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さようならギャングたち 高橋源一郎

衝撃といえば、この本ほど衝撃的だったものはない。ただ内容を紹介するのが、とても難しい。

読むととても楽しくて、それでいて言葉とか認識とか、詩とか小説とか文学とか表現することとか、そうしたことを深く考えさせられる。

新しかった。村上春樹を初めて読んだ時も新しいと思ったけれど、高橋源一郎も間違いなく新しかった。誰も書いたことのない、誰も読んだことのない文学が、そこにあった。

高橋源一郎という作家は意識的作為的批評的なのだ。文学哲学の知識が豊富でポップカルチャーにも明るく、それを同質にして語れる。特に詩が読めることは、驚嘆に値した。

当時の私は、詩が読めなかった。現代詩の読み方というか、接し方というか、要するに何が面白いのかわからなかった。そういう人は多かったと思う。

高橋源一郎は現代詩も小説と同じように語れた。しかもその読み方はとても面白く刺激的だった。いちいち目を見開かされるようだった。

本書にはその詩的面白さも満載されていた。

つづいて、高橋源一郎はペンギン村とかAVとかの俗な素材をわざと小説に入れる方法で、小説の特権的な芸術性みたいなのを解体していくのだが、そこまで行くと、ちょっとついて行きづらくはなった。

ただ今も批評や評論はとても面白い。思想がちょっと左巻きすぎる時があるのは玉に傷だけど。

さようなら、ギャングたち (講談社文芸文庫) https://amzn.asia/d/eUJr2Px

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