見出し画像

読書要約#4 ドリルを売るには穴を売れ

この本はマーケティングについてわかりやすく書かれている本である。本作ではマーケティングとは「売ることに関わる全てのこと」とされている。つまり、市場調査、商品開発、広告制作、営業活動など全てを含む。さらにそれは「価値のやりとり」だとも述べられている。売り手が顧客に対して何らかの”価値”を提供し、顧客はそれに見合う”対価”を支払う。このやりとりこそがマーケティングであり、それには4つの基本的な理論があるという。

①ベネフィット

1つ目は「ベネフィット」である。それは「顧客にとっての価値」とも言い換えられる。マーケティングにおいてベネフィットはとても重要である。なぜなら、「顧客が感じる価値(ベネフィット)>顧客が払う対価(時間、お金、手間など)」という公式をいかに維持、拡大させていくかがマーケティングであるからである。そしてそのベネフィットは「機能的ベネフィット」と「情緒的ベネフィット」の2つに分類することができる。「機能的ベネフィット」とは”早い” ”うまい” ”便利” などの物理的な価値を指す。一方「情緒的ベネフィット」とは”優越感” ”名誉” ”思い出” など情緒的な価値を指す。では、その「価値」というのはどこから生まれるのか。それは人間の「欲求」からであるとされている。本書ではアルダファーの『ERG理論』を取り上げている。すなわち、「自己欲求」「社会欲求」「生存欲求」の3つである。「自己欲求」とは自分の中で完結する欲求である。成長欲やこだわりを貫きたいという思いもこれにあたる。「社会欲求」とは他人との関係においてよく思われたいと思う欲求のことだ。何かを見せびらかしたい気持ちやモテたいという思いもこれにあたる。「生存欲求」とは生き続けたいと思う肉体的な欲求である。生きるためのお金が欲しい、美味しいものを食べたいという思いはこれに含まれる。

顧客が感じる価値をどのように設定するかがマーケティングの肝であり、人間の欲求をどう取り扱うか、どこまでそれを想像できるかが大事になってくる。

②セグメンテーションとターゲット

2つ目は、「セグメンテーション」と「ターゲット」である。「セグメンテーション」とは顧客をグルーピングすることを指す。例えば、性別、年齢、居住地などで分けたり(人口統計的セグメンテーション)、心理や行動、ライフスタイルなどで分けたり(心理的セグメンテーション)、どこに価値を感じるかという側面で分類したり(ベネフィットセグメンテーション)といったやり方がある。「ターゲット」とはそのセグメンテーションされた顧客のグループのうち、ここに売っていくと決めたグループのことを指す。つまり、「セグメンテーション」と「ターゲット」はセットである。

なぜこれらが大事かというと、人によって感じる価値・欲求は異なるからだ。つまり、全員に刺さる商品・サービスは存在しないし、全員に刺そうとすると誰にも刺さらないということだ。

③差別化戦略

3つ目は「差別化戦略」だ。ビジネスをしていれば必ず競合の存在が発生する。例えばマクドナルドであれば、モスバーガーやフレッシュネスバーガーなどのハンバーガーショップが競合であり、また吉野家や富士そばなどのファストフードも競合であり、ココスや俺のフレンチなどの外食店も競合であり…などその範囲は無数に広がっていく。そこで必要になってくるのが”競合より高い価値をいかに提供するか”という「差別化戦略」である。それを考えるにあたり、「手軽軸」「商品軸」「密着軸」というのが役に立つ。「手軽軸」とは手軽に済ませたいというベネフィットを求めている顧客を狙ったもの、「商品軸」とはとにかく良い商品を手に入れたいというベネフィットを求めている顧客を狙ったもの、「密着軸」とは居心地の良さや安心感などのベネフィットを求めている顧客を狙った戦略をさす。

ここで大事なのは差別化軸をどれか1つに絞ることだ。なぜならどの軸で行くかを決めることは会社経営全体に大きな影響を与えるからである。例えば、早く安い「手軽軸」で攻めるのであれば、効率性が求められるため組織は中央集権的になり、業務はマニュアル化され比較的安価で済むバイトが多く採用されることになる。当然リソースは有限であるため3つ全てに全振りすることは不可能である。

④4P

4つ目は「4P」である。これは今まで描いてきた戦略をどのように実行するのか具体性を帯びたものにするためにあるもの。「product」製品、「promotion」広告・販促、「place」流通、「price」価格の4つである。「4P」を考える際に大事なのは、「目的と手段を履き違えないこと」と「一貫性を持たせること」だ。作り手はドリルを売ることに必死になるが、買い手はドリルを買いたいのではなく穴を開ける道具を買いたいのであり、ドリルを買うことが目的ではない。つまり、顧客の求めるベネフィットを常に想像することが大事である。顧客はこの商品・サービスを享受してどんな感情を抱きたいのかということを常に頭の中にインプットするのだ。また、それぞれの施策の意図がバラバラであっては刺したいターゲットに適切に刺すことはできない。最初のベネフィットからセグメンテーション・ターゲット、差別化戦略、4Pと全てが繋がっているのだ。

⑤所感

マーケテイングについてざっくりわかりやすく復習できた。差別化の軸は初めて聞いたのでこれから意識して使っていきたい。印象に残っているフレーズは、大事なことは現場で起きているということと、このマーケティングの話はビジネスだけでなく個人にも置き換えられるということだ。データはデータでも人口統計的なデータでなく、生の現場の声を反映したデータの価値は高くなる。現場の問題を解決したいのだから現場に足を運ぶのは当たり前のように大事だ。これから自分がやっていくのは「代理業」な訳だが、どれだけクライアントと一緒に当事者意識を持って取り組めるかが成果をあげるための1要因だとまだやったことないけど感じる。代理店のやつは上から目線でムカつくみたいなことは世間でたくさん聞くけれども、そうなってしまうのはクライアントに対するリスペクトが足りていないからであり、代理する者自身の当事者意識であると思っている。自分がその立場になってもリスペクトだけは忘れないようにしたい。また、これら理論は個人のブランディングにも使えるということ。今はインターネットで個人の影響力をつけやすい環境にある。フォロワーを増やしていく過程でマーケティングの知識は活きると思った。

⑥転用

今回学んだことのアウトプットということで、現在最新作が公開されている「スターウォーズ」を例に考えてみた。

ベネフィット:子ども心をくすぐられる、子どもの頃の気持ちに戻れる

→宇宙、戦闘機、光る剣、正義vs悪、などのストーリー上の要素は子どもの頃に夢中で追いかけたものを彷彿させる。

ターゲット:コアは30〜40代男子、とその家族・友人

→上記の要素は男達の夢であり、子どもの頃に時間とお金を投下したそのものである。その熱烈なファンのパートナーや家族も巻き込まれて市場が形成されているように思われる。(自分も父の影響で好きになった、家族全員スターウォーズファン。)

差別化戦略:「商品軸」

→スターウォーズの強みはその圧倒的な世界観(=細部までこだわった作品)である。世界観がここまで作り込まれていなければ世間から飽きられ、42年も続く超大作にはならなかったであろう。ストーリーに限らず、BGMやグッズにもその軸がしっかり反映されている。スターウォーズBGM単独のコンサートが行われるほど。

4P:「product」製品

→シリーズ累計6億ドル以上の制作費をかけて作り込まれた作品、音楽、グッズ。3時間を通して遊ぶことに夢中だった子ども時代のあの頃に戻れる感覚。

「promotion」広告・販促

→テレビ:新作公開前々週から過去作を金曜ロードショーで公開、それがCMに。SNS・YouTube:結末予想動画が各地で上がり様々な憶測が飛び交う、注目上がる。交通広告:電車中吊り、駅ポスター。販促:映画館にグッズ販売エリア(劇場限定版パンフなどの商品も。)、スターウォーズ展覧会。

「place」流通

→全国の映画館。最近はディズニーの動画サブスクで独自コンテンツを配信中。

「price」価格

→映画の値段は通常の映画館価格。グッズは少々高めだが、映画見終わった後だったら買っちゃう。(ステッカー300円、メモ帳800円、ハンガー3000円など。)


ジェダイの騎士達は常に「恐れ」と戦っている。そこで逃げるか立ち向かうかでダークサイドに堕ちるか、ライトサイドに踏みとどまるかが決まる。物事は常に表裏一体。どちらを選択するのはいつだって自分の心だ。大事なことは全てスターウォーズが教えてくれる。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?