毒舌あざらしを飼ってみた①(人間視点)

※ツンデレあざらしを飼ってみたの続編です
※独自設定注意
※ツンデレあざらしが辛い目にあうシリアスなシーンがあります。ご注意ください。

ツンちゃんを飼い始めて数ヶ月、ツンちゃんはだいぶ私の家に慣れたみたいだった。

しかし、最近様子がおかしくなってきた。
あまりあざらしフードを食べたがらない。
そのため、最初来たよりか痩せてしまった。
その上、1人でボーッとしていて話しかけても反応が鈍いことが多くなった。

このままではいけない。
ツンちゃんを買ったペットショップに連絡すると近くの動物病院を教えてもらったのでそこに行った。

初診なので診察カードを作ってもらい診察室に案内された。
メガネをかけた初老の男性がこんにちは、と言った。ここの病院の医師だ。
優しい雰囲気を持ったその医師はツンちゃんにいくつか質問をしたり聴診器を当てたりした後こう言った。

「典型的な寂しい病ですね」

「寂しい病?」
聞きなれない病名に思わず聞き返してしまった。

「はい、ツンデレあざらしは生物の中でもトップクラスに寂しがり屋の生き物なんです。あまりにも寂しいと寂しい病を発症してしまうんです。」

「ツンちゃんの寂しい病は今どのくらいまで進んでるんですか?」

「まだ発症してからそこまで時間は経ってないと考えられます。しかし症状が進むと話しかけても一切反応しなくなり、食べ物に手をつけなくなります。そうすると栄養失調で死んでしまう恐れがあります。」

「そんな…治療法は無いんですか?」

「それが…有効な治療法が毒舌あざらし療法しか無いんです。」

「毒舌あざらし療法?」
またもや聞きなれない言葉が出てきた。

「はい、不思議なことに、最近の研究ではツンデレあざらしと毒舌あざらしの間には強固な絆が形成される事が分かっています。

寂しがり屋のツンデレあざらしが毒舌あざらしを慕うことによって毒舌あざらしが庇護欲や責任感をかき立てられ、ツンデレあざらしを守ろうとするパターンが多いようです。
その関係性は家族愛、友人愛、人類愛を超えたものです。
片方を守るために自分の命を犠牲にした、遭難した時にお互いの身体を食べさせようとした等彼等の絆の強さを示すエピソードは枚挙にいとまがない程です。
所謂ニコイチでしょうか、2匹で1つの共同体を作るのが報告されています。彼等は一度くっつくと絶対にお互いを裏切ることはありません。
赤の他人同士なのにこのような強固な絆を形成するのは生物の中でもかなり稀な方です。」

「じ、じゃあツンちゃんを元気にするには毒舌あざらしを飼うしかないって事ですか?」

「そうなりますね、しかし…」
医師はしばらく考えたあと言葉を続けた。

「最近寂しい病になったツンデレあざらしをこれ以上面倒見れないと保健所に連れていく人が多くて問題になっているんですよ。ツンデレあざらしを飼うのが限界で毒舌あざらしも飼う余裕はない、と。
元々毒舌あざらしだけを飼ってる家庭が養子として引き取ったりしていて、それを斡旋する団体もいるんですが面倒見れないと保健所に連れてられるツンデレあざらしの方が圧倒的に多いです。」

私は何も言えなかった。
保健所に連れていかれるツンデレあざらし達はどれだけ怖かっただろうか。最期にどんな想いで永遠の眠りについたのだろうか。
想像するだけで泣きそうになる。

「私は毒舌あざらしも飼えます…」

やっとの事で言葉を発することができた。
私はツンちゃんを死なせたくない。ツンちゃんがこうなったのは私の責任もある。
ツンちゃんが元気になるならなんだってする。

「責め立てるような口調で申し訳ございませんでした。
貴方は保健所に連れていく人達とは違う。ツンデレあざらしと向き合ってる人だと思っています。
保健所に連れていく人は大抵私の説明を聞いている時めんどくさい事になったという顔をするんですよ。でも、貴方は違った。
貴方のような誠実な飼い主が増えたら幸せなツンデレあざらしも増えます。
今日は対症療法になりますが、ツンデレあざらしに栄養剤を注射しておきますね。」

動物病院を出た後私は直ぐにペットショップに向かった。
毒舌あざらしのコーナーに向かう。

「あ!だいぶまえのおねえさんだ!ぼくのことおぼえてる?ぷく〜」

最初訪れた時に変顔をしていた毒舌あざらしだ。

最初の時よりほっぺたが大きく膨らんでいる気がする。

「ぼくおおきなぷく〜できるようになったよ!みてみて!ぷく〜」

その時、抱いていたツンちゃんが僅かに動いた。
見てみると少し笑ってた。

「あ!ツンデレあざらしもいる〜!かわいいなぁ!ぷく〜」

ツンデレあざらしがさっきよりもいい笑顔になっている。

「すいません、この毒舌あざらしを飼いたいのですが…」

前回ここで飼ったからか、今日家に連れて帰る事ができるらしい。
値段も割引されて少し安くしてもらった。
今家にある籠よりも少し大きめの籠も買う。

「すいません、この籠の中に毒舌あざらしとツンちゃんを今一緒に入れてもいいですか?」

「はい、大丈夫ですよ!現在、買い物をされたお客様には家まで無料でタクシーで送迎するサービスをしておりますので是非そちらでお帰りくださいませ。」

タクシーに乗り込む。
籠の中で毒舌あざらしとツンちゃんがお話している。
「ぼく毒舌あざらし!みんなにはぷく〜するからもちあざって言われてた!だからもちあざって呼んでいいよ!」
「ぼくツンちゃん!さんさいだよ!」
「ぼくはごさい!」
「じゃあもちあざおにいちゃんだね!おにいちゃんとたくさん遊びたい!」

店員さんに毒舌あざらしとツンデレあざらしを一緒に飼うなら毒舌あざらしが歳上の方がいいと言われてこの毒舌あざらしの年齢を確認したらツンちゃんよりも歳上だった。

この毒舌あざらしならツンちゃんも元気になるかもしれない。

そう思った。

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