APD(聴覚情報処理障害)

聴覚情報処理障害(Auditory Processing Disorder=APDと略されることが多い)とは、聴力は正常であるにも関わらず、日常生活のいろいろな場面で聞き取りにくさ(聞いた言葉の内容が理解しづらい状態)が生ずるというものです。

具体的には、音を収集・感知する箇所(外耳、中耳、内耳、末梢の聴神経)の機能には異常が無く、聴覚情報を処理する「脳」の中枢神経に何らかの問題がある状態です。音は聞こえているのに、「言葉の処理」ができない状態なのです。その障害をもつ潜在的な患者数は、推定240万人にものぼると言われており、日本人の約2%が該当します。APDはあまり知られていない障害でしたが、2018年にNHKで取り上げられてから、日本でも少しずつ知られるようになってきました。

APDの症状は
✳︎聞き返しや聞き間違いが多い
✳︎長い話を理解するのが難しい
✳︎雑音やバックグラウンドミュージックなど、環境が悪い状況下での聞き取りが難しい
✳︎口頭で言われたことは忘れてしまったり、理解しにくい
✳︎視覚情報に比べて、聴覚情報の聴取や理解が困難である

等が挙げられます。難聴と似た症状に思われますが、「聴力検査をしても異常がない」というのが大きな特徴です。適切な検査を行わないと、他のタイプの難聴と区別するのが難しい場合もあります。

また,APDは発達障害との併存が注目されていますが、ワーキングメモリの低下など、認知的な偏りが要因の人が多くなっています。
目の前の仕事に集中する脳の機能として、「ワーキングメモリ」があります。数秒、数分といった短い時間に、情報を保持、操作し「作業記憶」として用いられます。

APDの4つのタイプ
1)脳損傷タイプ
2)発達障害タイプ
3)認知の偏りタイプ
4)心理的な問題タイプ

APDのチェック項目

①難聴はないか
わずかな聴力の低下でもAPDと似た症状を示すことがあります。
②ことばを聞き取る力はどれくらいか
「あ」「い」など、20個の単音節を聞き、何個正解したかを%で表す検査のことで、語音聴力検査といいます。APDが疑われる場合は、この検査では問題がない場合が多いです。
※鑑別診断のためには、①②以外にも様々な検査結果を比較する必要があります。
③きこえ以外に気になる症状はないか
視覚的な情報理解はどうか、友人関係はどうか、発話に関する問題はないか、幼少期には問題があったが大人になって軽減したことはあるかなど、きこえ以外に気になる症状はありませんか。
④いつ頃から聞き取りにくいか
幼少期から聞こえにくいのか、成人してから聞こえにくくなったのか、聞こえにくくなった時に何らかの心理的負荷がかかる出来事があったかなど、聞こえにくくなった時期や生活背景はどうですか。
⑤自分はどのような性格やタイプか
自身の性格はどのようなタイプですか。また、人との付き合いは外向的もしくは内向的ですか。
⑥聞こえにくい自覚があるかどうか
自分自身で聞き取りにくさを自覚していますか。周囲からも聞こえにくさを指摘されますか。
⑦(子どもの場合)言語環境はどうか
日本語以外の言語を同時に学習していますか。
⑧言語発達は年齢相応かどうか
言語発達の遅れはみられますか。言語発達検査を受けた結果、聞こえ以外に苦手な部分はありましたか。

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