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元ツンデレアイドルのマネージャーは苦労がたえない 3話

『はやくして?』

「すみません」

『もう!』

「すみません…」

なんで俺こんなに怒られてるの?

·····

「あの…」

『なに?』

バラエティ収録の休憩中。
恐る恐る飛鳥さんに話しかけた。

「俺、なんかしちゃいました?」

『そんなこともわかんないの?』

「すみません」

『謝るんじゃなくて、自分で考えて!』

「はい…」

え?怒らせるようなことしたっけ

飛鳥さんの機嫌は
収録前の楽屋から悪かった。

でも、その前のテレビ局間の移動の時は普通だったはず。

『〇〇!』

「なんでしょう」

『さっきのパン、めっちゃ美味しかった!』

「ほんとですか!」

『うん』

「また買ってきますね」

なんて言って
俺の差し入れたパンを上機嫌で褒めてくれて

鼻歌まで歌いそうな勢いだったのに。

ということは。
車を降りてから、楽屋までの道のりでなにか俺に不手際があったのだろう。

車降りて、飛鳥さんをエレベーターまで案内して……

「あ」

『なに』

「なんでもないです、すみません」

飛鳥さん、俺わかったかもしれません。

·····

「お疲れ様です」

『ん』

「あの飛鳥さん」

『なに』

「この後時間ありますか?」

『ない…ことはないけど…』

「じゃあそこにお座りください」

飛鳥さんはしぶしぶといった顔でソファーに座った。

「飛鳥さんすみませんでした」

『なにが』

「飛鳥さんのこと放っておいて西野七瀬さんのこと助けたことです」

楽屋がある階にエレベーターが着き、
エレベーターの扉が開いた時。

西野さんが持っていた荷物をばらまいてしまっていた。

俺はとっさに、それを拾いに行ったのだが
よく考えれば飛鳥さんは

エレベーターが開いたらマネージャーが急に走り出して
取り残されてしまっていたのだ。

「飛鳥さんのマネージャーなのに飛鳥さんのこと1番に考えれてなくてすみません」

そう言いながら頭を下げる。

と、

『…ななも〇〇も悪くないから』

小さい声が聞こえた。

『わたしが勝手に怒ってただけだから』

俯きながらも喋る飛鳥さんの声は
小さいけれど、はっきりと俺に届いた。

「俺がこれから気をつけます」

『ん』

ちょっと嫉妬したなんて口が裂けても言えない、よね?


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