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onlineつくり手直買会を明日、開催します。

onlineつくり手直買会という名の、オンライン催事の1回目を明日、開催します。

私たちにっぽん てならい堂ではこれまで、生活者である私たちが、道具が持つ物語を知るために、つくり手と共同で数々のワークショップを開催してきました。

私たちは、自分が使っている道具のことを案外と知りません。どこで誰が、どんな想いで作っているのか。つくり手がつむぐ"物語"と私たちの生活の物語とは、途切れてしまっています。けれどもそれが、つながっていた時代というのもあったのではないかと想像します。

最初に、初めての方にもご存知の方にも、今変わろうとしているにっぽん てならい堂のことから、少しお話ししたいと思います。

私自身は、以前に商品のバイヤー的な仕事をしていまして、日本全国でものづくりをしている方のところを訪ね、直接話をして、実際に作るところを見て、時には体験させてもらう機会がありました。当然のことながら、話を聞けば聞くほどに、案内してもらった道具たちは、とても魅力的に感じました。実際に購入して持ち帰り、その場で見聞きした話はもちろん、その土地を訪ねる工程の一連の思い出が物語となって、生活の中で息づいています。

私が"仕事として"実際に体験したことを、道具を買う側としても、体験したい人は多いのではないかと思いました。逆にいうと、そこで見聞きした話をどれだけ伝えようとしても、その土地の空気感とかそういうものはどうしても伝わりきらないし、その工程の思い出はあくまで私個人の体験であって、やはり皆ひとりひとりの体験を持ってもらう方が、ずっとずっといいよねと思ったんです。

これを形にしようと思った時、最初の構想は"取りに行くネットショップ"でした。ネットで欲しい商品を選んだ後は、私自身が体験したのと同じように、現地に行ってつくり手の話を聞いて、直接受け取るようにすれば、言葉ではなかなか伝わらない空気感も現地で直に体感できますし、お客さん一人一人のそれぞれの物語が生まれるはずです。

この"取りに行くネットショップ"への想いはまた機を改めてお伝えするとして、検討を重ねた結果、最終的には2013年に"日本のモノづくりを体感することを集めたセレクトショップ"として、私の体験はかたちになりました。これが"にっぽん てならい堂"の始まりです。現地へ行くというコンセプトは残しつつ、"体験する"ということに重心を少しずらしてスタートしました。

にっぽん てならい堂での体験の目的は、"知ること"です。自分たちが思ってるよりも知らない道具のことや、何となく気になってたけど知らないままにしてきた生活のことなど、本当は知っておいた方がいいことを知る機会をつくっています。そして、ちゃんと知ろうと思うなら、それを作っているつくり手から教えてもらおうと。

それも、できることならば体験がいい。100回聞くより1回見る方が早いし、100回見るより1回体験する方が早いですから。WEBで多くの情報に触れられる昨今だからこそ、自らの五感を使った体験が大切だと考えました。だからこそ"体験する"ことに軸足を置いたサービスとしたんです。

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そうやって7年に渡り細々とではありますが、お客さんと一緒に体験を楽しみながら続けてきた"にっぽん てならい堂"も、当然に、多分に、コロナの影響を受けています。"体験"それ自体が密接にならざるを得ませんし、東京・神楽坂に設けたワークショップや教室用の"ひみつの小店"も、その名の通り、あまりに小さな箱なので、密集を避けられません。

ただ、こういう時だからこそ、捨てられるものと捨ててはいけないもの、そういう取捨選択を否応なく迫られ、見えてくることがありますね。ちょうど年明けから、自分たちの存在意義をもう一度問い直していたところでしたから、いいタイミングだったとすら言えます。

にっぽん てならい堂はその役割を、"モノの手に入れかたを変えること"と再定義しました。

当初考えていた、作っているところへ取りに行くことも、五感を使ったワークショップも全て、"手に入れかたを変えること"に通じます。今は、人が密に集まって体験することも、県をまたいで移動することもはばかられますが、けれど自分たちにできる"変えること"はまだまだ他に、無限にあるわけです。

新潟の味噌蔵さんと一緒に、これまで7回開催してきた"味噌仕込み体験"も、今年は初のオンライン開催としました。いつもの臨場感であったり、大豆の匂いを共有することはできないけれど、通常であれば参加できなかった青森や福岡のお客さんが参加してくれたり、新潟の味噌蔵を生中継で皆で見学したりと、やはりオンラインでしかできないことも多く感じられる機会でした。

そんな時に、仲良くさせてもらってるつくり手さんから、予定していた百貨店の催事が全部なくなったと聞いて、それはオンラインで代替できることではないかと思いました。現物に触ることはできなくなりますが、その店に直接行くことのできない人が、参加できるようになります。そもそも百貨店などの催事は、つくり手と直接話して買うことができる貴重な機会ですが、その魅力・メリットがちゃんと伝わっている、いや伝えている催事は意外と少ないなと、改めて感じました。

onlineつくり手直買会は、お客さんとつくり手と、私たちにっぽん てならい堂と、3者を直接zoomでつないだクローズドな販売会です。時間枠ごとに事前予約をして参加してもらうので、他に邪魔が入ることなく、じっくりと話を聞きながら、商品を吟味することができます。

コロナの影響が長期化し、経済の先行きも不安な中、私たちはこれからの買い物のキーワードを「信頼と未来」ではないかと考えています。変なものを買ってる場合ではないんです。"信頼"できる道具を手に入れるために、値段だけでなくて、その商品に含まれた物語をちゃんと知ろう、という流れは加速していくと思います。そしてそれは子供達の"未来"につなげられるものにしたい、先行きが不透明な今だから、無意識にそうした買い物を人々は求めるのではないでしょうか。

つくり手と直接話をして買い物をすることは、"信頼と未来"を感じるための一つの方法です。そうした道具を求める生活者にとっては、これまで以上に重要な機会になるとも言えます。

つくり手にとっても、搬入や都市までの移動と滞在、お客さんがいない時間の拘束など、リアル催事のデメリットは、時にとても大きなものになりますが、オンラインで対応することで、物理的にはかなりの節約になります。商品搬入の物理的制限がないことは、お客さんにとっても、特に自然素材で木目などの個体差の大きい商品を選ぶにあたっては、メリットになる部分もあります。

もちろんつくり手は、つくることが本分である人たちですから、割ける時間も限られます。売り手との分業も大切なことです。しかし、一定程度、何のバイアスもかからない状態で、直接つかい手の声を聞くことはモノづくりに確実にプラスになりますし、そもそもつくり手が生活者に直接販売する比率はこれまでよりも、高まっていくのではないかと思っています。

私がそう考える背景としては、世の中のEC化率が高まる中で、実際につくり手たちもHPにオンラインショップを併設し、直接販売をするところが目に見えて増えていることもあります。Amazonエフェクトが話題になる中で、アメリカでは百貨店の閉店が続き、"百貨店のビジネスモデルは終焉した"との記事も目にしました。

売り手にとってもつくり手にとっても、生活の道具を暮らしに届ける方法は、コロナ以前から見直されるタイミングにありました。そして、それがコロナによって加速されたに過ぎないでしょう。商業施設の営業再開が始まりましたが、この先も続く自粛の影響が終わってたとしても、戻るものと戻らないものがあります。結局のところ、私たちは続けるために、否応なく変え続ける必要があります。

今回はご一緒していただけるのは、新しい施策を模索する柔軟なつくり手さんたち。岐阜で木工に取り組むwoodpeckerの福井さんと、神奈川で手仕事による箒づくりを復興させた中津箒の職人のおひとり小林さんです。

本当は、もっと多くの方にご参加いただいて集合催事的に、面で見てもらうことも必要なのでしょうが、私たちのいつもの通り、小さく始めることにしました。かねてお取り組みさせていただいているお二人と、その道具にかねて興味をもってくださっていたお客さんをつなぐことから始めようと思いました。

『中津箒』のonlineつくり手直買会
2020年5月30日土曜日 10時〜15時(事前予約制)
https://www.tenaraido.jp/tenarai/online_houki/

『woodpeckerの木の道具』のonlineつくり手直買会
2020年6月6日土曜日 10時〜15時(事前予約制)
https://www.tenaraido.jp/tenarai/online_woodpecker/

全てを解決するものとは思いませんが、選択肢の一つとはなりうるものとして、変えるべき点を変えながら、これからの"モノの手に入れかた"を模索していこうと思います。お時間合えば、ぜひ遊びにきてくださいね。

ではでは。

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