春の訪れ

寒い寒いから、唐突に春の気配。久々に里帰りした実家の庭にも、我が家のまわりの山道にも梅の花。咲き初めのまばらな枝先が私は好き。

通勤の途上、ウグイスの初鳴きを捉えた。
いつも顔を合わすウォーキングのおばさまと「今年もウグイスが聴けたね」
「まだ下手っぴやけどね」
と言葉を交わして行き違う。
離れぎわ、おばさまが誰にともなく「しあわせやなー」と呟く声が聞こえた。
「ほんとにねー」
わたしも誰にともなく、呟いてみる。

初音の頃のウグイスは、まだちょっと調子っぱずれ。ホーホケキョのケキョが多すぎたり、足りなかったり。そのユーモラスな鳴きっぷりも、早春の楽しみの一つだ。

ウグイスのホケキョは、雄の求愛の歌声だ。
鳴き始めのこの時期は、昨年の鳴き方を思い出しながらの試運転なので、調子はずれなアイラブユーも聞かれるのだそうだ。
また、そのメロディには地方色もあったりして、人間が思うホーホケキョが必ずしも正調とは限らないのだと言う。

ところで、この春求愛デビューの若いウグイスたちは何をお手本にして歌うのか。
それは幼鳥の時に聴いていた大人のウグイスたちのさえずりの記憶なのだと言う。その記憶を頼りに、練習を繰り返して、だんだん上手にさえずるようになるのだそうだ。
幼時の記憶や経験をたよりに、大人の行動や言動を身につけていくという自然の理。文化の伝承とでも言えるのだろうか。

ところで最近、末娘と一緒に買い物にでたりすると目につく商品や広告のPOPが妙に一致したり、何かの折にたまたま発した言葉が完全に同じだったりして、びっくりすることがよくある。
これも幼時からの長い刷り込みの賜物だろうか。
なんてこともないことの一致ばかりだから「伝承」とまではいかないけれど、クスッと笑ってちょっとたのしい。
そういえば昔、誰かと発言が被った時に「ハッピーアイスクリーム!」と言う楽しい言葉遊びが流行った。
まさに、ハッピー。

#エッセイ #春のたより

#窯元 #吉向焼 #吉向松月窯 #九世吉向松月
#pottery  #ceramics

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?