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[言葉] ジャズスタンダードってなに

ジャズの世界ではしばしば「スタンダード」という言葉が出てきます。
「ジャズスタンダード集」という本もたくさん出てますね。

このジャズスタンダードという言葉、いまでは「ジャズに於いてよく演奏される曲目」くらいの意味で使われておりますが、本来の意味はもう少し狭いのです。

「スタンダード」ってなんでしょう?
「標準」?

もともと「ジャズの曲」というのはありませんでした。
1900年初頭に於いてジャズ演奏家たちが演奏していたもので有名なのは、ブロードウェイのミュージカルで使われた曲だったりしますね。
娯楽の少ない時代ですから現在のようにオジサンと若者で聴いている音楽が違うということも少なかったようです。
当世の流行歌というのは「老若男女すべてが等しく知っていて口ずさめる」という状況だったそうで、それらを「スタンダード(標準)」と呼んだそうです。
とうぜん、ジャズマンたちもそれらの歌を歌います。

そのあと、活動写真(映画)というものが流行します。
最初は音楽なしだったようですがすぐに内容に沿った音楽が作られ、いっしょに流されます。これらも、ジャズマンたちが模倣して演奏します。
ジャズの歴史はカヴァーの歴史と言い換えても過言ではありません。

さて、これらの音楽に共通するのは「歌詞があり、歌がある」ということです。
もちろん例外もありますが、おおむね、「歌」があるのです。ヴォーカルものです。

現代ではジャズというと歌の無いインストものを多く浮かべる方も多いですね。
もちろん現代でもたくさんの優れたヴォーカリストがいますが、ほかのジャンルと比べて圧倒的にインスト率が高いのがジャズの特徴です。
ゆえに、一般的に広まらない/BGMなどでよく使われるのですね。

さてここで現代における「ジャズスタンダード集」を紐解いてみるとその半分以上がインストの曲(器楽曲)となっております。
インストとして作曲、発表されたあとで、歌詞を付けて歌ったという例はたくさんありますが、そのほとんどがインスト曲なんですね。
これらは、ジャズマンたちが自身の興味に沿って構成していったもので必ずしも歌は付属していませんでした。
こういったものは元来の意味で言うと「スタンダード」とは呼ばず「ジャズチューン」と呼ばれます。

ですので、「ジャズスタンダード」というとそれは「当世の流行『歌』」なのですね。
ものすごく大雑把に言うと、ジャズとは「当世の流行歌をジャズマンがカヴァーしたもの」と言い換えることができます。

それから後の時代に、ジャズとして作曲されたものが出てくるわけですね。

京都在住のサックス/フルートプレイヤーです。 思ったことを自分勝手に書いていきます。 基本、内容はえらそうです。