冬の朝 その2


朝夕は冷え込むのに、昼間の陽射しは日に日に暖かい。慌しかった2月もあと数日。

昔、末娘は寒い朝の登園が苦手だった。マフラー手袋で完全武装して家を出ても、冷たい風が頬を撫でるとたちまち足取りが遅くなり、ぐずぐずと私を見上げて半泣きになる。
歌を歌ったりしりとりをしたり、騙しだましで歩みを進め、やっとの思いで通園バスに乗せた。

ある寒い朝、ちらつく風花を見上げて手を伸ばしていた末娘が教えてくれた。
「お母さん、見て!
今日はお山がピンクになってきたよ!」
冬枯れの裸木の続く山並みは昨日と変わらず寒々として見えた。
何故?と思いつつ近くの木の枝をみると、枯れ木でしかなかった梢の先に小さな葉芽がたくさん覗いている。
そんな芽生えが無数に集まって、小枝全体が薄いベールを被ったようにピンク色に染まっている。

こんなに幼い子どもが、本当にこんな細やかな春の気配を見つけることができるんだろうか?
寒がりで泣き虫の甘えん坊ではあるけれど、こいつ、タダモノじゃないなと末娘を見直した冬の朝の出来事だった。

今日、彼女が大切な資格試験に挑んでいる。 
中学高校と、受験勉強らしい物を経験をしたことのない娘が、ここ数年働きながら初めての受験勉強に励んできた。
いち早く木々の変化に気づく賢明さと果敢に挑戦する勇気で、輝かしい春を見つけてほしい。
#エッセイ
#冬の朝

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