単独ライブを配信で見る②-蛙亭単独ライブ「ネコの日イヴ」-

蛙亭を知ったのは2018か2019かのM-1予選だと思う。珍しいコンビ名(漢字2文字。最初は「かわずてい」だと思った)だし、カエル好きだし、というのでGYAO!の予選配信で見て、男女の配役を入れ替えるコント漫才で、ネタ中の二人の距離感バグってんなーと思った記憶がある(一時期コウテイがやっていためっちゃ顔を近づけるネタ入りに対して感じるゾワゾワ感と同じ)

そのあと少しくらいyoutubeでネタ動画を漁った記憶があるんだけどその頃はそこまでハマらず(中野君が犬役のネタとかを観た気がする)だったけど、去年の頭あたりからゴッドタン等で注目芸人として東京03飯塚あたりが紹介し始めたきっかけで「マッチングアプリ」「配達ピザ」あたりの賞レースで披露しているネタを観て、かなりヤバいコント師なんだなということを知り(それまで関西芸人というのもあって漫才メインだと思っていた)、ゴッドタン・ネタギリッシュNIGHTで披露した「自首」のネタでドはまりした。

「自首」のネタは正直去年観たネタの中では断トツ1位のネタで、下ネタ×狂気というもともと爆発力のある劇薬に、中野君の演技が合わさり(岩倉はお世辞にも演技が上手くないので、ちょっと戸惑う常識人役かぼそぼそ口調のサイコパス役が合っている)、奇抜な設定による文学味も重なって本当に素晴らしいコントだった。あのレベルのネタにもう一度巡り合いたいと思って、それ以来蛙亭はチェックしている。ところどころしんどいながらもオールナイトニッポンiも聞いている。

さて、今回初めて無限大ホールでの吉本芸人の単独ライブというものを観たが、先週の空気階段の単独やずっと追いかけている東京03の単独と比べると、手作り感、粗削り感が強いんだな、というのが正直な印象。1時間というライブ尺で、長尺ネタもないので、ちょっと物足りないなあと感じてしまった。ネタの設定や場面の着想がピカイチな分、コントとしての構成を肉付けして作りこんでいく過程が得意ではないのかな。(白黒アンジャッシュでも、「牛丼」のオチが未だに決まっていない、って言っていたし)

ネタとしては、特に前半のコント2本が粗削りながらも今後ブラッシュアップすればどんどん面白くなりそうなネタだった。ちなみに漫才は距離感の近い男女配役入れ替えコント漫才形式で、中野君の立ち位置が込み入った構成だったので面白かった。

蛙亭のコントは、概ね2つのパターンがあると思っていて、一つは最初のバラシが強烈でそこからそのバラシを軸に進んでいくタイプ(「自首」「マッチングアプリ」ENGEIグランドスラムとか有田ジェネレーションでやっていた「電車」等)。もう一つは僕が勝手にタランティーノ作品になぞらえて『フロム・ダスク・ティル・ドーン』形式と呼んでいる、中盤で展開があり得ない角度の切り返し方を見せるタイプ(「宅配ピザ」、「ポイ捨て」「マイナンバー」白黒アンジャッシュで児島を困惑させていた「牛丼」等)。蛙亭の強ネタはどちらのタイプであっても、場面が転換する箇所の最大火力が強烈で、終盤やや尻すぼみになるパターンも多いが有り余る余熱で補っている。

今回の単独ライブでいうと、オープニングコントを除いた1本目で披露した墓場のネタ「なんナン?」が後者、2本目の新幹線のネタ「僕っす!」が前者寄りだけど後者にも振れるポテンシャルのあるネタだった。特に新幹線のネタの「こんなに気になるのにさぁ、掘ったら普通なんだよ」というセリフはかなり味わい深く、全編通して中野君のノンバーバルな部分で笑いを取る場面が多かった今回の単独の中でも際立って印象に残るフレーズだった。正直このセリフがあっただけでも今回の単独を観る価値があったと思っている。Dr.ハインリッヒがM-1の2回戦で放った一撃必殺「伏線を回収しない物語もあるんだよ」に近しいものを感じるキラーフレーズだった。

キングオブコントを筆頭とした今年の賞レースはこの2本で行くのか、新ネタを作るのか分からないけど、今後の磨き上げが楽しみ。キングオブコントの場合、決勝に行けたとしても三村の壁があるのと、シュールに触れすぎると松本から「昔の俺だったら好きだった」と言われてしまうのが苦しいところだが。。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?