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小説✳︎「月明かりで太陽は輝く」第11話

佳太ー思い出の物

姉さんが急に
「今度、事情があってお店のお客様の 
猫をちょっと預かるんだけど良いよね?」
と聞いてきた。
この部屋でも以前
一年程、保護猫を世話したことある。
「別に良いけど」

来週末、連れてくるとの事で
ちょうど僕も休みだし、手伝えると言った。
僕と姉さんは
別に仲が悪いわけでもないが
流石に、男女の姉弟だと
家でもそんなに話はしない。
お互い勤務形態も違うし
すれ違いも多いから。
どんな経緯で猫を預かるか
飼い主は誰なのか、全然知らず
当日、僕が餌と猫砂を
買いに行っている間に
猫と一緒に飼い主が来ていた。

ドアを開けた途端
僕は本当に、
心臓が飛び出るくらい驚いた。
お互い名前を叫んでしまった。

部屋の中に、結里子ちゃんが
猫と一緒に座っていた。
猫の飼い主が、結里子ちゃんで
姉さんのお客だったなんて。

猫のトイレやら
セッティングした後
僕の作った食事を食べながら
三人で色々話した。
こんな事ってあるんだな。
その日の夜は
なんだか眠れなかった。
猫が僕のベットに潜り込んで
眠っているからだけじゃないよな。

次の日から
結里子ちゃんと会う時は
必ず猫の様子を話すようになった。
会えない時もLINEで
写真を送ったりした。
このまま、友達のままでも良いから
いつも笑っていてくれてたらと
願うようになっていた。
「なかなか新しい部屋が見つからない」
結里子ちゃんがLINEしてきた次の日。

姉が結里子ちゃんに
猫の様子を見においでと
声をかけたらしい。
その日は仕事で帰りが遅く
結里子ちゃんとは会う事が出来なかったが帰ったら姉が
思いもよらない話をしてきた。

なんと結里子ちゃんが、うちのマンションに引っ越しすると言うのだ。

姉さんとの繋がりに、驚いただけでなく
なんだ、この展開は……
♢♢♢♢♢
次の週末、早速引っ越しとなった。
僕はたまたま休みだったのと
奏が、軽トラックを借りてくれる事になり、一緒に引っ越しの手伝いをする事になった。

急な引っ越しだったので処分するもの
持っていくものと整理しながら
荷物を運んだりしているうちに僕は
軽めの段ボールを、クロゼット奥から
運び出した。

「結里子ちゃん、これは?持っていくもの?」
「あ、うん…どうしようかな?」
「使わないもの?」
「うん、そうなんだけど」
「迷ってるなら一応持って行けば?」
「いや、処分してもいい」
「いいの?中身見てもいい?
ゴミ袋に入れるよ」
「う、うん」

箱を開けてみると
そこには色違いの生活必需品。
全てペアだった。
僕は紘太さんとお揃いで
揃えたものとすぐわかった。

「結里子ちゃん……
無理に処分しなくてもいいよ。
持っていこうよ」

その時、ぽたぽたと
フローリングの床に落ちるものがあった。

ためらいながらも
僕は思わず、彼女を抱きしめていた。
「我慢しなくていいよ。
無理しなくてもいいよ」

僕は大切に、その荷物を
車に積んだ。
そのあと僕たちは、作業をすすめ
半日で荷造りを終えて
僕のマンションに到着した。

先に歌織ちゃんと姉さんが
結里子ちゃんの部屋で待っていて
掃除を済ませてくれていた。
大家さんの所へ、挨拶に行くと
「すぐ決まって、助かりましたよー」と
とても喜んでくれた。

不意に、抱きしめてから
ちょっと目を合わせるのが
恥ずかしかった。
彼女はどう思っただろうか?
あの時の柔らかい感触は
儚げで、本当に
守りたいと思ったんだ。
♢♢♢♢♢
僕の部屋の下には 
結里子ちゃんが住むことになった。

猫が、もう僕のベットに入ってくることも無くなった。
寝付けないのは
猫の居ない淋しさか?
下から感じる
結里子ちゃんの気配?
姉さんと結里子ちゃんで決めた事だけど
こんな感じになるとは。
少し寝不足になるけど
毎朝,ほぼ一緒に通勤する喜びの方が
勝って来るよな、なんて思ってる。

ただ、あれから
僕の気持ちを結里子ちゃんは
どう感じているのかな?
とか
先日抱きしめてしまった事を
どう思っているのかな?
とか。
考えて出すと眠れない。

全く中学生みたいな
恋……だよな。

そんな時に、猫の写真と一緒に
結里子ちゃんよりLINEが届く。

そこには、大地さんの文字。
この人は、結里子ちゃんの
支えになっていると思うと
なんとなく気になってくる。

そして、この人は
姉とも繋がっていた。

時々、いつもは買わないような
惣菜を並べてる時
「大地さんから勧められたのよ」と
姉が言っていた。

結里子ちゃんからのLINEは
うちの目の前の公園で
大地さん親子が、遊びに来るので
付き合ってくれないか?との事。

姉も誘って
「ダブルデートしよう」って。
どういう事かと思ったけど
さりげなく、そこは流した。

LINEグループを作り
日程調整。
三週間後の土曜日になった。
その日は8日だけど、良いのかなぁ?

この日は、うちで
昼ごはんを食べることにした。
僕は、子どもの好きそうな
メニューをネットで調べては
結里子ちゃんに送って、話し合って決めた。
朝の通勤の時に、声をかけてみた。
「結里子ちゃん、お墓参りどうする?」
「あ、気がついてた?」
「もちろんだよ」
「どうしょうかな?」
「行かない選択肢は無いよね」
「うん……」
「車出すから、朝いちで行って
帰りはスーパー寄って行けばいいよ」
「忙しくなっちゃうけど、いいの?」
「全然!OKだよ」


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