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読書要約#7センスは知識からはじまる

グッドデザインカンパニー社長、クリエイティブディレクターの水野さんの著書。先天的なものと考えられがちな「センス」も鍛えることで後天的に身につけられると述べる。ズバリ「知識の集積」によって。

センスの定義

”センスとは数値化できない事象を最適化すること”と著者は定義する。そもそもセンスは数値化できない。おしゃれやかっこよさ、可愛さは数値化できない。けれど、その人の個性・特性、場面などを考慮して最適化することは可能である。その最適化の行為自体がセンスであり、センスの良い人がすることだ。

知識とセンス

知識とは紙のようなものでセンスとは絵のようなものだと著書は述べる。紙の上に絵を描くように、知識とセンスはセットであり、そもそもの材料がないとセンスは磨きようがない。つまり、知識の集積がセンスだということだ。「あいうえおしか知らない人」と「五十音全て知っている人」だったら、どちらが優れた文章を書けるかは明白である。一見突飛なアイディアから生まれていると考えられているものも知識の集積から生まれていたりする。例えば、iPhone。ジョブスの天才的な発想から生まれたものだと思われがちだが、固定電話、携帯電話の流れを汲んだものに過ぎない。また、AKB 48もおニャン子、モー娘。の流れを汲んだものである。知識が前提にあって生まれていることがわかる。これはあっと驚くものを作るなということではなく、「方向性」を考える段階では知識に基づいて決めた方が効率が良いということ。最終的なアウトプットは新鮮で尖ったものにするべきである。

知識の増やし方

知識といってもただ闇雲にインプットすれば良いというものでもない。著者は、「不勉強と思い込みはセンスアップの敵」という言葉を残した。そもそも学ぼうとしないことは本人が頑張るしかないが、思い込みは無意識であるため厄介である。毎日ルーティン的に生活していても新たな知識は増えない。例えば、いつもは降りない駅で降りてみる、いつもとは違う時間に起きてみる、いつもと逆側から歯磨きをしてみる、など小さな変化から起こしてみるのが良いとか。

また、効率的に知識を増やすコツとして3つ紹介されている。一つ目は「王道から攻めること」。王道になっているには何かしら理由がある。万人に受ける何か、それを探る。また意外と王道とは何かを探すのに苦労する。それを探る過程でそのジャンルについてについての知識は大方手に入る。二つ目は「流行を知ること」。一つ目とは対極にあるかもしれないが、流行っているのにも何か理由がある。それを探るのに著者は「雑誌」を薦めている。なぜならネットは情報の整理が追いついていないことが多いが、一方で雑誌は情報が精査されているからだ。三つ目は「共通項やルールを考えること」。王道と流行の間に共通点あるかどうか自分なりの分析や解釈を加える。

センスとはマナー

現代社会において「センスとはマナー」であると著者は述べた。センスとは知識の集積であるので、”センスの良い人”というのは知識が豊富な人であり、仕事ができる人である。なぜなら、知識が豊富な人であれば上司やクライアントとの会話でその人の専門性を感じ取ることができ、自分の”普通”とチューニングして深く会話を引き出すことができる。これができれば通常の人ができないところまで課題を深掘ることができるので、すなわち仕事の成果にも繋がりやすい。「上司やクライアントと会話が成立する」というのは簡単にできそうで難しいことだ。だが社会人なら当たり前のようにできていなくてはならない、つまりセンスとはマナーなのだ。

所感

第一に非常に美しい文章であると感じた。スーッとストレスなく一文一文が入ってくる感じ。その上で考えさせられることが多かった。センスがいいなと感じる人は確かに身の回りにいるが、その人の話を聞いていると地道な努力をしていることが多い。それでこの本を読んでセンスは後天的に獲得できると確信した。また、年上の方と話していると「王道から攻めろ」という旨の話を聞くことが多い。そうなんですね!と返答しておきながら内心保守的だなあと思っていた一面があった。だが、確かに王道にまでなった理由はあるはずで、そこまで考えなければならないなと思った。逆に年上の方に「〇〇の王道はなんだと思いますか?」という質問はいいかもしれない。

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