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都会の夜空を知っている

都会の夜空を知っている、誰かが言っていた星が見えないって。本当に見えないというわけではなくて多分田舎のほうが星が近いところで光っているように見えるからなんだと思う。台風が過ぎた後だからなのか夜空がすごく綺麗だ。自分がいつ頃から空を見上げなくなっていたのか遡って記憶の中から探し出すのは途方もなく時間を浪費するだけだと思って野暮な事だと考える事をやめた。夜の真っ黒なキャンパスを見続けていた気がしていたんだけどそうじゃないらしい。僕が見ていたのは計画表と数字、それと散らばった譜面といつまでも同じ出来事に新しい言葉をはめ込んでは書いて、消してを繰り返したノート。日を追うごとに指がうごいていくようになると念じてみつめた指先がいつまでたっても思い通りには動かない、傷だらけのJ-45のボディを見ていたんた。思うほどに僕の日常はドラマチックにはならないし、しょうがないよそれを避けて来たんだから。理想論は捨てたはずだったのに。

都会の夜空を知っている、それは消して僕等を照らさない灯りではない。街灯のネオンやビルからの灯りにどれだけ照らされてもそこにある、どこにいても変わらない光を見つけた時、またこうやって足を止めるんだと思う。いま僕の目の前に広がるのはよく知っている真っ黒なキャンパスに散りばめられた光たちだった。どこにいたって変わらない事と変わりようがない事を知ったんだ。

tuna

きっとその目で見ないと見えない光がある。

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