ロットゲイムの物語5:お嬢様と元海賊

そんなこんなあって一年ほど幸い、あの騒ぎからは忙しいけど、楽しい日々だった。

お嬢さんの仕事を手伝ったり、婆やの仕事手伝ったり。基本はそれの繰り返しなんだけど、たまにのお休みには、ちょっと遠出してウルダハとかグリダニアにもに行ってみたり。リムサロミンサで過ごし慣れてると、他国の風景ってだけで新鮮。
お休みで来たはずなのに良さそうな商品探しちゃったりして、そのまま仕事になることも割とあったけど。気になる品物があると調べずにいられないのはお嬢さんの…というか商人の性なんだろうね。

初めて会った時のフワフワした感じは今でもあるのに、商人スイッチ入るとちょっとキリッとなるのが面白い。
それこそ、フワフワっとはしてるけど、初めて会ったころに比べたら随分としっかりした…というか頼れる雰囲気になったよ。いろんな事があったからお嬢さんだってそりゃ、変わるよね。

なによりお嬢さんが変わった事と言えばなんとプロポーズされて結婚しちゃった事!アタシは赤の他人の護衛なのになんか凄い嬉しくて。婆やもめちゃくちゃ、喜んでた。アタシなんかよりずっと長くお嬢さんを見て来ただろうからそりゃそうだろう。

あの、嬉しい気持ちってのは不思議な気持ちだね。いや、嬉しいのは間違いないけど、大昔からの知り合いとか、家族、とかそういう関係じゃなくて雇い主と護衛ってもっとザックリした関係でも、こんなに嬉しくなるんだってのが不思議だったんだよね。

ちなみにお相手はと言うとアタシがお嬢さんをゴロツキから助けた時に駆けつけてお嬢さんが拉致された時にも協力してくれてた、ヒューランのイエロージャケット。
なんでも、初めて見た日に一目惚れしてたらしい。お嬢さん可愛いから無理も無い。拉致事件の後、何度か家に様子見に来てくれてたんだけど…新月がボソッと、恋の力は偉大って言ってたのはやっぱりそういう事だったんだね…。

正直、どこの誰だか分かんないようなやつが求婚して来たら、叩き返したと思うけど彼なら…信用できるかな。多分婆やも同じ感じで。彼じゃなかったら、許しませんって言ってそう。お手伝いの婆やっていうかもう、実のお婆ちゃんとかお母さんみたいだもんね。

式にも参列させてもらったんだけど、花嫁衣裳のお嬢さんが可愛すぎてアタシまで惚れそうだったよ。お嬢さんが結婚したのめっちゃ嬉しいのに花嫁衣裳のお嬢さん見たら新郎に妬ける程度に可愛かったんだから。

新郎さんは婿さん、として家に来たから若旦那と呼ばせてもらってるけどまだ、呼び慣れないみたいで呼びかけるたびにちょっと、恥ずかしそうにしてて可愛らしいと思っちゃう。なにせ、普段しかめっ面というか目つきがキツめの顔をしてるんだよ、若旦那。そんな人が、恥ずかしそうにしてるのって、なんか可愛く感じるものっしょ?

結婚した後、若旦那ー名前はアルフレッドーはイエロージャケットを辞めてお嬢さんや旦那がいた頃からの人たちから仕事を教わってる最中。

元がイエロージャケットだからなのか真面目で勤勉なんだけどちょっと融通が効かないとこがあるって昔からいる仕事仲間は言ってた。そこが良いトコだけどもうちょい、頭を柔らかくってよく言われてるみたい。

本人もその辺、なんとなく分かるらしいんだけどつい、真面目で誠実すぎる部分で行き詰まるらしい。もちろん、真面目で誠実ってのは何につけても大事だけど多少柔軟でないと、正論だけじゃ話が進まなかったりもするし。

お嬢さんと並んで頑張ってるのを見るに、バランスは最高じゃ?と私は思っちゃう。なにせお嬢さんはしっかりしてるけどフワッとしてるもんだから。若旦那のカチッと具合がいい感じの刺激になってるなって。逆にいえばお嬢さんのフワッと具合が若旦那のカチカチをいい感じに和らげてくれてると言うか。

いい夫婦だと思う。お互い、それを分かってる節があるみたいで、行き詰まった、とか、悩ましい事があると、意見を交換したりしてるみたい。

アタシは変わらずお嬢さんの護衛をしたり留守番で婆やと家事したり。(ちょっと料理も上達したんだよ!)時々、商人の真似事したり。

霊災の復興もしっかり進んで来てて前よりも冒険者達が活発になった。

しつこく、侵攻を狙ってるぽいガレマール帝国と各地で時々、騒ぎを起こすサハギンとかの獣人って呼ばれてる連中が気にはなるけどいたって落ち着いてはいる、と思う。

冒険者達が活発になるっていうのは経済的にも結構影響しててお嬢さんのお仕事はお嬢さん達の頑張りもあって繁盛してた。

あれから絶影とは会ってない、と思う。なんで、思う、なのかというとなにせ素顔を知らないからもし、遭遇してたとしてもアタシ達のほうはアイツなのかどうか、分かんないんだよね。

たった一年ほどだけどいつの間にかアウラ族の冒険者や商人がエオルゼアに入って来ててそこまで、珍しい種族じゃなくなって来たのも大きいかも。前なら、街中で角が生えたやつ見かけたらひょっとして?っと思えたけど今はそうじゃない。

そうそうアウラ族が増えてきてアタシがびっくりしたのはその男女の体格差。アタシらルガディンは男女ともに大柄で男の方が大きいとはいえ極端な身長差って無いしヒューランも、ミコッテもララフェルも、エレゼンもそこまで男女での差って大きく無い、と思う。

ところがどっこいアウラ族の男女ってのはびっくりするほどの差で。夫婦とかで歩いてるのにどう見ても親子にしか見えないんだよね。男のアウラの腰あたりに女のアウラの頭がある感じ。角もあるし尻尾ある身体的特徴は似てるけど、体格差があまりにあるから、初めて女のアウラ族見たときはまた別の種族かと思ったくらい。

多分、他の連中も初めてアウラ族を見た奴らは同じ感想を持ったんじゃ無いかな。すでに、みんなそういうもんらしい、と適応しちゃったけど。

そういう変化も見つつそれでも毎日、忙しいけど幸いなことに平穏で楽しく過ごせてた。

そんな日々を送っててふと、ちょっとだけアタシも何か変化をしたい…変わりたいなって思うことが増えた。不思議なもんだよね。お嬢さんは結婚ていう大きな変化があって身近な、住んでる場所にも明らかに変化が起きてる。アウラ族が入ってきたり冒険者が活躍することが増えたり。復興進んだり。

それをずっと側で見てて何だろうアタシはどうすんの?って気持ちになった。焦ってる、のとは違うと思うけど。結婚とかも興味ないような女だしね?

アタシがそんな事を1人で考え込んでるのを婆やは気がついてたらしい。留守番を任されてた日2人で、食後のお茶をしてた時だ。

「…ロットゲイムさん。飛び出したいなら、それでもいいのよ…?」

思いがけない言葉に素で、えって声が出た。飛び出したい…。アタシ、飛び出したいと思ってたのか。

「ここずっと、何か考え込んでるいるでしょう…?…ロットゲイムさんの生き方はロットゲイムさん自身が決めて選ぶものよ…。…時代が変わってきたんだもの…あなたの心も、そう。」

「婆や…。…うん、何だかね置いてかれてるような気持ちになっちゃって。…でも、どうしたいのかはよくわかんなくてね。漠然とこう変わりたいなって気持ちが…。あー…ごめんわかりづらいよ。」

「…大丈夫。分かりますよ。…今のままで良いのかしらってどこかで感じてるのね…?」

「あ〜うん、多分そんな気持ち。」

「…あなたは優しい人ですから…分からないフリを、してるのかも…。私やお嬢さまが心配であなた自身の欲求を見てないことにしているかもしれないわね…。」

責めたり追求したりするような声じゃない。静かで優しい、諭すような声と顔で婆やが言い聞かせてくる。なんだろう、ぐさっと来たよ。悪い意味じゃないけどね?自覚させられた自分の願望にビックリしてぐさっと来た感じ。

「…そっか…。ここに居るのも大好きなのに…どっかで冒険者に憧れたんだねアタシ。」

行き交う冒険者達を眺めるの、好きなんだけど…それは彼らが楽しそうで、活き活きしてるからだと思ってた。それもあるんだろうけど、知らないうちに、切望の目で見てたんだね…。

ただ、冒険者になるって事はつまりお嬢さんや婆やをこの家に置いてっちゃう事になるしここに居るのが大好きってのを否定してるような気持ちにもなっちゃって…。アタシを大事にしてくれる婆ややお嬢さんを裏切っちゃうんじゃないかって…。そんな気持ち。

「…ロットゲイムさん。…ここから出て行く事になっても…会いに来ることもできるのよ…。」

「…そう、だよね…でも、なんでだろう出て行くよってお嬢さんに言ったらどんな顔するかなって結構怖いや。悲しませるのも嫌だし…怒らせちゃうのも嫌だし…。」

「お嬢さまのことですから…最初は悲しそうになさるかもしれません…けれど…あの方は、優しくて聡い方です…あなたの気持ちも…きっと理解できるでしょう…。」

「…お嬢さんは、頭がいいもんね。ちょっとフワフワしてるけど…。お嬢さんにも話してみる。…ありがとね、婆や。一人で悶々としちゃうとこだった。」

「…無駄に長生きしていませんからね…。」

ウフフ、と婆やが笑う。思えば、お嬢さんが悩んだりしてても婆やは真っ先に気がついて相談に乗ったりフォローしてりしてたっけ。人の微妙な変化とかに気が付ける人なんだろうけどやっぱ敵わないや。

夜になってお嬢さん夫妻が仕事から帰ってきた。一緒に食事をして順番にお風呂を済ませて寝る前にすこしノンビリ過ごしてる時。思い切ってお嬢さんに切り出してみることにした。

「…あのねお嬢さん。」

婆やの淹れてくれたお茶を飲みながらお嬢さんがなぁに?と言いたげにキョトンとしつつこっちを見た。ちなみに、婆やはお先に寝ますね、と既にリビングには居ない。多分、アタシが例の話をするのを分かってて、邪魔しないようにって席を外してくれたんだと思う。

「…あのね、アタシ、冒険者になろうかなって思ってるんだけど…。」

「…え!?…ええと、それは…ここから居なくなっちゃうって事ですか…?」

予想してた通りというかびっくりした後に物凄い寂しそうな顔になる。この顔を見るのは正直、すっごい辛い。笑顔は本当に可愛い人だけど寂しそうな顔は本当に胸をえぐるような顔なんだよね、お嬢さん。それだけ素直に顔にでるんだろうけど…。

お嬢さんの隣に座って居た若旦那のアルフレッドも酷くびっくりした顔をしてた。ただ、何も口には出さなかった。思うところも色々あるだろうけど。

「…う、うん。いや、あのね。ここに居るのが嫌になったとかそういう事じゃ…。」

「それは…分かってます…。えぇと…。…行っちゃ嫌とも思うんですけど…でも、ロットゲイムお姉さんがしたい事があるなら応援したいし…でも寂しいですし…。」

自分の考えを纏めようとするようにお嬢さんがお茶の入ったカップを見つめつつちょっと小さな声で零す。立派な大人になってるんだけど、こういう時のお嬢さんは小さな女の子みたいだ。

「…うぅん…凄く寂しい…。でも…でも…。」

「…ロットゲイムさんまた、なぜ急に…?」

アルフレッドの若旦那がモゴモゴし始めてしまったお嬢さんに変わってそう、聞いてくる。急に言いだしたってそりゃ思うよね。アタシ自身が自分の欲求を分かってなかったんだし。

正直に今、身の回りで起きて居る変化に感化されたんだ、と応える。変わっていく世界を見ててアタシも、って思ったんだって。

「…なるほど。」

「…目紛しく、動いてますものね。リムサ・ロミンサも復興して、以前より賑やかになりましたし…。」

「…でしょう?…人の往来を見ててさアタシも…あの波の中に居たいなって思ったんだ。…ここに居るのは大好きだよ?何回でも言うけど。」

「マリーナ大丈夫だ。ロットゲイムさんは消えて無くなる訳じゃないんだ。」「…!アルフレッドさん。」

「死んでしまうのと、旅に出るのは別物だから。ロットゲイムさんは旅に出るだけだ。」

そうでしょう?とアルフレッドがアタシの顔を見る。イエロージャケットに居た頃からアルフレッドの視線は鋭いよなあと思ってたけどこの力強さはどこからくんのかな。

「もちろん。」

「旅に出るだけという事は帰ってくる事だってある。ロットゲイムさんは消え去ってしまう訳ではないよ。」

「…ロットゲイムお姉さん。時々、帰ってきてくれますか…?」

お嬢さんは…お母さんが病死で旦那が他殺なんていうお別れの仕方をしたから、誰かが居なくなるのが余計に怖いんだろうね…。永遠に会えなくなるんじゃないかって、どこかで思っちゃうんだろう。

「帰ってきて良いならもちろんだよ。なんせ、アタシの家は海の上の船だったから…陸の上に自宅、無いからね。」

「なら、ここをロットゲイムお姉さんの陸の家にしてください。ここを帰る場所にしてくれませんか?」

「…海賊に戻るのとほとんど一緒みたいなもんなのに良いのかい…?」

「もちろんです!むしろ、時々帰ってきて顔を見せてくれなきゃ私、哀しいです!」

目にうっすら涙を浮かべてお嬢さんがきゅっと手を握りしめる。本当にこの人は優しくて素直で素敵な人だ、と思う。旦那もそうだったけど。

「…分かった。じゃあ、ここをアタシの家って事にしてちゃんと帰ってくるよ。お土産も持ってくる。」

「…絶対ですよ…!長く帰れないならお手紙をくださいね…!じゃないと、私…私…寂しいです。ロットゲイムお姉さんが出て行ってそのまま帰って来なかったら…。耐えられないです…。」

しおしお、と音がするんじゃないかって程お嬢さんがションボリ、とするのがわかる。アタシはいつの間にかお嬢さんにとってはここまでおっきな存在になってたんだね…。

「…約束するよ。ここに帰ってきても良い、なんてアタシには最高の贅沢だし…お嬢さんと若旦那が仲良くしてるの確かめに来なきゃね。」

ちゃんと帰る、と約束して漸くお嬢さんがにこっと笑う。アルフレッドの若旦那もそれを見てホッとした顔をしてアタシも、正直安心した。旅に出ては見たいけどお嬢さんを悲しませたくは無いしね。


次の日からお嬢さん達の手伝いをしつつ合間に、冒険者になる支度を始めた。

単なる風来坊なら勝手に旅立てば良いんだけど冒険者をきちんと名乗る…ってのもなんか変だけどともかく、きちんとなるには冒険者ギルドってのに所属しないといけない。リムサ・ロミンサではバデロンの親父が仕切ってるやつ。

んで、所属すると仕事の紹介を受けられたり宿屋に格安とかタダで泊まれたりする。リムサ・ロミンサなら溺れた海豚亭にあるミズンマストに泊まらせてもらえるとか。もちろん、多少仕事をして貢献したって判断されないとダメらしいけどね。

お嬢さんは普段通りの振る舞いをしてるけどふと、寂しそうな顔をするからなんだか心苦しい。けど…アルフレッドの若旦那がなかなか懸命にお嬢さんを支えようとしてるしお嬢さんもそれを理解してて…なんというかめちゃくちゃ可愛い夫婦だわ。

数日してだいたいの支度が整った。アタシが居なくなった後はアルフレッドの若旦那がイエロージャケット時代に世話になったことのある気のいい冒険者達が雇われ護衛に来てくれるらしい。寝食までは見ないけど、って言ってたけど。

冒険者ギルドへの登録もここ数日のうちに済ませてた。バデロンの親父には

ー漸く、自分の欲求がわかったか。あのお嬢さん達なら大丈夫さ。ー

なんて言われちゃったからアタシの方が驚いたわ。なんでアタシ自身は分かって無かったのに周りは分かってんの?

旅立つ前に、アレコレ済ませるのはだいたい終わったと思う。お嬢さんの家にあるアタシの部屋はそのままにしておいていいからってお嬢さんが譲らなくて、ちょっと片付けるだけで終わっちゃったし。

婆やがこっそりお部屋があれば帰って来やすいはずだし、とお嬢さんとアルフレッドの若旦那が相談して決めたのよ、と教えてくれた。ほんとに可愛い夫婦だわ。

明日、ここから出発する。アタシは飛空艇はパス持ってなくて乗れないからひとまずは、連絡船でウルダハの方に行ってみるつもり。旦那やお嬢さんについて行ってた時は、二人が仕事でパスを持っていたことと、護衛だから一緒に乗れるってので飛空艇でササっとグリダニアにも行けてたんだけど…。パスが無いとなると陸路しかない。

現状、陸路で行くにしても結局ウルダハを経由しないとならないしってことで、まずはウルダハ。

その日は、しばらく一緒に食べられなくなるからって、婆やとお嬢さん夫婦で作ってくれてみんなでワイワイ、食べた。そのメニューがね、アタシが初めてこの家に招かれた時のメニューと一緒だったんだ。ビアナックリーブと野菜を蒸したやつ、とか、アプカルの卵が載ったサラダ。懐かしくて…もちろん美味しかったよ。

明日からしばらくは1人でのご飯になるし場合によっちゃあ野宿もある。大変なのは間違いないけど楽しみだって気持ちのがデカイ。


次の日出発する時間。

お嬢さんは船着き場まで見送ると追いかけちゃいそうだからお家で見送ります、と玄関先までは出て来てくれた。多分、泣いちゃいそうなんだと思う。それで、アタシを困らせちゃうって考えたんだろうなって。

「気をつけて、下さいね…!時々、帰って来て元気な姿でお土産話を聞かせて下さい…!」

「約束するよ。…若旦那、お嬢さんをよろしく頼むよ。」

「もちろん。…どうかお気をつけて。」

「婆やも無理しない程度にね。」

「…ええ、ありがとう。おかえりの時は美味しいご飯を用意しますからね…。」

「楽しみにしてるよ。」

「あの、ロットゲイムお姉さん、これを。」

お嬢さんがそう言ってなにかアクセサリーを手渡してくる。イヤリングと、チョーカーだった。どっちにも綺麗な石がついててなにか模様が彫られてる。

「…これは…?」

「御守りです…!旅の神様のオシュオンと海の神様のリムレーンのシンボルを彫ってもらいました。」

言われて改めてみるとイヤリングの石にはオシュオンのシンボルチョーカーの石にはリムレーンのシンボルがあった。お嬢さんが言ったように、オシュオンは旅の神様で、旅の安全をお願いしたりすることが多い神様だ。リムレーンはリムサ・ロミンサの守護神で、海の女神様。航海や船乗りの守り神でもある。お嬢さんは…アタシがもともと海賊なのも考えて二つ作ってくれたんだね。

「ありがとうお嬢さん…。大事にするよ。」

お礼を言ってどっちもを、その場で身につけるとお嬢さんがにっこりと笑う。

「それじゃあ、行って来ます。」「行ってらっしゃい…!」

サヨナラは無し。また帰ってくる約束だもん。手を振ってから歩き始める。背中でずっとお嬢さんが手を振ってるのは分かってたけど…

振り返ったらアタシの方も泣いちゃいそうだから、我慢してまっすぐ、前を見て船着き場まで向かった。


ザナラーンに向かう連絡船。久しぶりに乗り込んで西ザナラーンまで。旦那が亡くなった時はそれが辛くて泣いてたけど今は…悲しくは無い。ちょっとさみしいけど、涙が出る感じではなくて…なんだろう、晴れやかなさみしさって言うと変かもだけど、そんな気持ち。

西ザナラーンに着いたら日差しの強さにしかめっ面になっちゃう。リムサ・ロミンサも十分まぶしいんだけど、あれとはちょっと違う。リムサロミンサで凄いのは太陽光そのものというより、白い建物からの照り返しだと思う。めっちゃまぶしいよあれ。

ザナラーン名物の砂塵が吹いてないだけ、だいぶマシだけど。砂塵て前が見えづらいどころか、埃だらけになるし顔に当たると痛いし目とか鼻とか耳に入って気持ち悪いんだよね。

チョコボ屋さんに近寄ってチョコボポーターをお願いしたいんだけど、と声をかける。チョコボってのはでっかい、飛べない鳥でエオルゼアでは一般的な騎乗用の生き物。1人で乗るための子とか荷車を引いたり、羽車を引く子とか2人乗りができる大型の子とか結構いろんな種類がいる。ちなみに結構、鳥くさい。

この鳥臭さがクセになるって人と吐きそうってなる人がいるんだって。アタシはというと、あんまり気にして無い。あーこの匂いはチョコボだわーっていう感じ。正直、華美な香水とかのがよっぽど気持ち悪いもん。

ともあれ、一頭チョコボを借りて跨るとウルダハまで運んでもらう。

訓練した子は教えた道を迷わず走り人が降りて合図してやると元いた場所に自力で帰れるとかでチョコボポーターはその訓練した子たちを有料で貸してもらえる便利なやつ。自分のチョコボを持つって手段もあるんだけど、リムサ・ロミンサなりウルダハなりグリダニアなりにあるグランドカンパニーっていう組織で、ある程度評価を得ないと羽主に成れないんだって。

グランドカンパニーってのは…各国の正規軍と、そこに協力する宣誓をした冒険者が集まってできてる組織…って感じかな?グランドカンパニーは同盟も組んでるから有事の際はそれぞれ協力することになるし、冒険者達も冒険者部隊、って形で軍に組まれるんだってさ。アタシはまだどこにも所属してないし、マイチョコボを貰えるようになるとしても、大分先だね。

それにしても、脇目も振らずにまっすぐ、目的地に向かうから凄い。あちこちに魔物だの草木だの気になるもの、いっぱい有るだろうに。西ザナラーンウルダハに入るための大きな門、ナナモ新門に着くと乗ってたチョコボがピタリと足を止める。よいしょと降りてありがとね、と背中を二回叩いてやるとクエッ!と鳴いて元来た道を駆け抜けて行った。見送ってから門をくぐる。門番の片方が、お疲れ、と声をかけてくれたんで会釈しておいた。

リムサ・ロミンサは外壁とか道路とかが真っ白で天気のいい日は照り返しやらで暑いんだけどウルダハも別の意味で暑い。ここは、そもそも砂漠のオアシスみたいな所で砂だらけの暑い土地。なにせリムサと違って乾燥もすごい。気候に慣れるまでは疲れが溜まりそう。

とりあえず船旅と日照りの中チョコボで走って来たからいったん、休憩しよう、と冒険者ギルドがあるほうへ向かう。クイックサンドって名前で酒場とギルドそれから宿屋が纏まってる。ギルドの元締めはモモディさんって人で小柄なララフェル族。アタシらルガディンからするとすごいちっちゃくて子供にしか見えないけど立派な大人。

正直、ララフェルの見た目で年齢分かる人は同じララフェル族だけなんじゃないかね。下手すると男女差も分かりづらい種族だし。

クイックサンドに入ると暑さを避けて来た人や仲間と相談してる冒険者なんかで賑わってた。何か飲み食いする気分じゃなかったし宿屋でちょっと休もう、とクイックサンドに併設してる砂時計亭の受付オトパ・ポットパに声をかけて冒険者で一人、と説明するとこのお部屋にどうぞ、と丁寧に案内してくれる。彼もララフェルでちっちゃいからララフェルステップっていう踏み台に乗ってる。モモディさんもだけど。

彼らより背の高い連中の方が圧倒的に多いしそもそも乗ってないと多分、カウンターに視界を塞がれちゃうはず。ともあれ指定された部屋に入って背負ってた荷物を置いてベッドに座り込む。格安で泊まれるわりにいい部屋だと思う。冒険者を優遇して働いてもらう魂胆らしいけどね。

「…当たり前だけど静かだわ…。」

いつもは誰かしらが一緒にいる時間だけど1人でいるってのはこんなに静かなんだねぇ。その日はそのまま昼寝をしてちょっとだけ、マーケットのある散策するだけにしといた。

体と気分が慣れてくるのが楽しみだね。早く、もっと色々見に行きたいよ!

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月影と新月

ロットゲイムの物語

刹の家で半住み込みで働いている元女海賊、 ロットゲイムの昔のお話。
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