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日記138:「たぶん10年ぶりの県立博物館へ」

Let's Go!(再生されるunwelcome school)

そんなわけで、10年ぶりに行ってきた。
片道約ホニャララ時間と母に聞いていたので、時間だとか大きさだとかいう不可視な概念の把握がてんで苦手な私はぐっと身構えていたのだが、存外に速く着いて驚いたりしていた。

入り口、意外と緊張していない。母が言うには駐車場はだいぶ空いている方らしかったが、私としてはそれよりいくつか並んだ学校の遠足バスの方が大変な気がかりだった。私は子どもが苦手である。子どもでなくとも大勢が近くにいるのは苦手だ。
入館の際に障害者手帳を出し、ありがたく入らせてもらう。すぐ目の前にクソデカマンモスかなにかの化石があるところ、ゆるやかな坂道で構成されていたり、一等初めのブースが宇宙コーナーだというところなど、すべて記憶通りだった。
私はおのれでも不思議なのだが、全体を通した記憶はゴミカスなのに、一部一部のパーツはどうもわりと緻密に脳内で構成されているようなのである。アファンタジアを疑ったときもあったが、もしかすると違うのかもしれない。

宇宙のコーナーに30kgくらいの質量が体感できる隕石が置かれていて、試しにやってみると、昔はまったく浮かなかったそれがわずかに台座から離れた。母も試してみるというので、肩やら腰やらを痛めないかと心配になった。
少し奥に行ったとき、不幸なことがあった。体操着を着た幼児が大量に同ブースに入ってきて、慌てて奥の方へ逃げ込んだ。時間を潰すのに木星の解説のコーナーを母と見て、動悸をさせながら、木星はガスでできた惑星なのだと言うと、母は「お、おう…なんでも知ってるな…」と引き気味に言った。西尾の伝説シリーズで得た知識だった。

その後も鉱石が並べられたコーナーに行って、そういえばミラン・ケストレルが宝石を食べたことがあるという話をしたりした。花も食うしなんでも食うんだな、ブシ…と母は言った。ブシというのは鬼伏千隼を縮めたもので、母は剣持のことは刀也と呼び捨てにするし、星導ショウのことはるべと言ったりする。ましろくんのことはましろくんというので甚だ謎である。
化石のコーナーには床がガラスでその奥に色々展示してあり、母がヒエ…と言いながら早歩きで過ぎ去る横を、いわゆる地雷系ファッションの可愛らしいお姉ちゃんがゆるやかに歩き、奥の方ではやはり若い女性が2人でキャッキャしながら見ていて、最近の博物館の客層に面白さを感じた。こんなにデカいアンモナイトがいるのかとたまげたりした。

所々で死にそうになるので椅子を探しながら絶え絶え歩く。なんと今日、夜なかなか寝付けず3時間くらいの睡眠時間でやってきたのでまあまあ微妙なコンディションだったりした。
天井から吊るされていたのはなんだったか、ウシマンボウ?ウママンボウ?視界の端々でスマホを片手に撮影している人々を見て、果たしてこの博物館でこれは怒られないのか?と冷や冷やしたりした。

動植物のブースで子どもとの邂逅を果たし(四度目)、今度は暗闇のコーナーに逃げ込む。腰を屈めに屈めてレンズを覗いてムササビを探す。
この辺で心身に限界が来たのでよく覚えていない。早足で館内を歩き、とりあえずなにか飲みたいと母が言うので確かにそうだと出口を探し、迷い、そこでなにがどうなったのかわからないが、空いていた喫茶コーナーでジェラートとメロンソーダを食んだ。たぶん最後に外食に成功したのは昨年の夏くらいだったような気がする。ドリンクバーはもういつごろに使ったのが最後か覚えていない。ジェラートはバチクソうまかった。どうして入店できたのか、よくわからない…。

ところで、私には日常生活を送る上で致命的なことがある。いやまあ、そりゃあいくつもあるのだが。
私は階段が使えない。昇れないし降りられない。手すりがあればしがみ付くようにしてゆっくり昇降できるが、それでも段差の幅が狭いと死にそうになる。
喫茶コーナーを出て再度出口を探すのだが、わからない。あるにはあるが、しかしそちらは野外コーナーである。一度そっちもまわろうとしたが、でっけ~蜂が2匹いたので逃げ帰ったわけだった。
どう歩いても帰り道がわからない。出口はなんと、2階にあるのである。ここまで来たのはエレベーターを使ってのことだったが、肝心のそれが見つからない。階段ならあるのだが。
母が先頭を歩いてくれるのだけれど、しかしながら、そこで園児の群れにぶつかってしまった。頭を下げつつ列を横切ると、続いて小学生か中学生かの集まり。その先はあんまり覚えていない。

楽しかったなあ、と思った。母にも何度もお礼を言った。
半分も見られなかった気がするが、しかしながら、私に大事なのはそこではなく、こうも久々にデカい博物館なぞに入館して少しでも見て回れたことが大きかったのだ。
成功体験、である。しかも小さな外食もできた。
またいつか行けたらいいと思う。行けるであろうと思う。

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