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世界トップ大学のアントレプレナー育成システムに触れて|2023シンガポール国立大学視察記①

お久しぶりです。2023年2本目の投稿。

大学は春休みに入りましたが,慌ただしく過ごしている間に2月も終わりに近づいてきました。「え,あと4日で終わるの?」そんな感じです。

この春休みはシンガポール,イタリアへの海外出張に加えて,米国ボストン近郊のBabson Collegeによるアントレプレナーシップ教育(EE)のFDプログラムが4日間フルで開催されることもあり,EE三昧の日々ということになりそうです。

今回はシンガポール国立大学(NUS)とその周辺にあるスタートアップ企業「Shopee」を訪問記。同様の出張はちょうど4年前の今頃にスウェーデン,デンマークの教育機関を対象に行った調査記録があります。

この記事と比較しながら,コロナの間に変わったこと,滞っていたこと,私自身がどのような進歩をしているのかを確認するものとして記録として以下記してみます。

1日目:世界トップビジネススクールでプレゼン?!

2月22日朝,フライトの関係で関西国際空港からベトナム航空でシンガポールに向かう。途中,ホーチミンでトランジットして,シンガポールに着いたのは20時過ぎ。地下鉄で今回の宿泊地であるチャイナタウンに向かい,ホテルに入ったのは21時頃だった。

すでに夜になっていたので街の様子はよくわからなかったが,翌朝,今回の訪問地であるNUSに向かうとき,街の様子が見えてきた。

今回はチャイナタウンに宿泊

地下鉄の雰囲気は香港とほとんど変わらない。サイン,車両,発券方法,色使い,どれもが香港のそれと同じ。これで初めてきたシンガポールが一気に身近に感じられるようになった。

チャイナタウン駅の様子

ここから地下鉄を乗り継いで約30分。サークルラインのKent Ridge駅に到着。ここで同行者の先生方と待ち合わせて,いよいよNUSに突入することに。

まずはStudent Centerへ

ここで昨年11月に来てくださったMike先生と合流,現在留学中の北海道大学の博士課程院生も一緒にランチの時間を過ごす。

2/14-16に行っていたゼミ合宿・卒業旅行に来ていた3年生のAくんはその後,フィリピン,マレーシアと旅行してシンガポールで合流する予定にしていたが,フィリピンでスマートフォンを奪われる事態に陥り,危ない目に遭いながらもなんとかここまでたどり着いた。

お土産を購入しに中央図書館のCOOPへ

そして,私が無理を言って毎度恒例の大学グッズの購入のため,中央図書館のCOOPに。ここでNUSのポロシャツ(サイズの選択ミスで小さかった…)とボトルを購入。

いよいよビジネススクールへ

そうこうしているうちに待ち合わせの時間になったので,いよいよビジネススクールを訪問した。

NUSのビジネススクールはアジアトップクラスのビジネススクールで,世界でも有数の評価を受けている。自分がまさかこんな大学を訪問すると思っていなかったし,ここで少しでも話をするなんても思ってみなかった。人生何が起きるかわからないものである。

教室棟の前にて

建物は世界を代表するビジネススクールの1つと言うから相当に綺麗なのだろうと期待していたのだが,質素そのもの。特別に新しいというわけでもなく,周りの教室とそれほど変わり映えはしない。

ピロティに掲げられたNUSで学んだ学生・院生たちのタペストリー

そして,いよいよプレゼンテーションがスタート。Mike先生だけでなく,Pasha先生(Head of Department of Strategy and Policy),Sarah先生( Innovation and Entrepreneurship)に同席して頂き,私が取り組んでいる「スプラウト」の概要と高校生を対象に実施しているサーベイ調査の結果についてお話させてもらった。

プレゼンテーションの様子

当初は10分程度の予定で,私の自己紹介程度に話をするつもりでいたが,気づけば30分が経過。拙い英語であったにも関わらず,理解しようと努めてくださり本当に感謝。

プログラムをより発展させるため,授業の進め方の工夫,レモネードスタンドから以下に進歩させるか…。人口減少が進み,地域経済の担い手が減っていく中でいかに担い手を育てていくのか。そこに事業機会があるのだという話をさせてもらいました。

また,高校生を対象とした調査結果についても興味を持ってもらえたようで,今後の研究の展開についてもコメントを頂けた。

いかに若年層に科学に対する興味を持ってもらえるようにするか?:Outreachプログラム

続いて,場所を移動して科学部(Faculty of Science)を訪問して2人の先生,PRAKASH KUMAR先生とKINI R MANJUNATHA先生とのミーティング。

ここではPrakash先生から同大学が若年層向けに科学に興味を持ってもらえるようにするためのOutreachプログラムについてレクチャーを受けた。人口600万人ほどのシンガポールは世界有数の教育大国であり,競争が激しいことはよく知られているが,金融だけでない国力を高めていくためには科学的な知見を活用しなければならない。日本よりも遥かに小さな国土である程度の影響力を持とうと思えば,科学立国を目指すというのは至極当然の戦略。

起業家支援プログラム"GRIP"についてレクチャー

また,Kini先生からは起業家支援プログラムのGRIPについてレクチャーを受けた。GRIPの詳細は翌日にまた説明を受けることになるが,ここでは優れた技術を事業化していくためのインキュベーション(孵化),社会への実装を目指すための短期間(3ヶ月)での集中プログラムの提供を行っている。一定のプログラムには5万シンガポールドル(約500万円)の活動資金の提供,大学による出資など手厚いサポートを行っている。ここは国を支える大学としての気概が見える。

工学部チームからは開発中の技術についてのプレゼンテーション

続いて,今回同行している工学部チームからのプレゼンも行った。シンガポールでも環境負荷をいかに抑えていくかが大きな課題になっていることもあり,工学部側からは環境負荷の低減,ゼロエミッションを実現してくための測定装置や都市計画のアプローチについてプレゼンテーションが行われた。技術的なことは私にはよく分からなかったが,こちらも先生方との議論が白熱。タイミングが合えば月曜日に担当部局とのランチミーティングの設定を模索することになった。

友人との旧交を深める

夕食はどうしようかと再びチャイナタウンに戻ってきた。ここでシンガポール在住の友人,Patrickと会うことにした。

だいぶ丸くなったパトリック

彼との出会いは2016年の熊本地震が契機だった。当時,友人たちとボランティア活動を行うことを模索していた頃,知り合いを介して熊本地震の状況を知りたい,できればボランティアをしたいという問い合わせがあった。そこで,彼を車に乗せて益城町に向かい,農家さんでお米の収穫を手伝うボランティアをした。帰りにたくさんのお米を分けて頂いただけでなく,食事まで頂いた。彼はそれがとても印象的だったようで,日本に来るたび,福岡に立ち寄ることがあれば必ず連絡をしてくれる。

今回は私がシンガポールに行く側だったが,予定もどうなるか分からなかったので前もって連絡していなかった。しかし,facebookにシンガポールに向かっていることを書き込むと彼から連絡が入り,急遽夕食を共にすることに。

やっぱ来るよね

夕食後は散歩がてらマリーナ・ベイ・サンズとマーライオンを見にマーライオン公園へ。定番のポジションから写真を撮影。ただ,ここで工学部ご一行とは分かれて,同行していたゼミ生とパトリックと3人でリトル・インディアに向かうことにした。

リトル・インディアで食べたカレー

リトル・インディアではホーカーズでスパイス注入。ビールを飲みながら3人でしばし語り合う。しかし,後ろで流れているのは日本の演歌。最初はまさかと思いつつも,「浪花節だよ人生は」が流れてきたことで確認できた。

こうして旧交をしばらく深めた後,翌日のNUS訪問に備えて再びホテルに戻るのでした。

1日目まとめ

こうして初めてのシンガポール訪問1日目が終了。

かつてイタリアでの学会報告で撃沈した嫌な思い出があってから,英語のプレゼンはそれ以来トラウマになっていた。自分の立場やスライドを見てかなり補正してご理解頂いたのだろうけれども,プレゼンテーションの意図するところが伝えられたように思う。

移民を受け入れ成長してきた歴史的経緯があるからか、中華系、マレー系、インド系がミックスした多文化が前提だからか、開放的で寛容さを感じた。一方で競争の激しさ、目に見えない階級みたいなものも感じられた。

私は単純なのでこうやって得られた経験をポジティブに受け止めようとしている。そして、いろいろと声をかけてくださったことを単純に受け入れてチャレンジしてみようと思う。常々50歳になる自分と向き合ってきたが、もしかしたらこれが1つのキッカケになるのかもしれない。

さて、2日目は何があったのでしょうか。次の投稿もお読みくださると嬉しいです(笑)

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