見出し画像

哀愁のカサブランカ・ダンディ

えるしってるか?きのもとはとてもきがよわい。

どもども。木之元だよ。少し更新が開いたような気がするね。いきなりだが皆はカツアゲの被害に遭ったことはあるだろうか。

私は、ある。

以前、私が塾講師のバイトをしていたお話をしたと思う。ちょうどその頃だったように思う。
パワハラ学習塾と家とリハーサルスタジオだけを行き来するだけの体となっていた私はもはや廃人と呼ぶに相応しかった。

その当時、ちょうどやっていたバンドの制作期間だった。連日連夜私は電車で心斎橋に向かい、スタジオに篭り、歌を作ってはメンバーにダメ出しされ作ってはダメ出しされの生活で幾分参っていた。

だが、ロックンロールをしている私はそういった苦しみも存在証明の一つな気がしてかなり好きであった。というよりは、散々ダメ出しされたあとで帰りに寄るラーメン屋やファストフード店で繰り広げる馬鹿話が好きであった。私の地獄の塾講師生活と地獄の大学生活の渦中、唯一の救いとなった。

その日も例に違わず心斎橋のリハーサルスタジオで曲を作り、(そのときにできた曲がリメイクされて近いうちに発表されるかもされないかも。)最高の気分でラーメン豚山に行き、半泣きで完食(号泣していた気もする)し、最悪の気分で難波駅まで歩いた。

難波駅から出る電車で「いやー、良い曲ができたなァ」なんて思いながら自前のイヤホンから自分の声で流れる世界最新の歌を聴きながら鼻の下を伸ばして最寄り駅まで向かった。なお、腹は気持ち悪い。最高と最悪が交差していた。

最寄りに着くと、なんとなく気分が高揚していた私は何故かひとつもいい思い出のない中学校を見てみたくなった。

商店街を抜け、深夜の中学校を外から眺め、ろくでもない思い出(いじめ、受験戦争etc…これもまたnoteで書く。)を思い出し、何故かノスタルジックになった私はとてつもなく気持ちが悪かったと思う。
自前のイヤホンから流れる自作の歌を聴きながら。

今考えると中学校を見に行ったことが不幸の予兆だったように思う。やはり良い事なんて起きない。

気がつくと、25時に差し掛かろうかという時間帯だったため、家族を心配させてはならないと思い、早急に帰路に着くことにした。

商店街に戻りノコノコと歩いていると、ワラワラと目の前に学生(中高生?)が自転車でたむろしている。
学生時代を思い出し、心臓バクバクでかなり手前から「アッ、すみませんトオリマス…」と言葉を反芻して練習していた。

20m,15m,10mと近づくにつれ嫌なことを思い出して鼓動が早くなるのを感じた。
だが、私は今日とてつもなく良い曲を書いた男。世界最新の音楽を生み出したロックンローラーなわけだ。あんな半端な学生なんぞに負けるわけがない。むしろ喧嘩なんて売られた暁には私の書いた音楽でぶち56してやろうとも思っていた。いざ、尋常に勝負!(通してくださいと言うだけ)

と…とぉひてくらはい…

私の口から出たのは誰も聞き取れない声量のそれであった。彼らは私の声を聞き取れない、私は彼らを怯えて見ている。中々退かないので私は立ち止まって怯えながら待つことにした。

お兄ちゃん、お金ある?

驚いた。私に話しかけてきたのか?
後ろを向いても誰もいない。後ろにはシャッター商店街が広がるのみだ。帰りたい一心で私はこう返した。

とおりたいです…

我ながらかなり強気に言えたと思う。流石はロックンローラー。かっこいいぞ。退くのだ少年たち。

お金くれたら通しちゃるわ。

お…おかね………?これは関所か?いつから私の地元は奈良時代に戻ったのだ?
いや違うこれはカツアゲと言うやつだ。
全然戦っても良いが、私は1人。向こうは5〜6人。
確実に負ける。一対一でさえ絶対負けるのに。
流石はロックンローラー、頭がキレるぜ。理解が早い。

私は地元の治安に絶望し、怯えきって動けなくなった。4〜5個も下の男児らに金を要求され硬直し、笑われている。笑えない。
ここでボコボコにされて金を取られてから帰るか金を取られて無事に帰るかの判断を下すことになった。私の所持金は5000円のみだ。彼らに5000円渡したとて1人あたり1000円もないのだ。彼らにバイトという存在を教えてあげたい。そしてロックンローラーの私は彼らになけなしの5000円を払い、通してもらった。改めて言おう。

私は、そのときアルバイトで中高生を相手に日本史講師をしていた。

その事実が余計に私を惨めたらしくさせ、ズビズビに号泣しながら帰った。これがカツアゲというやつか。私の体感で言うと、5時間くらいの出来事だったように思ったが、携帯電話の時計を見るとたった5分の出来事であった。

家族や友達にカツアゲされたことを打ち明けるのもバレるのも恥ずかしかったため、とりあえず近くの公園で座って泣き止んでから帰った。そのとき、「嗚呼、今私が売れてなくて本当に良かった。」と思った。

ロックンローラー、地元の中学生にカツアゲされ泣く

だなんて新聞の一面になってはメンツが丸潰れするからだ。取られた金額こそしょうもない金額であったが、私はそれ以上に中学生に泣かされたこと、彼らは私をカツアゲのターゲットとして目に入れたことがショックでショックでならなかった。

そうこうして時が経った今も、私はロックンロールをしている。カツアゲには皆御用心くださいね。

ボギー、ボギー、あんたの時代は良かった。
ロックンローラーがピカピカのキザでいられたよ。

ではでは。またね。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?