見出し画像

Never give up!! 研究も、プライベートも。~常に更新される学問分野、分子生物学~

今回は工学部生命工学科の吉野知子先生にインタビューしました。
分子生物学のおもしろさから研究とプライベートの両立まで盛りだくさんな内容になっています。ぜひご覧ください!


<プロフィール>
お名前:吉野知子先生
所属学科:生命工学科
研究室:生命分子工学・海洋生命工学研究室研究室


はじめに、分子生物学とは?

―今日はよろしくお願いいたします。
 
よろしくお願いします。
 
―先生は分子生物学の授業を担当されていますが、これはどのようなどのようなことを学ぶのでしょうか?
 
生命工学科では「分子生物学Ⅰ」で、主に原核生物を中心にして生命現象や分子メカニズムを理解するという基本的なところを学びます。それを踏まえて、「分子生物学Ⅱ」では、真核生物、特にヒトの病気のメカニズムを理解するための基礎知識を分子生物学的に学びます。
 この学問分野は化学や物理などの学問に比べると比較的新しくて、まだまだ分かっていないことも盛りだくさんです。例えば、「THE CELL」という本を教科書としても使っていますが、こんなに分厚いものが結構な勢いで更新されていて、すでに何度も改訂版が出版されています。

1~3版の更新に比べて、4から5、5から6の更新のスピードがとても速いんですよね。常に新しい分野であるということは、楽しいなと思いますしそれがモチベーションでもあります。しかし、実際には最新の研究結果はNatureなどの雑誌で発表され、それが様々な議論を経て正しさが検証されて初めて、教科書に載るのですよ。
情報がものすごく早く蓄積されてアップデートされている分野だと皆さんに体感してほしいです。

壁を作らずに興味を持ってみよう

―最新の雑誌は英語で書かれていますが、情報収集をするために文系科目である英語についても力を入れることが大切になるのでしょうか?
 
そうですね~、しかし、文系理系とかで分けるのではなく、もっとトータルで学問を包括的に理解することが大切だと考えます。例えば昨今の新型コロナウイルスについて、どうやってウイルスに変異が入るのだろうかというのは文系理系問わず全員が理解してほしいことであります。ぜひ中高生の皆さんにも壁を作らずに興味を持ってほしいですね。
 
 英語に関して、コミュニケーションのツールにも学ぶツールにもなるのでぜひ力を入れてほしいです。しかし、今は翻訳技術の性能がものすごい勢いで向上していますよね。日本では日本語訳された参考書が割と早くに出版されるので日本語でもある程度は学べてしまいます。英語でなくても、難しい世界最先端の学問が学べるのはすごくラッキーな点でもあるし、逆に英語に慣れるスピードが遅くなってしまう欠点もあると考えます。

工学部で「生命」を学ぶ

―吉野先生の研究室では「がん」の研究もされているとお聞きしました。医学部ではなく工学部でがんの研究をする特徴は何かあるのでしょうか?
 
工学部なので応用する方面での研究を主軸としています。基礎研究で得られる知見についても知りたいですが、それを知るためにはどうしたらいいのか、というようなプロセス的なことも調べています。少しずつ解明している知見を診断や治療に役立てられるよう、情報提供するとともに、研究するための技術も作っていきたいです。
お医者さんは一人ひとりの患者さんに向き合うけれど、それに対して我々は、工学的なアプローチによって一つの技術で何百人何千人という規模の人々に利益をもたらすことができます。これが工学部のすごく魅力的なところだと思いますね。

Never give up!! 研究も、プライベートも。

ー研究者としてのこだわりや大事にしていることは何かありますか?
 
基本の性格が、「Never give up!!」なんです。みんなが諦めるところも諦めずにやるという精神でやっていて、しつこいという風にも言われます(笑)。諦めずにやり続けるとか、誰もやらない、難しいところにあえて挑戦することが研究のモットーです。

人生設計をしていく上で、女性なので結婚して子供産んでとかも考えるじゃないですか。実際に、私はドクターを取った後に結婚しました。そのあと早稲田大学で助手をやって、子供を産んだりしつつ、農工大に戻ってきました。一番悩んだのは修士1年の時に海外のベンチャー企業でインターンシップをしたときに、研究をするのであればドクター (博士号)をとる必要がある、と感じた時くらいで、後は悩まずにここまで研究してきたという感じです。
 
 本当に結果論なのだけれども、私はドクターに進学したことはとても良い選択だったと思っています。というか、私がドクターをとった時なんか当時は進学する女子学生はもっと少なかったし、結婚とか大丈夫?、出産とか大丈夫?って結婚や出産の時期についての心配も今より大きかった時代でした。私は結婚後に二人子供を産んで、10年くらい空いてから三人目を生んでいて、三人子供がいます。子供はすぐに大きくなるし、大きくなった後の人生の方が長いと思います。子供が成長して、ある程度自分の事ができるようになるくらい先のことまで想定すると、その時にちゃんとした仕事や独自の研究課題や、その研究を展開していける能力を持っているというのはすごく重要だと思いませんか?そういう能力をつけていれば、どこに行ってもやっていけるだろうし、子供のお迎えで早く帰っても、罪悪感が無くなるだろうと思います。好循環を迎えられるっていうことを考えると、女子学生こそぜひドクターを取得してほしいと思います。
 
ドクターを取得するのはたかが修士2年+博士3年です。博士課程の3年っていうのは長い人生を考えるとほぼ、誤差だよっていう風に思います。学生にとってはこの3年が誤差に思えないのも分かるけれど、ぜひ自分に投資と思って挑戦してほしいと思います。
 
農工大は全体的に他の大学に比べて女子学生が多いからドクターコースに行く女子学生も多い方ではあると思うけれど、日本全体で見ればまだまだドクターを取得した女性は少ないです。
 
自分の人生は一回しかないので、欲張りに!結婚もしたい子供も欲しい、でも研究もしたいというのは人生設計しながらやっていけば叶うので、ぜひ早めに考えてほしいですね。
 
―女性の先生だからこそのお話を聞くことができて光栄です!
 
農工大の女性研究者はアツい!!というか (笑) 色々なケースがありますから、ロールモデルを見ながら自分に合ったモデルを想像していくと良いですね。

ー本日はありがとうございました!

吉野先生の「先生大図鑑」はここまで!
最後まで読んでいただき、ありがとうございました。

文章:みかん
インタビュー日:2022年4月5日

※授業の形式はインタビュー当時と変わっている場合があります。何卒ご了承ください。
※インタビューは感染症に配慮して行っております。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?