未来を想起させる色であるようにも思えた。

デビューシングル"キュン"のセンターを堂々と担うのは、2期生・小坂菜緒。まるで、乃木坂46・西野七瀬の儚い"可憐さ"と、白石麻衣のしなやかな"強さ"を兼ね備えているようで、はっきり言って、とてつもない可能性を感じさせる逸材だと思う。

ここから彼女たちは、乃木坂46とも欅坂46とも異なる「第3の坂道」を走っていく。天真爛漫にして快活。そして、どんなネガティブな感情もハッピーオーラで包み込む。そう、それはまさに、アイドルの「王道」だ。

その道の先に、どんな未来を描いていくべきか。きっとそれも、彼女たちは自分たち自身で決めていくだろう。

これまでも、そして、これからも。

そんな意志の強さを秘めた日向坂46の姿に、僕たちは心を奮い立たされ続ける。



※本記事は、2019年4月7日に「tsuyopongram」に掲載された記事を転載したものです。

「tsuyopongram」はこちらから



【関連記事】


この記事が参加している募集

コンテンツ会議

最後までお読み頂き、誠にありがとうございます。 これからも引き続き、「音楽」と「映画」を「言葉」にして綴っていきます。共感してくださった方は、フォロー/サポートをして頂けたら嬉しいです。 もしサポートを頂けた場合は、新しく「言葉」を綴ることで、全力でご期待に応えていきます。