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7/25 第三回トークイベント回顧録

暦も八月に差し掛かり、三十度越えの暑さが日常的に続く時期となりましたが、皆様いかがお過ごしでしょうか。五日には芸工大の敷地内でビアガーデンも行われましたね。来年の同じ時期にもまた開催されるかと思いますので、その際はぜひいらしてくださいませ。
去る七月の二十五日に行われました第三回のトークイベントについて、今回もこちらの方に手記を書かせていただきました。挨拶もここまでに、本題の方に入らせていただきます。お付き合いいただけると幸いです。


今企画が始まってから、私は常に悠創の丘を強くフィーチャーすることを念頭に考えていたが、ここ三回のトークイベントは悠創の丘の話はもちろん、我らが芸工大についての興味深いお話を多く聞く機会にも恵まれていたな、と思う。そうして改めて、同じ上桜田の山々に属する芸工大と悠創の丘が、切っても切れない縁を持つ共同体なのだと実感した。そして今企画は『芸工大×悠創の丘プロジェクト』と銘打たれているように、悠創の丘はもちろん、芸工大の歴史や記録、そして芸工大生である私たちの活動もあってこそ成り立つものだと再確認する機会ともなった。

お話を聞かせてくださった木原正徳先生

今回お話を伺ったのは芸工大の開学当初から在籍し、今も芸術学科洋画コースで教鞭を執っていらっしゃる副学長の木原正徳先生。芸工大も開かれてから三十年が経つが、その期間ずっと、約三十代にわたる今までの学生たちを見てきたことになる。開学当時からすでに学生たちは自由にのびのびと学んでいたらしく、特にまだ学校の事務局が公営色が強かった頃に一期生の方々が起こした活動によって、芸工大がその運営において第一に掲げる理念である『公設民営』はより確実かつ強固なものになったと言ってもよいだろうと、私は考えている。

首都圏から遠く離れた地域で大学を創立する際に課題となるのがやはり「地方に学生が集まってくるのか」だろう。特に大学への進学は上京のきっかけとなるような人生にとっての大きなイベントであるし、実際に筆者の周りでも高校卒業からの進学をきっかけに東京(あるいは首都圏)に出たという人が多くいる中で、果たして美術系大学と言えど、本当に地方、特に東北の山奥の大学なんかに若者が集まるのか、と不安視された側面もあったという。その懸念からか木原先生も、(芸工大は)自分に教諭募集の誘いが回ってくるまでにたくさんの教員に在籍を断られてきたと聞いたことを話してくださった。その上正式に開校するまでは表立った広報が打てず、高校生への学校の周知は水面下で行われていた。そうこうしてついに受験シーズンが始まると、入校志願者の倍率は当初の懸念を払拭するように、低くても四倍以上、高いところでは十一倍もの倍率を記録した。まだ今よりも学科数が少なく、定員がそれぞれ四十名である中での出来事である。懸念とは裏腹に、それほど当時の高校生たちにとって芸工大は魅力的な場所として目に映ったのだろう。そうして芸工大は、華々しい門出を迎えたのである。

芸工大自体は悠創の丘よりも少し早くに誕生している。そして、これまでにも佐藤さんや船越さんも語った通り、悠創の丘の整備完了当時は芸工大と悠創の丘との交流が積極的に行われていた。
悠創の丘が絡む活動に積極的だったのは当時の学生さんも同じだったらしく、当時の環境デザイン学科(現在の建築・環境デザイン学科に相当)に所属していたリーダーを中心に、なんと既に1996年に『森づくりの会』が発足していた。当時は芸工大生を中心に百人規模の団体として活動していたようで、そのリーダーというのが、現在芸工大で教鞭を執っていらっしゃる渡部先生であるとのこと。


三度に渡って悠創の丘あるいは芸工大にゆかりのある方々から様々なお話を伺ってきたが、共通して言えるのは『芸工大と悠創の丘はずっと昔から結ばれ続けている場所であった』ことだろう。佐藤さんからも船越さんからも木原先生からも、芸工大とご自身、もしくは悠創の丘とその土地とのつながりを感じさせるエピソードをお聞きできたことが、私は強く印象に残っている。
今回木原先生は、芸工大と悠創の丘について「切り分けず全体が一つの学びの場として機能する」と仰っていた。芸工大は山形ならではの大自然の中に建つ芸術系大学であり、地域の人々のあたたかな想いによって支えられている。それこそが、この大学が山形という地域にある理由なのだ。このことは徳山理事長の創立の理念にもよく示されている。

この企画はそんな自然と地域のあたたかさを今一度振り返るものになると思った。現に今、私がこうして芸工大がこの場所にある尊さを再確認できたのだ。そうして周りからも教員からも学生からも、たくさんの人に愛され続けているこの大学で、もっと足を伸ばしてかつてあったような自由と創意を目指してみようとも思ったのだ。


執筆:文芸学科 小林

#東北芸術工科大学#大学#山形#トークイベント#悠創の丘


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