潮田クロ

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潮田クロ

ポンコツ小説、他に文芸書や昭和歌謡の感想文などを書いてます。投稿にはフォトギャラリーを使わせて頂いてます。クリエーターの皆さま、いつも有難うございます。 趣味で書いてますので、厳しいご批評はご容赦ください。オヤジをいじめないでください。仲良く、楽しくがモットーです。

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    アイスネルワイゼン/桃/故郷/走れメロス

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    「神木町」シリーズ。 一話完結方式。どこからでも読めます。

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小説精読 少年の日の思い出8

 ああ、筋追いしてませんでした。簡単にやっつけましょう。といっても、皆さん、もう読んでる物語ですが。 ぼくはエーミールがクジャクヤママユを蛹からかえしたことを知ります。矢も盾もたまらず、ぼくはエーミールの部屋へ行く。部屋には入れますが、エーミールは不在。ぼくはここで、エーミール不在の中、クジャクヤママユを見てしまう。そして欲望に負け、盗んでしまう。階段から降りる途中、女中とすれ違い、咄嗟に、ぼくはクジャクヤママユをポケットにしまう。女中をやり過ごした後、激しい後悔の念に駆ら

    • 小説精読 少年の日の思い出7

       ぼくは欲望に負けて、エーミールのクジャクヤママユを盗む。 この「盗み」という問題について。 「盗み」とは、他人の所有物を、断りもなく、秘密裡に奪うこと。勝手に自分の所有物にしてしまうこと。 法ができるずっと以前から、殺人と同じく、犯してはならない社会的なルールである。 では「所有」とは何か。いつでも、気の向くままに、どうとでもできること。ずっと秘密にして誰にも見せない。好きな時に眺める。壊したり捨てたり、或いは譲ったりできる。なんでも、自分の意思で自由に出来ること。所

      • 小説精読 少年の日の思い出6

         エーミールはコムラサキという蝶に20ペニヒという値段をつけるわけだが、ぼくもエーミールの蝶に値段をつけている。エーミールがクジャクヤママユを蛹からかえしたという話が、今、ぼくの友人が100万マルクの遺産を受け取ったと聞くよりも衝撃的だった、と言う。「今」とはいつか。無論、社会的成功を成し遂げ、友人の別荘でくつろぎ、思い出話を披露している「今」だ。大人になった僕は、その衝撃の度合いを金で表現する。少年のぼくは、コムラサキが20ペニヒと言われて、たぶん戸惑っただろう。たぶん金銭

        • 小説精読 少年の日の思い出5

          ぼくがコムラサキを見せると、エーミールは20ペニヒの値打ちがあると言う。エーミールは、自分の価値観を持っていない。金の価値とは社会的な価値だ。自分以外の、その他大勢の欲望の価値だ。誰も道端の石ころに価値を求めない。このコムラサキは20ペニヒ出しても欲しいという人間が社会にいるということをエーミールは言っている。同時に、コムラサキを20ペニヒ以上出して欲しい人間は、いないとエーミールは言っている。20ペニヒ以上だすのなら、その欲望は他に行くと言っているのだ。 果たして、そうか

        小説精読 少年の日の思い出8

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        記事

          小説精読 少年の日の思い出4

          主人公のぼくは、貧相な装備しか与えてもらえない。だから、それを引け目に感じて、自分の蝶の収集を他人に見せなくなる。自分の世界に閉じこもり、自閉する。 ここで、2年後にエーミールと紹介される教師の息子が登場する。彼は非の打ち所がない子供として描かれる。その完璧さゆえ、ぼくは彼のことを賞賛しながら憎むようになる。無論のこと、彼も蝶の収集をしていた。 ある日、ぼくは珍しいコムラサキを捉える。得意になったぼくは、エーミールにだけには、その獲物を見せようと思う。何故か。何故、憎んで

          小説精読 少年の日の思い出4

          小説精読 少年の日の思い出3

           客は自分が十歳の頃の話を始めます。客の一人称は「ぼく」です。ぼくは蝶集めに夢中です。  子供の頃のある時期、何かに夢中になるのはよくあることです。仮面ライダーカード。ビッグリマンシール。筋肉マン消しゴム。遊戯王やらポケモンやら、なんだかんだ、今でもあります。その昔は昆虫採取なんですね。そうそう切手集めなんてのもありました。私が小学生の頃は、切手の一大ブームで、みんな集めてましたな。なんかそれ用の本とかあって、「見返り美人」が何千円とか、取引き時価が載ってたりしました。  

          小説精読 少年の日の思い出3

          小説精読 少年の日の思い出2

          さて、続きですが、このお作、日本でしか読めないって知ってました? なんでも本家ドイツには、原本がないそうなんですね。どういう事情かわかりませんが。まぁ、そんなこといいんで、続けます。冒頭問題。話かわりますが、皆さん、映画は好きですか。やっとコロナも収束に向かいつつあり、映画に行く人も増えつつありますね。映画、いいですよねぇ。2時間、映画のストーリーに酔いしれて、至福の時間を過ごす。テレビドラマとは、また違った味わいがありますな。テレビドラマ見てると、カァちゃんが、いい時に限っ

          小説精読 少年の日の思い出2

          小説精読 少年の日の思い出1

          言わずと知れた、青春の巨匠ヘッセのお作でございます。まずは、冒頭の場面、これ必要のか問題から進めましょうか。 別にこの冒頭部分がなくても、物語としては成立します。冒頭が作中の現在で、この後客の少年時代の回想に入るが、回想に行きっぱなしで、現在には戻ってこない。で、この場面いるのか。いるんです。激しくいるんですな、これが。 このお話、客が夕方の散歩から帰って、私の書斎で雑談するところから始まります。もう夕暮れ近くで、窓の外には湖が見えている。 湖の側で書斎のある家。二人のベシャ

          小説精読 少年の日の思い出1

          マイブーム読書

          時折、嵐のように巻き起こる読書ブーム。成瀬が引き金になったな。只今、絶賛三冊同時進行中。読むとなったら、1日一冊じゃ、なんか勿体なくて。つっても、そんな難しいやつはもう勘弁。まあ、たまに純文も読みますけど。今回はこの三冊。 「同志少女よ、敵を撃て」 ソ連少女を主人公にしたの作者の卓見ですね。日本人主人公にすると、物語評価以前に"戦争反対イデオロギー"で評価されちまいますからね。 「わたし、定時で帰ります」意外と骨太。ドラマ見てたんで、ちょっと読んでみようかぐらいの気持ちだった

          マイブーム読書

          【昭和歌謡名曲集64】おいでよ 吉田拓郎

          名曲集と銘打ちながら、歌謡曲と違うやんけ! こんな歌、流行ってないやんけ? などなどお怒りの向きはございましょうが、今回はことにコアな曲です。吉田拓郎は、これはもう大看板。ですが、全部が全部皆様の心に残る曲とは言いづらい。しかし、ですね、アルバムの片隅にあって、皆様がスルーしてしまった曲の中にも、個人的に大好きな曲がございます。今回が、なんと64回。昭和も64年目。この節目の回に、私の極く極く個人的に好きな、まるで流行らなかった歌を紹介致します。 上京して、知り合いも誰もおら

          【昭和歌謡名曲集64】おいでよ 吉田拓郎

          成瀬は天下を取りにいく 宮島未奈

          本屋大賞、おめでとーございます。いや、取るって思ってましたよ。抜群に面白うございましたもの。誰でも読めるし。嫌味がないし。読んで、気持ちいいし。そりゃね、人間の暗部を抉り出すのが文学かもしれませんけど。まず、読んで面白くないとね。別に人間の暗部なんて、知りたくもない人も多いだろうし。文学なんていらなくて、読んで元気と勇気と生きる希望がもらえたら、もうそれでいいし。ああ、それにしても、読めばみんな滋賀に行きたくなっちゃいませんか? 膳所駅、行きたい! ミシガン、乗りたい! 持論

          成瀬は天下を取りにいく 宮島未奈

          【昭和歌謡名曲集63】風の谷のナウシカ 安田成美

          私たちがジブリを意識したのは「ナウシカ」からだった。そりゃ、前に「ハイジ」とか「ホルス」とかあったが、宮崎駿認識はなかった。この前に「カリオストロ」とかあったが、一般には駿認識というよりルパン認識だった。「ナウシカ」が全部変えた。あの絵柄だって、どっちか言うとダサい認識でさえあった。でも「ナウシカ」が全部変えた。この売らんかな、のテーマソングのお陰もある。 試写で、映画が全部終わった後、この曲が流れて駿は激怒したそうである。違う!と。これは俺の世界観じゃない!と。こんなもん流

          【昭和歌謡名曲集63】風の谷のナウシカ 安田成美

          【昭和歌謡名曲集62】まちぶせ 石川ひとみ

          新宿アルタがなくなるという。言うまでもなく「笑っていいとも」のスタジオがあったビルである。上京して、早速見に行った。ここがアルタかと見上げていると、当時はそこにバルコニーみたいなとこがあって、そこでマイク持った男の人が何やら喋っている。なんじゃろ、と見ていたら、どうぞ、の声と共に、なんとビキニ姿の石川ひとみが現れた。夢か。本物か。思うていたら、「まちぶせ」を歌い出した。東京は、なんちうステキな町なんやと、田舎の青年はボーっと見惚れたことだった。歌のあと、インタビューがあって、

          【昭和歌謡名曲集62】まちぶせ 石川ひとみ

          【昭和歌謡名曲集61】精霊流し グレープ(さだまさし)

          いよいよ書かねばなるまい。さだまさし、である。 まさしのことは正直書きたくない。恐ろしいのである。まさしではない。まさしを攻撃する人たちが恐ろしい。「関白宣言」と「防人の歌」は、ことに鬼門である。好きだと言ったら、どう攻撃されるかわからない。だから言っておく。好きでもきらいでもない。 ここでまず取り上げるのは「檸檬」である。聖橋から放るやつである。上京して私も放ろうとしたが、人通りが多く咎められそうなので、やめた。 「檸檬」と言えば梶井基次郎である。丸善に檸檬を置いてくる日本

          【昭和歌謡名曲集61】精霊流し グレープ(さだまさし)

          【昭和歌謡名曲集60】ハロー・グッバイ 柏原芳恵

          異質なアイドルだった。例えば、「ハロー・グッバイ」のイントロの振り付けは、手を後ろで組んで、肩をかわるがわるぴょこぴょこ上げるというものだが、ここで既に違和感があった。そう、芳恵はアイドルにしては大柄なのだ。実際に大きいかどうかは知らないが、印象としては。そのでっかい芳恵がちっちゃい女の子の仕草を真似てるような。それ、ちっちゃい女の子がやってこそカワイイのだぞ。君には君に似合う振り付けがあるはずだ。そんなことを思いながら見ていた。小顔のアイドルたちの中で、顔も少々大きめだった

          【昭和歌謡名曲集60】ハロー・グッバイ 柏原芳恵

          【昭和歌謡名曲集59】帰れない二人 牧瀬里穂

          井上陽水「心もよう」のB面なのだが、こちらをA面にした方が、みたいに言われた名曲。陽水もいろんな人と歌っているが、違う人がソロでいっぱい歌ってるのが聴けるのが、映画「東京上空いらっしゃいませ」。この曲を、陽水、清志郎、加藤登紀子、憂歌団、牧瀬里穂が歌っている。それぞれの持ち味ある歌い方で、歌だけで痺れた。相米慎二監督作品。 ただ、観た当時は感激もんだったが、後で見返すと、牧瀬里穂が下手過ぎた。せっかくいい映画なのに、まだ牧瀬には無理だった。責めてはいない。アイドル映画とは、そ

          【昭和歌謡名曲集59】帰れない二人 牧瀬里穂