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第2回さっぽろ俳句倶楽部「俳句コンテスト」~入賞作品一覧&選評

先日、開催した「さっぽろ俳句倶楽部」主催の「第2回俳句コンテスト」の結果が出揃いました。

5句連作でタイトルを付けて応募するスタイルの倶楽部内コンテストです。
5句という言語空間の中で、頭を悩ませつつも、ご自身なりの世界観をめいっぱい表現する体験を楽しんでもらえたらいいなという意図からの企画で、今年が2回目の開催となりました。

また、顕彰は私が選ぶ賞だけでなく、参加者全員での互選で選ぶ賞、いつも講座開催のサポートをしてくれるコワーキングSALOON札幌の店長emicoさんが選ぶ賞と、さまざまな視点から作品を鑑賞・評価し合うするスタイルを取っています。自分一人では到達できなかった「読み」や「俳句の可能性」を、参加者全員(主催側も含めて)で受け取りたいと考えたからです。

以上のような趣旨でエントリー作品を応募したところ、句歴の浅い方からウン十年のベテランまで、14作品が集まりました。「さっぽろ俳句倶楽部」と称していますが、部員は全国にいますので、応募者の地域もバラエティに富んでいます。

そのような中から、見事、入賞した作品を以下に掲載、ご紹介しますので、ぜひご一読ください。

最優秀作品「天狼賞」

「魔法の言葉」(中野千秋)
かわいいは魔法の言葉冬隣
音信の無きは良きこと秋の暮
そのゆるき顔の怖くて菊人形
ゆく秋の昔の玻璃の良き歪み
蜂蜜を舐めて眠ろう冬の夜

★講評
日常いつも使っている何気ない言葉が「魔法」のようにキラキラ輝きだすときがある。そんな言葉を受け取ったり、投げかけたり。あるいは、俳句17音に置いて驚嘆してみたり。
タイトル句である1句目は「かわいいは魔法の言葉」であると断じている。「かわいい」と評する時に含まれる意味は実は多彩だ。見た目だけでもなく、中身だけでもなく、その二つがぶつかりあった化学反応が「かわいい」となる。あえて別の言葉で言えば「愛らしい」になるだろうか。いくつになっても、男性であっても、キリッとした御仁でも、歪であっても、「かわいい」と評されることはある。そう、「かわいい」には存在そのものを肯定する魔法が宿っているのだ。そこに気づいた詠者はただものではない。なにせ、中七までのキラキラフレーズに「冬隣」なんて冷静な季語を配してくるのだから。
甘やかなタイトルに反して、並ぶ五句は落ち着きを保っている。世界から半歩引いたような距離から、愛でたり面白がったりしている。見慣れた景の中に、かすかに宿る違和。どうしようもなく流れていき巻き戻せない時間。それらを静かに受けとめ、噛みしめる中から句が生まれてくるようだ。五句目の「自愛(慈愛)」の時を経て、また新たな物語が始まるのを期待している。(瀬戸)

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入賞作品より

准賞 
「雪をんな」(裕)
雪晴やたぷんと揺るる水枕
鋤焼きの玉子分けあふ四畳半
※互選最高得点「南天賞」として下記に5句掲載

★講評
季語そのものをバンと打ち出して、起承転結を有する物語風に詠まれた作品は、一読インパクト大。「雪をんな」が詠みこまれるのは最後の一句のみだが、タイトル効果で「雪をんな」の気配を感じながら読み進める楽しさ、結末への期待感があった。
起承転結が意識されているとはいえ、「つくりもの」的な感じは薄く、1句1句の独立性も保ちながら、微妙に絡み合って場面が進んでいくところが秀逸。ことに1句目に置かれた「雪晴や」の句の「たぷん」のオノマトペの語感のよろしさ、四句目の「玉子分けあふ」の言葉の効率の良さに注目。(効率の良さとは、このフレーズで「1個しかないから半分こね」と言い合い、「玉子を溶いて、相手の取り皿に卵液を半分入れてあげている」ところまで脳内映像が再生されるという意)(瀬戸)

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佳作(2作品)

「僕の細道」(一路)
白神の万緑我を呑み込めり
久々の実家の匂ひ合歓の花

★講評
「奥の細道」をもじった「僕の細道」という遊び心のあるタイトルだが、中身は正統派(笑)実際に東北各地を旅して目にし、心動かされた雄大な風景をゆったりと詠んでいる。単なる自然詠にとどまらず、そこに在する「我」が見える句に個性が光る。そして、やはり帰宅した家の匂いに落ち着く…という結末に、なんだかホッともするのだ。(瀬戸)


「心象風景」(和弘)
フラスコに薔薇ゲシュタルト崩壊
月の海ざざっと裂けて鯨啼く

★講評
花鳥諷詠があれば、このような抽象的な心象詠もあって幅広いのが当倶楽部の風通しの良さとも言えよう(笑)映画に差し挟まれた意味深なカットのような「フラスコに薔薇」の句、実際にありそうだけれど、何処か神話的な予兆も感じさせる「月の海」の句。自分の「詩的宇宙」を信じて「俳句の宇宙」へ冒険的な言葉を紡いでいく姿勢に拍手。(瀬戸)

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審査員特別賞
「不可幸力」(シルマ☆)
飼い慣らす天使と悪魔猫の恋
落ち椿彼のこどもは宿せない
触れるときためらいながら夜の桃
十六夜優しい嘘をつく理由
風花やもう待つことはやめようか

★講評
全体的に「色」を感じる、いい意味で妄想の翼が広がる作品で、読んでいて楽しかったです。(emico)

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互選最高得点「南天賞」(2作品同率1位)

「音楽会」(山田すずめ)
遠山に龍眠るらし稲穂波
爽やかや指人形がジャンプして
さやさやと辞書をくりをる夜長かな
廃屋のピアノに秋の蚊の停まる
深秋や幟ゆらめく分譲地

★選評抜粋
「音楽会」との表題の通り、どの句からもリズムを感じます(月波)
 
この五句は動きの中の一瞬をとらえている。この一瞬の前に何があったのか?この一瞬の後に何があるのか?想像力をくすぐられます。(和弘)

「雪をんな」(祐)
雪晴やたぷんと揺るる水枕
湯上りの背を抱きしむ寒の月
快楽まで墜ちてゆこうか冬薔薇
鋤焼きの玉子分けあふ四畳半
赤信号ふと振り返る雪をんな

★選評抜粋
冬の季節感とストーリーがあり、少しレトロな感じがインパクトありました。(紀宣)

連作という今回の作品の中で、この作品の5句の、句の繋がりが良かった。(野島正則)

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互選3位
「不可幸力」(シルマ)
※「審査員特別賞」として上記に五句掲載

★選評抜粋

悲しい結末が待っている恋を思わせる。特に、十六夜や優しい嘘をつく理由、は季語がすべてを語り切ない。(昼顔)
 
まずテーマに五句対する作者の並々ならぬ思いが感じられた。女性ならではの愛対する思いが生々しく詠まれていて素晴らしいと思う。愛に対して女性はここまで考えられるのかと感心した。(一路)

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推薦10句選(作品番号順)

音信の無きは良きこと秋の暮(「魔法の言葉」/中野千秋)
フラスコに薔薇ゲシュタルト崩壊(「心象風景」/和弘)
恋するをかき消せません大夕焼(「恋」/紀宣)
逃げているかもな流星見送りて(「ぷち休憩」/たか子)
落ち椿彼のこどもは宿せない(「不可幸力」/シルマ☆)
爽やかや指人形がジャンプして(「音楽会」/山田すずめ)
養育費負担消ゆるや成人式(「縁の糸」/正則)
かたかごの花や上京はすっぴん(「帰愁」/昼顔)
店終う黒服の肩にも小雪(「漂う」/月波)
雪晴やたぷんと揺るる水枕(「雪をんな」/祐)

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選評賞「六花賞」
ぽこぽこと珈琲淹れし月夜かな(「ぷち休憩」/たかこ)の鑑賞

視覚の月光、珈琲を淹れる香り(嗅覚)と、ぽこぽこという音(聴覚)。心安まるしづかな時の流れを三つの感覚で表現しています。鑑賞する私も癒され、ちょっと楽しくなる俳句です。試してみましょう。ありがとうございます。(まさひで)

いただいたサポートは、俳句創作への活力や「書くための講座」のバージョンアップに向けて自己投資し、さらに良いものを生み出して、皆さんに還元いたします♡