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萬御悩解決致〼 第三話11【最終回】

 結局、キャット・ハウスにいる間、仔猫は移動ケージから出されることはなかった。駅を出るとコンビニがあったので、牛乳を買い、地面に平皿を置いてケージから出して飲ませた。雨はすっかり上がっている。
「ごめんね。行き先、無くなっちゃったね」
「うちにもう一泊するか」
女子たちもしゃがんで、仔猫に話しかける。ぴちゃぴちゃ、元気よく仔猫は牛乳を飲む。
「すまなかった。君たちが我慢できるなら、僕は何も言わないつもりだった」
圭介が謝った。
「いや、いいって。俺も限界だった」
「そうよね。あんな言い方、されちゃあね」
「でも、どうする。もいっぺん細田Tに頼んでみる?」
「いや、ここ断ったのあたしらだから」
仔猫を見ながら、口々に好きなことを喋る。しかし、方針が立たない。
「よかったら」圭介が言う。「よかったら、ミーちゃんを僕に任せてくれないか」
「だからダメだって。おまえん家、ピットブルがいるんだろ。それとも、あれは嘘か」
「嘘じゃない。いる」
「じゃ、ダメじゃん」
「いや、ミーちゃんは僕の家には来ない」
「じゃ、どこ行くんだよ」
「忘れてないか。最適な家がある。猫の一匹や二匹、三匹だって大丈夫な家だ。幸いなことにピットブルもいない。しかも、そいつは僕たちにとても大きな借りがある」
「あっ」
「そう。相良ん家。これから頼みに行こう」
「そうか。よし。行こう」
四人が立ち上がる。
「嫌だっていったら、置いて帰ろう」
「言うもんか。嫌だって言ったら、一発お見舞いしてやる」
「ついでに、家の中、案内させよう」
「いい、いい。それいい。ケーキも出させよう」
俺たちの新たな希望を象徴するかのように、駅の向こうには、いつの間にか美しい虹が架かっていた。

        第三話 完

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