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【月刊 ポップ・カルチャーの未来から/23年5月号】 僕が音楽ライターになった最初のきっかけについて。

先月から、「自分のこと」について綴る月次の連載を始めました。この記事は、その第2回目です。この連載を始めた理由やきっかけはいくつかあるのですが、その内の一つが、ライターを目指す(もしくは、ライターという仕事に興味を持つ)次の世代の方たちにとって、何かしらの思考のきっかけを提供できれば、と考えたからです。とてもおこがましいことは重々承知の上ではありますが、どこかの、いつかの、誰かにとって、この連載が何かしらの参考になったら嬉しいと思っています。

まず今回は、いろいろな方から特によくご質問を頂くことが多い「音楽ライターになったきっかけ」について書いていきます。僕が音楽ライターになった最初のきっかけは明確で、それは、新卒でロッキング・オンに入社して、「ROCKIN'ON JAPAN」編集部に配属されたことでした。今回は主に、なぜロッキング・オンに入社したのかについて、約10年前の就職活動を振り返りながら綴っていきたいと思います。


2012年、大学3年生の時に就活を始めた当初は、エンターテインメントやポップ・カルチャーに携わる仕事がしたいと漠然と考えていました。僕は大学で経済学のゼミに入っていたので、先輩や同期は金融業界を目指している人が多かったのですが、一人だけ周りと異なる道を選ぶことに対する迷いは全くなかったです。自分でも不思議なほどに、将来はエンターテインメントの世界に携わるんだ、という圧倒的な謎の確信がありました。

はじめは、テレビドラマや映画を作る仕事に就きたいと考えていました。2012年の秋から年末にかけて、フジテレビのドラマ部門の長期インターンに参加したことで、その想いはどんどん強くなっていきました。2013年の年明けには、インターン参加者の中からさらに選抜された数名だけが参加することができる特別なインターンに声をかけて頂き、『最高の離婚』や『ラストホープ』の撮影現場を見学させてもらいました。当時は、途端に現実味が出てきたこともあり、フジテレビに入社する未来をイメージし始めていたのですが、もともとテレビドラマと同じくらい映画も好きだったこともあり、東宝をはじめとした大手映画会社にもエントリーシートを出していました。

2013年の年明け、テレビ局や映画会社の他に、どの会社にエントリーシートを出そうか検討していた時に、バイト先の友人から、ある会社のエントリーシートの代筆を頼まれました。話を聞くと、どうやらエントリーシートの課題の一つとして「最近聴いたCDのレビュー」があるとのことで、その友人は、「なんとなく得意そうだから」という理由で僕に代筆を頼んだそうです。それが、ロッキング・オンのエントリーシートでした。面白そうと思って引き受けて、その友人の代わりに、[Champagne]の『Schwarzenegger』のディスクレビューを書きました。そして直感的に、自分もこの会社のエントリーシートを書きたいと思いました。

高校生の頃から、音楽誌「ROCKIN'ON JAPAN」「bridge」「rockin' on」やカルチャー誌「CUT」の読者で、「COUNTDOWN JAPAN」にも2回参加したことがあったので、もともとロッキング・オンという会社の存在は知っていたのですが、その友人から代筆を頼まれるまでは、ロッキング・オンを就職先として想起したことはありませんでした。すぐに、自分用のエントリーシートを書き始めました。ちなみに、音楽評は、Museの『The 2nd Law』について、映画評は、クリストファー・ノーラン監督の『ダークナイト ライジング』について書きました。また、エントリーシートとは別で課されていた800字の課題作文「この一年、最も重要なこの曲、この映画、この本」では、当時ロングランの大ヒットを記録していた映画『桐島、部活やめるってよ』について書きました。もともと各雑誌の読者だったこともあってか、エントリーシートや課題作文は楽しみながら書き上げることができました。

音楽や映画について書くことが好きなら、本来は他の出版社なども複数エントリーするのが自然だったのかもしれませんが、就活は、テレビ局と映画会社とロッキング・オンを軸に進めていきました。それはきっと、書くことができればどこの出版社でもいいという考えでは決してなかったからで、やはり、高校生の頃から「ROCKIN'ON JAPAN」などを読んでいたこともあり、ロッキング・オンの思想や価値観に惹かれていたのだと思います。(この記事のトップ写真は、僕が高校生だった2009年〜2010年の「ROCKIN'ON JAPAN」です。)もっとストレートに言うと、僕にとってロッキング・オンは、社長(渋谷陽一)や編集長の山崎(洋一郎)さんをはじめ、憧れの人がたくさん在籍している会社でした。ちなみに、「ロッキング・オンの思想や価値観って何?」という話については、長くなってしまいそうなのでまた別の機会で書こうと思います。


2013年春、大学4年生になり、いよいよ就活の本選考の時期を迎えました。年明けに特別なインターンに声をかけてもらったフジテレビは結局ダメで(その特別なインターンに参加した同学年の参加者は自分を含め2名で、後日、もう一人の参加者がインターン枠で内定をもらった、という話を聞きました。)、そこそこにショックを受けたのですが、東宝の最終選考を控えていたタイミングだったので、気持ちをそちらに切り替えていました。

ロッキング・オンは、エントリーシートを出して選考に進んでいたものの、非常に狭き門という話をどこかで聞いていたため、自分が通るというイメージを現実的に持てていませんでした。ただ、選考途中で課された課題作文やグループワークについて、「とにかく楽しい!」という実感がはっきりとありました。自分にとって、こんな選考は他にありませんでした。内定の電話をもらった時は、喜びよりも驚きのほうが大きかったですが、これは運命だと思い、すぐに他社の選考を辞退して、ロッキング・オンへの入社を決めました。

今から振り返ると懐かしいのですが、内定者の時は、「CUT」編集部への配属を希望していました。大学時代に大好きでよく読んでいた「CUT」に対する想いは、また別の機会で書こうと思いますが、結果的に社会人1年目は「ROCKIN'ON JAPAN」編集部に配属となりました。この記事の冒頭で、「僕が音楽ライターになった最初のきっかけ」と書いたように、編集部への配属は、あくまで「最初」のきっかけにすぎませんでした。新卒入社してから4年間勤めたロッキング・オンを退職した後、改めてゼロから音楽ライターになったきっかけや経緯については、また次回の連載で書こうと思います。


今回は、誰の役に立つのかも分からない僕個人の就活の話を長々と綴ってしまいました。いくつか社名を挙げましたが、各社の新卒採用の状況や選考の仕方は、約10年前と比べると変わっている点が多いはずなので、この記事に書いてあることのほとんどは直接的に参考にならないと思います。ただ、大好きなエンターテインメントの世界に憧れて、がむしゃらに突っ走り続けた就活生がいた事実が、誰かの背中を押すことができたら嬉しいと思っています。

よく「趣味を仕事にするのって、どうですか?」と聞かれることがありますが、僕は大賛成ですし、また、「エンタメ業界に憧れはありつつも、『好き』だけでやっていけるか不安です。」という迷いも同じようによくお聞きしますが、これまで僕は、好きなものに携わりながらキャリアを築いていくかっこいい大人をたくさん見てきました。なので、自分の直感を信じてほしいと思いますし、無責任なことは言えませんが、きっと後悔はしないのではないかと思います。

最後までお読み頂き、ありがとうございました。また次回!



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