デザイナーのための実践的なメンタリング-メンターとしての学びとこれから-
この記事について
デザイナーにフォーカスした内容は今回は省略
まずはメンターとしての学びと振り返り
自戒を込めて今の自分と理想のギャップを見つめ直すためのもの
元々やりたいと思っていた人材育成領域。今回事業会社のプロダクトデザイナーの方にメンターとしてメンタリングする機会を頂けたのでそこで得た学びとこれからについて話してみたいと思います。
学び
現在地を共通認識化する
メンティーの現在地をお互いの共通認識として一緒に作り上げることはすごく効果的になりそうな肌感があった。スキルマップ等でハード、ソフト、OSといった具合に種類別に砕いていくと全体感をつかみやすい。職種に根ざしたスキル、ビジネスとしてのスキル、その2つの土台となる共通基盤的スキルに分類することで視野が狭くならず、本当に自分にとって必要なものは何か俯瞰的に探すきっかけになると思われる。まだやれてはいないが、ハードスキル、ソフトスキル、OSスキルを構造化できればさらに良くなりそうな気がしている。
またそれらに対して好きか嫌いか、得意か不得意かでマッピングするのは良い手法だと思う。特に好き嫌いをはっきりさせることは非常に効果が高そうだ。好き、夢中になれる、苦にならないことを伸ばしていく方が筋がいいことを事前、または並行して伝えていくことが重要だと感じている(自己効力感につながる)
ロコガイドさんのこちらのワークを参考に実施
また好きなことや得意なことにフォーカスしたほうがいい理由としては、苦手を克服して強みに転換されたケースを経験、歴史的にもあまり例を見ない。成功している事例に共通しているのは強みを強みとして行動し続けたその積み重ねにあると思っているからだ。もちろん苦手な部分を補強する守りの視点は大事で、それを蔑ろにするわけではないし、遠くにある好きなことをやるために今苦手なことを伸ばすのだという中長期的な考えももちろんある。短期的な目線で場当たり的に好き嫌いを判断させないようにしたい。
このような現在の自分の状態をベースに、僕の古巣でもあり大好きなリクルートのWillCanMustのフレームワークをセットにしている。
自分のスキルや好き嫌い等の特性を明らかにしそれらを起点として、WillCanMustのような未来に向けた道筋を立てて地図化していくと、非常に納得感が高いように感じている。
また市場や会社から求められていることと、好きなことや強みとの関係性をいかに強く紐づけていくかが重要そうに見える。そしてこれはメンター側が繋げるというよりも、相手との対話のストロークのなかで自然につながって行くような行いにできると非常に効果が高いと思われる。「一緒に作り上げた」というプロセスへの認知が重要であり、これは主観と客観、自己効力感における達成経験と社会的説得に近い概念だと思っている。なのでメンターの固定観念で相手の目指す先を誘導しないように注意する必要がある。
上司やマネジャーによるメンタリングのケースで、相手の方向性に結論が決まっており、相手をそこに誘導させるケースが多い印象なので自己都合、ビジネス都合にしてしまわないように注意したい。それは結果として意味のない地図になってしまうからと考えているからだ。また都度見返して状況が変わっていないか、アップデートの必要ないか見返していくことでよくありがちな作って終わりな指針ではなく生きた指針として運用できそうだ。
ヒアリングと人間関係の構築
現在地を共通認識化することの他に最初に行う、または事前の関係性作りにおけるヒアリングが非常に重要だと感じている。課題や問題、もやもやした思考に対してのなぜ?を深ぼっていく。相手に直接課題を聞くのではなく、課題の根っこを明らかにしていく。これは何を問題や原因とするかによって解決すべき課題が変わってくるといった、プロダクトのユーザーリサーチの心構えに通ずるものがあるなと感じている。
相手のその思考を感じた背景=状況と、思想=その思考について相手の主体としてどう思うか?を査察的に観察していくイメージだ。
相手の主体的意見に対して、意見を正そうと答えを誘導したり、答えに対して批評するのではなく相手に感じたままを話してもらい、まずは一旦受け止めることが重要。断じて”こいつ分かってないから正しい考えを教えてやるか”的な思想はやってはいけない。(特にここは自分が優秀だと勘違いしているメンターやマネージャーが犯しがちな間違いだと思っている)
この時、相手の思考プロセスを俯瞰的に見て、どういう構造やロジックでその思考が生まれているのか洞察すること重要だと思われる。ここは認知行動療法の実践的なテクニック論にヒントがありそうだ。
またこれらを行うにあたって最も大切であり、基本となるのは相手と自分との関係における「心理的安全性」つまり本音を言い合える信頼関係を構築することだと思う。ここが築けていない状態だとこの先何を聞いたり言ったとしても右から左に流れてしまうきがしている。ようは暖簾に腕押し状態。
このアプローチに関しては現時点ではかなり解像度が荒く、自分の中で確立できていないのだが、「単純接触機会」「ノンバーバルコミュニケーション」「傾聴スキル」「自己開示」などがヒントになりそうで模索しているところだ。
今の時点で一つ言えるのは、シンプルに相手の成功のためにメンタリングしているのだということを強く意識できているかだと思っている。メンティーは真剣に自分の為を思ってくれているかどうか、違いを敏感に察知し見透かしてくるし、成人発達段階が上位であればあるほど比較的容易に相手の思考を意図的に誘導してしまえるんじゃないかと思っているからだ。
会社や上司からの外圧や、自身の収入やキャリアの為、自身の満たされない自己効力感を埋めるために等の自己中心的、もしくはビジネス的な目的意識が強い場合はそもそもメンターをやるべきではないし向いていない。これは相手の将来を左右しかねない行いだからこそ、その源泉はピュアな想いでありフェアであるべきだと考えているからだ。(これは僕自身の哲学)
成功体験 -主観的認知-
メンターの重要な役割として、相手に自己効力感を高めるという行いがあると考えているのだが、ここは僕の崇拝する元DeNAの坂井風太さんの考えが非常に納得感があった。
「マーケ施策のCPAをバナーのクリエイティブによって○○%改善した」、「ルールや原則がない状態からデザインシステムを作り上げた」等の施策の改善や取り組みが実現したという事実や実績そのものは自己効力感にあまり寄与しておらず、自己効力感にとって大事なのは、そのような施策改善や取り組みは自分にはできないと思っていたけどなんかできちゃいましたみたいな主観的な認知要素の方が強いという理論はすごく納得感が高い。
例えば「○○さん先週作ったこのドキュメンテーション全然解像度低かったけど、今週推敲したやつすごいクオリティ上がってるじゃん」みたいな感じで、できたことをただ褒める・評価するというのではなく、できなかった過去とできている現在の時間軸を評価してくのが重要だと考えている。
これを自分一人で気づき、認知していくのは難しく、だからこそ主観的認知をつけてあげる第3者としてのメンターが必要であり、重要な役割だと思っている。
代理体験 - 経験談の罠
自分自身の考えやスキル、過去の経験を話すこと繊細に取り扱うべきだと感じている。自分の体験談を伝えることで、視野が広がったり、視点が変わったり、アナロジーな思考が生まれる、また相手を鼓舞するといった、「あの人ができたのだから自分もできそう」と、代理体験における疑似的達成感を持つ効果は期待できそうである。
ただし相手の成人発達理論的な知性のステージや段階を理解した上で何をどのように伝えるかを意識する必要があるように思う。なぜなら相手が自分に対し過剰に評価を上げてしまい自己評価における認知の歪み、つまり自分下げを行ってしまう恐れがあるからだ。自分ではとてもじゃないができない、真似できないといったロールモデルストレスを生み自己効力感が低下する恐れがある。
メンターの役割は自分の凄さや背中を見せることで自分のようになってもらうよう奮起させることではなく、相手に「自分でもできるかもしれない」「自分でもチャレンジできるかもしれない」と内発的に自分ごとにする意識やチャレンジしようとする意識を生み出すことであると思っている。
なので基本的に脚色は一切せずに事実ベースで話し、中立的に評価した上で自身の経験を伝える。これを見誤ると意図しているしていないに関わらずマウンティング行為につながる恐れがあるし、現実的にメンターと自分とを比較し頭の中で虚構のギャップを作ってしまい、努力しても自分はできないのではないか、というようなロールモデルストレスに陥らないよう注意して伝えることが大事だと思う。この辺りはまだまだ僕自身課題が大きいと感じている。ついつい過去に想いを馳せた時に感情をいれてしまうからだ。
逆代理体験
経験談を伝えるにあたって具体的に何をどのように伝えるかというと、今のところ指針としてよさそうなのは、またまた登場する元DeNAの坂井風太さんが語られている「逆代理体験」。
自分を起点に話を構築するのではなく、相手を主役に話を構築する。「Aさんは今こんな悩みや課題を感じているが、その頃の僕はそんなこと悩んですらいなかった」といった具合に、メンターである自分も昔はできおらず、何かしら努力や行動をした結果「できないことができるようになった」という代理体験の逆転的な話の展開が有効そうに思える。
これは自分がよくウェビナーやミートアップに参加して「すごい人だからできたんだろうな」「強者の理論だな」と感じてしまい、勉強した気にはなったが特に自己効力感には寄与していないと考えたことがきっかけだった。(※もちろんウェビナー等の趣旨はメンタリングではないので批判ではない)
その後に自身で新しい領域に飛び込み、最初は何もわからずに上手くやれず、自分で調べて自分で考えて実際にやってみてを繰り返した行動の積み重ねとそれらの自己認知の方がよほど自己効力感につながったからだ。このプロセスを相手にメタ認知させることが重要であり、必要なのは「できなかった過去の自分」とそこから「できるようになった自分」とを繋ぐ経験やプロセスを伝えることであるように思う。
これから突き詰めていきたいこと
テーマ
自分のアイデンティティを拡張し実践していける人材育成
やったことがないことや今できていないことをできるかもしれないと思える、チャレンジしてみようと思えるような育成方針のもと、「自分の役割はこうだ」と役割や可能性を閉ざさず、常にアイデンティティを拡張していけるような人、つまりジェネラリストなデザイナーを再現性を持って導いていけるようにしたい。
理論
自己効力感に対する理論(成功体験、代理体験、言語的説得、生理的状態等)
成人発達理論(水平的成長と垂直的成長、発達の段階等)
経験学習理論(学習サイクル、リフレーミング、概念かと抽象化)
認知行動療法理論(認知の影響と歪みと再構築、自己助成アプローチ)
実践
N1に対するメンタリングの実践と機会を増やす
実践できる環境作りとコミットメントの構築(メンターをやれる環境と時間確保)
現場メンターと組織環境のヒアリングと分析(組織的なリサーチ)
ざっくり登り方
まずは僕自身が1:1でメンターとして十分にやれるための理論と実践を突き詰める(N1へのメンタリング型化)
組織装着を念頭に置いた標準化(チーム単位でのメンタリング標準化)
人事、文化、マネジメント、採用へのパッケージング(経営戦略レベルでの育成システム化)
まとめ
色んな企業を見たり聞いたりしてきたが、まだまだ属人的で感覚的にメンターやコーチングを行いそれらをマネジメントと称してふわっとやっているケースが多いように思う。(僕もまだ感覚の域をでていない)
きちんと理論を意識して実務として取り組みはじめて1ヶ月やそこらしかたっていないが(過去にやってはいたが感覚的だった)非常に学びを得ている実感がある。ありがたいごとにメンティーの方から感謝の言葉やこの先もやってもらいたいといった言葉もいただけている。(お金払ってでも続けて欲しいと言われたときはバンザイしながら部屋中走り回って昏倒した)
とはいえこれからこういった取り組みを持続的に行っていく為の事業化には程遠く、思想も理論も実践も完成はまだまだ先だと思う。もっと深く理論を学んで使える使えないを精査しないといけないし、実践を通して検証していかないといけない。そのための環境も今のままでは不十分なのでどこかで全力投球する場を作らないといけない。もしかしたら日の目を見ないまま終わるかもしれないが道中楽しんでいる最中だ。
僕は本当に「運」と「タイミング」が良く、20代半ばからはある程度スムーズにここまでこれた感覚ではあるが、過去に見てきたデザイナーの同士としての苦悩や辛さはすごく共感できるし、解消したい。自分ならもしかしたらそれらに対し一助になれるかもしれないと思っているし、ビジネス大好きマンとして経営上とても重要な行いでもあるとも思っている。
なのでこれからも学歴も基礎学習力も皆無なただの何でもない人だけど、
「だからこそできる育成はある」「誰もができるようにならないと意味がない」を心に秘めながら取り組み続けようと思っている。
最後まで読んでいただきありがとうございます!
以上が中間的な僕の学びとこれからについてのポエムでした。
もし今の自分に悩んでいる、正体不明のもやもやがあるなどのデザイナーの方、企業の方で人材育成やマネジメント等に課題がありosioに興味を持って頂けた方、ぜひTwitterからお気軽にDMください🫠
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